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25【空手家の武装】
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窓の外を警戒しながら俺は手の平に魔法の矢を作っていた。しかし、狙撃者に反撃しようかと唱えたが目標が既に消えていた。弓兵は退避した様子である。
『あの女、逃げたか……』
窓から路上を確認する。部屋を出て廊下を確認する。それでも怪しい者は見当たらない。たぶん敵は全員退いたのだろう。
『ふぅ……』
溜め息を吐いた俺は避けた着物を確認しながらチルチルに言った。
『チルチル、少し待っててくれ。着替えてくるから』
「はい……」
俺は心配な顔をするチルチルを宿屋の部屋に残して現実世界に戻って来る。もう刺客も見当たらないから少しぐらいならチルチルを一人にしても問題なかろう。
「畜生、せっかくのウェアーに穴が空いちまったぜ。これ、高かったんだぞ……」
俺が着ている白のウェアーは胸元と腹部が破けていた。とくに腹の部分は30センチは破けている。双剣野郎に切られての傷だ。
俺は破けた場所をめくり上げて内部を確認した。
「よし、腹は切れていないな」
異世界ではスケルトンだったから腹を切られても無傷で済んだが、現実世界に戻ってきたら、腹が裂けていたらどうしようと怖かったが、その心配は無用のようだった。俺の腹には傷はなかった。
胸を矢が貫通して、腹を切られたが無傷で済んでいる。すべて骨の隙間や空の腹を切られたからセーフだったのだ。これが現実世界だったら内臓をばら撒くことになっていただろう。怖い怖い……。
しかし、もしも頭部や背骨を切られていたらどうなったことか……。それだと流石のスケルトンも死んでしまうのだろうか……。その辺はまだ謎である。
「まずは着替えるか」
俺は切られたウェアーを脱ぎ捨てると別のウェアーを着込む。ジョギング用に何着かの替えのウェアーを持っていたから問題はなかった。
今度のウェアーは黒いウェアーにした。普段は着ないウェアーだったから丁度よいと思った。
昔買ったウェアーなのだが、黒は失敗だったのだ。朝方は暗い時間帯が多いため、黒だと目立たない。だから車に轢かれそうになってしまうのだ。そのせいでお蔵入りになった黒のウェアーである。
「それと――」
言いながら俺は、家の隣にある道場に向かう。そして、道場の倉庫に向かった。
使わなくなったサンドバッグやダンベルが置かれている倉庫。そこに在るタンスの引き出しを開ける。
「まさか、こいつらを実戦で使うなんて日が来るなんて思いもしなかったぜ」
引き出しの中には携帯用の武具がしまってある。警棒、トンファー、ヌンチャク、熊手、メリケンサック、短刀、コンバットナイフ、鎖鎌まで在る。すべては昔通っていた柔術道場の当主から貰った代物だ。もう看板を下ろすからと言って、譲り受けたものである。
これらは警察に知られたら、銃刀法違反で捕まるかもしれない危険物ばかりだった。
そこから俺は、いくつかの武器を取り出して懐にしまった。
異世界とはいえ、命を狙われたのだ。このぐらいの武装は当然だろう。本物の刃物を振り回してくる使い手を相手にするには必要な武装だ。いくら空手の黒帯でも素手だけでは限界がある。
空手家という人種は、無手にこだわる輩も少なくない。しかし、それは理想である。この世界は漫画ではないのだ。素手での防衛には限界がある。
それを俺は知っている。
それは格闘技大会でニューヨークに出向いたときの話だ。そこで拳銃を持ったマフィアに襲われ、撃たれた。
運よく弾丸が外れて無傷で済んだが、その時に実感したのだ。素手の限界を――。
だから俺は非武装にポリシーを感じない。
死んだら負け。それが絶対のルールであると思っている。
「まあ、これだけ持てば十分だろう」
武装を整えた俺は、ゲートマジックをくぐって異世界に戻る。
『ただいま、チルチル』
「おかえりなさいませ、シロー様」
チルチルが礼儀正しく頭を下げる。その頭を撫でた俺は宿屋の部屋を出た。後にチルチルが続く。
『チルチル、アサガンド商店に向かうぞ。品物を納めてくる』
「今さっき、刺客に襲われたばかりなのにですか……?」
『ビビっていても話は進まんだろう。品物を納めるついでに情報を集めるんだよ。なんで、誰が、俺なんかを襲うのか知りたい』
