スケルトン商人と獣人メイドの異世界転移繁盛記(インフィニティ)

ヒィッツカラルド

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28【お嬢様】

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 川沿いに並ばされて正座をさせられている五人は、自分たちを暁の冒険団と名乗っていた。

 川上からアーチャーのティルール、神官のプレートル、リーダーのエペロング、シーフのバンディ、魔法使いのマージ。そして、カラスのコルボ。五人と一羽で暁の冒険団と名乗っている冒険者パーティーらしい。

『それで、なんで俺を襲う?』

「「「「「ぅ………」」」」」

 俺は腰掛け岩に座りながら仮面越しに五人を睨みつけていた。その背後にチルチルが立っている。

 五人は俯きながらしおらしくなっていた。先ほどまでの威勢は失くなっている。それどころか俺に対して怯えている様子だった。

 ちなみに彼らの傷はプレートルのヒールで全回復していた。

 それにしてもヒールとは凄い治癒魔法である。ナイフで刺されたエペロングの腹の傷も完全に塞がっているのだ。

 ただし、バンディの抜けた前歯は治っていない。なんでも折れた歯がないと治せないらしいのだ。ヒールも万能ではないらしい。

 そういえば、宿屋の部屋に前歯が数本落ちていたような気がする。たぶん彼の前歯だろう。

『ほら、黙っていても分からないぞ。なんで俺を襲う?』

「ぶつぶつぶつ………」

 リーダーのエペロングが何やら呟いているが声が小さくて聞き取れない。腹を刺された影響で腹筋に力が入らないのだろうか。少しイライラしてくる。

『ほら、はっきり言えよ。何も言わないと、今日は帰さないぞ!』

「「「「「ひぃ!!」」」」」

 俺が少し大きな声を上げると五人は更に身を縮めて怯えてしまう。いい大人が怒鳴られたぐらいでビビるなと怒鳴ってやりたかったが、ここはグッと堪えた。

『頼むよ、もう暴力は振るわないから理由を答えてくれ……』

「ほ、本当に……」

『ああ、約束してもいいぞ』

 俺が優しく言うと、やっとエペロングが話し出す。

「俺たちはパリオンの商人に雇われたんだ……」

『パリオンの商人?』

 確かパリオンとは、このフランスル王国の首都だとチルチルから聞いたはず。だが、俺はパリオンには行ったこともないし、当然ながら知り合いもいない。ゆえに殺しを依頼されるほど恨みも買っていないと思う。

「正確には、パリオンの大店の奥様から依頼を受けたんだ……」

『大店の奥様? 誰それ?』

「コメルス商会の奥様、マダム・レジャンデールだ……」

 やっぱり知らない名前だ。記憶の片隅にもない。

『マジで、誰だ、それ?』

 すると俺の後ろに立っていたチルチルが小声で呟いた。

「私の……母です……」

『えっ!?』

 驚いた俺が振り返るとチルチルまで俯いていた。彼女はギュッとエプロンを握りしめている。

「そうなんですよ。俺たちは、マダム・レジャンデールに頼まれて、お嬢様のチルチル嬢を連れ戻しに来たんですよ」

 他の四人もカクカクと小刻みに頷いていた。

『それで、なんで俺を襲う!?』

「だって、貴方が彼女を攫った悪い人攫いでしょう。それなら殺して奪い返すのが筋ってもんでしょうが」

 あ~、どうやら誤解されているようだ。こいつらは俺を奴隷商人か何かと思ってやがる。

『俺は、人攫いじゃあないよ。むしろ俺が人攫いからチルチルを助けて保護していたんだからな!』

「「「「「え~、本当に~……」」」」」

 声を揃える五人が俺を疑っていた。声色と眼差しで悟れる。

『あー、テメーら。信じてないな。俺が悪党だと思っているだろう』

 するとマージが述べる。

「そんな怪しい仮面を被ってれば、誰だって怪しい人物だと思うぞよ。疑われないほうが不思議じゃわい」

『確かに……』

 黒い狐面が仇になったようだ。こんな不気味なお面を被っていれば、怪しまれても当然だろう。彼女の言う通りだ。

 しかし、仮面を取ったら更に怖がられることだろう。巷で髑髏の素顔は晒せない。

『チルチルからも何か言ってくれ。誤解だってさ』

 するとチルチルが俺を弁護してくれる。

「この方は私の新しい御主人様で、身の安全と三食を保証してもらえる代わりにメイドとして雇ってもらっているのです。本当です。嘘ではございません」

 エペロングがチルチルに問う。

「それじゃあ、脅されているって訳でもないんだな?」

「はい。脅されたことすらございません。シロー様はお優しい方ですから」

 俺は、鼻息を荒くしながら言ってやる。鼻はないけれど――。

『どうだ、これで納得してくれるか!?』

「「「「「はい!」」」」」

 五人が揃って返事を返した。本当に元気な連中である。

 そして、今度はエペロングが俺に言う。

「そこで、シロー様に相談なのですが……」

『なんだ?』

「チルチルお嬢様を連れて、我々と一緒にパリオンのコメルス商会までお越しいただけませんでしょうか?」

『なんでだよ?』

「我々が受けた依頼内容は、チルチルお嬢様を実家まで連れ帰ることなので……」

『んん……』

 俺は仮面の顎に手を当てながら考える。ここはチルチルを実家まで返してやるのが道理ではないだろうかと……。

 そして、俺はチラリとチルチルの顔色を伺った。しかし、彼女は俯いたまま暗い顔を見せている。何やら不満でもあるようだ。

『チルチルはどうしたい。実家に帰るかい?』

 チルチルは暫し黙り込んだ後に口を開く。

「私は家を追い出された存在です。今さら帰っても……」

『むむ~?』

 何か話が噛み合っていないと俺は小首を傾げた。

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