スケルトン商人と獣人メイドの異世界転移繁盛記(インフィニティ)

ヒィッツカラルド

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31【影臭う】

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 時は深夜。場所は石橋の下。町中だが、川の流れる心地よい音しか聞こえてこない。夜のサン・モンは静かだった。

『では、私は少し祖国に戻っているから、チルチルの面倒を頼む』

「「了解しました!」」

『ゲートマジック』

 シローがゲートマジックをくぐろうとすると、エペロングとバンディの二人がわざとらしい敬礼をして見送った。他の面々はテントで休んでいる。二人は見張りらしい。

 そして、シローが無空に消えると、二人は話し出す。

「なあ、バンディ。あの御仁、何者だと思う?」

「知らん……」

 一言だけ言った後に、スカーフェイスの男は小石を水面に投げ込んだ。チャポンと軽い音が鳴る。

 エペロングが話を続ける。

「あのゲートマジックたる魔法。それに数々の暗器。極上の食事。アイテムボックスまで持ってたぞ。どれもこれも、現実の仕業とは思えん……」

 バンディが続く。

「それに、宿屋での一戦で俺はシロー殿の腹を剣で割いたはずだ。しかし、手応えがなかった。挙げ句に反撃まで食らった……。あれは人間業ではないだろうさ」

「あの身なりもおかしいし、まだ何かを隠しているのは間違いないだろう」

「あの仮面の下に――絶対に秘密がひそんでいるぞ」

「だが、悪人でもなさそうだ」

「あのお嬢様が懐いているんだ。それは間違いないだろうさ」

「子供の本能は侮れんからな」

 二人は視線を合わせる。

「「でも、怪しいよね~」」

 ハモる二人は、シローの怪しさに想像を巡らす。そして、エペロングがバンディに相談を持ちかける。

「なあ、バンディ……」

「なんだよ?」

「お嬢様をパリオンまで送るついでに、シロー殿を仲間に誘ってみないか?」

「それは、俺も考えていたぜ。あの御仁からは、何か金の匂いが漂ってくるんだよな~」

 二人はシローを仲間に引き入れようと密かに決めた。だが、彼を口説くのは容易ではないと感じてもいた。

「俺たちの目標については、どこまで話すべきだと思う?」

 エペロングが川面を眺めながら尋ねると、バンディは顎をさすりながら考え込む。

「ふむ……あまり詳しく話すのは得策じゃねぇ。だが、あの人も利益があると分かれば考えるかもしれねぇな」

「他の連中が納得するかどうかだな……」

「あの食事の質の高さ……貴族相手の仕事にも慣れていると見た。ならば、利益で動く可能性はある」

「……ただ、どうにも商人って雰囲気じゃねぇんだよな」

「それは俺も感じてる。戦闘慣れしすぎだろう……」

「強すぎるんだよな~……」

 バンディは再び小石を投げる。チャポン、と音を立てながら水面に消えた。

「まるで……何かの“影”のような」

「影?」

「ああ、戦士のようでいて、戦士じゃねぇ。商人のようでいて、商人でもねぇ……どことなく、何かの影に見える」

 エペロングは目を細める。

「……だが、シロー殿が何者であれ、利用できるのならそれでいい」

「同感だぜ」

「シロー殿との関係性は、俺に任せてくれないか。探りを入れながら検討してみるからさ」

「任せたぜ、リーダーさんよ」

「おう――」

 二人は互いに頷くと、夜の静寂の中、再び見張りに意識を戻した。

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