「はい……」
俺はチルチルを連れて日が沈みかけた町を進む。夜になる前にはアサガンド商店に到着できるだろう。
『あの女、逃げたか……』
窓から路上を確認する。部屋を出て廊下を確認する。それでも怪しい者は見当たらない。たぶん敵は全員退いたのだろう。
『ふぅ……』
溜め息を吐いた俺は避けた着物を確認しながらチルチルに言った。
『チルチル、少し待っててくれ。着替えてくるから』
「はい……」
俺は心配な顔をするチルチルを宿屋の部屋に残して現実世界に戻って来る。もう刺客も見当たらないから少しぐらいならチルチルを一人にしても問題なかろう。
「畜生、せっかくのウェアーに穴が空いちまったぜ。これ、高かったんだぞ……」
俺が着ている白のウェアーは胸元と腹部が破けていた。とくに腹の部分は30センチは破けている。双剣野郎に切られての傷だ。
俺は破けた場所をめくり上げて内部を確認した。
「よし、腹は切れていないな」
異世界ではスケルトンだったから腹を切られても無傷で済んだが、現実世界に戻ってきたら、腹が裂けていたらどうしようと怖かったが、その心配は無用のようだった。俺の腹には傷はなかった。
胸を矢が貫通して、腹を切られたが無傷で済んでいる。すべて骨の隙間や空の腹を切られたからセーフだったのだ。これが現実世界だったら内臓をばら撒くことになっていただろう。怖い怖い……。
しかし、もしも頭部や背骨を切られていたらどうなったことか……。それだと流石のスケルトンも死んでしまうのだろうか……。その辺はまだ謎である。
「まずは着替えるか」
俺は切られたウェアーを脱ぎ捨てると別のウェアーを着込む。ジョギング用に何着かの替えのウェアーを持っていたから問題はなかった。
今度のウェアーは黒いウェアーにした。普段は着ないウェアーだったから丁度よいと思った。
昔買ったウェアーなのだが、黒は失敗だったのだ。朝方は暗い時間帯が多いため、黒だと目立たない。だから車に轢かれそうになってしまうのだ。そのせいでお蔵入りになった黒のウェアーである。
「それと――」
言いながら俺は、家の隣にある道場に向かう。そして、道場の倉庫に向かった。
使わなくなったサンドバッグやダンベルが置かれている倉庫。そこに在るタンスの引き出しを開ける。
「まさか、こいつらを実戦で使うなんて日が来るなんて思いもしなかったぜ」
引き出しの中には携帯用の武具がしまってある。警棒、トンファー、ヌンチャク、熊手、メリケンサック、短刀、コンバットナイフ、鎖鎌まで在る。すべては昔通っていた柔術道場の当主から貰った代物だ。もう看板を下ろすからと言って、譲り受けたものである。
これらは警察に知られたら、銃刀法違反で捕まるかもしれない危険物ばかりだった。
そこから俺は、いくつかの武器を取り出して懐にしまった。
異世界とはいえ、命を狙われたのだ。このぐらいの武装は当然だろう。本物の刃物を振り回してくる使い手を相手にするには必要な武装だ。いくら空手の黒帯でも素手だけでは限界がある。
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それを俺は知っている。
それは格闘技大会でニューヨークに出向いたときの話だ。そこで拳銃を持ったマフィアに襲われ、撃たれた。
運よく弾丸が外れて無傷で済んだが、その時に実感したのだ。素手の限界を――。
だから俺は非武装にポリシーを感じない。
死んだら負け。それが絶対のルールであると思っている。
「まあ、これだけ持てば十分だろう」
武装を整えた俺は、ゲートマジックをくぐって異世界に戻る。
『ただいま、チルチル』
「おかえりなさいませ、シロー様」
チルチルが礼儀正しく頭を下げる。その頭を撫でた俺は宿屋の部屋を出た。後にチルチルが続く。
『チルチル、アサガンド商店に向かうぞ。品物を納めてくる』
「今さっき、刺客に襲われたばかりなのにですか……?」
『ビビっていても話は進まんだろう。品物を納めるついでに情報を集めるんだよ。なんで、誰が、俺なんかを襲うのか知りたい』
「はい……」
俺はチルチルを連れて日が沈みかけた町を進む。夜になる前にはアサガンド商店に到着できるだろう。
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