スケルトン商人と獣人メイドの異世界転移繁盛記(インフィニティ)

ヒィッツカラルド

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33【先人と相棒】

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 茶の間のこたつの中で俺は、ウロボロスの書物を眺めていた。こたつの前にはゲートマジックの扉が開いている。

 こっちは昼間で、あっちは夜である。こちらが明るいのに向こうが暗いのは、少し不思議に感じられた。

 扉の向こうでは、テントの前の焚き火に当たりながら本を読んでいるマージの姿が見える。その側でプレートルがスクワットに励んでいた。脳筋とインテリのコンビである。

 今の時間帯は、二人が見張り役のようだ。

 向こうの世界からは扉の存在が見えていないため、俺がこちら側から監視していることには気づいていないはずだ。

「おお、新しいスキルが増えているな」

 こたつに入りながらウロボロスの書物を眺めていた俺は、新しく選べるスキルに気づいた。それは【格闘スキルLv1】【弓矢スキルLv1】【双剣スキルLv1】【攻撃力向上Lv1】【防御力向上Lv1】【速度向上Lv1】である。

 さらに、魔法一覧には【ファイアーボールLv1】も追加されていた。

 これらのスキルや魔法は、先の戦いで見たことがあるものばかり。暁の冒険団が使っていたスキルや魔法が多かった。

 おそらく、新スキルを習得できる条件の一つに、「他者のスキルや魔法を見ること」が含まれているのだろう。

 他者の技術を拝見して学ぶ。先人から多くを学ぶ。それは格闘家だけでなく、すべてのスポーツや学問における基本的な学習法である。

「まあ、今はアイテムボックスを広げるのが優先だ。戦闘スキルは間に合っているから、今は覚えなくってもいいだろうさ」

 俺は体が大きい。肉弾戦では一流。さらに、現代の武器は強力だ。それだけで、ちょっとした困難ならば乗り越えられる。特に俺は、荒事の対処が得意である。

 だから、ウロボロスの書物の力に頼らなくても揉め事を乗り越えられているのだ。ここで荒っぽい人生を歩んでいたことが役に立っていた。新宿や歌舞伎町で殴り合いの喧嘩に励んだ時代が役に立っている。

「さて……」

 俺はウロボロスの書物をアイテムボックスに仕舞うと、今度はラノベブックを取り出して読書を始める。

 他の異世界転移者が、どのように通販スキルを活用しているのかを学ぶためであった。転移者が複数いるのならば、参考にしない手はないだろう。

 俺は、彼ら先輩の転移者がどのような品物を転売しているのかを知りたかった。だから、研究資料としてラノベを選んだのである。

「へぇ~、やっぱり日本の食事は神レベルなんだな」

 まず本を読んで気づいたことは、日本の食事が異世界では高級品に当たることだ。塩や胡椒などの香辛料は、地域によって、それだけで高額で売れるらしい。だから砂糖や唐辛子も売れるかもしれない、とラノベの主人公が言っていた。

 チルチルに牛乳を飲ませただけで驚いていたから、たぶんジュースなども驚くのではないかと思う。炭酸ジュースなんて飲ませたら、ビックリしすぎるのではないだろうか。

 また、花火を戦闘の牽制に使っていた。ドンパチと炸裂する火薬が異世界には存在しないらしい。殺傷性がなくても、炸裂音だけで十分のようだ。

 武器としては、現代のアーチェリー用の弓やクロスボウ、それにパチンコ――英語ではスリングショットと言うらしいが、それらも日本で手軽に手に入る武器として活用されていた。

 まあ、こっちで拳銃を簡単に手に入れられれば、そのような玩具を使わなくてもいいんだけれどね。

 今度、知り合いのヤクザに頼んでみようかな。一丁ぐらい……。

 いやいや、それはアカンか……。

 さらに、女性物の下着なども売れ線らしい。現代世界の下着のほうが高品質なのだろう。それに、エロさも追求が進んでいるとか、いないとか……。

 だが、女性物の下着を俺が買わなくてはならないのが問題だ。フランケンみたいな俺が下着売り場に入っただけで、通報されるだろう。間違いない。

「通販なら……買えるかな?」

 この課題は見送りである。もっと検討が必要だろう……。

 なにせ、変態と揶揄される可能性もある。チルチルに嫌われるのも怖い。

 ほかには、土建で使われる作業車を異世界に持ち込んでいる主人公もいた。ブルドーザーやユンボなどを持ち込んでいるのだ。

 その辺は、言うまでもなく却下である。そもそも大きすぎてゲートマジックを通れない。引っかかってしまう。それに、異世界の文化レベルを急速に上げてしまうだろう。それは駄目だ。

 とにかく、異世界の文化レベルを上げない程度に物を輸入しないとならない。その辺を考慮しないといけないのが面倒くさいのだ。

「はぁ~……」

 俺は天井に向かってため息を吐いた。

 やっぱり脳筋の俺には商売なんて難しい。そもそも無理がある。俺は、運び屋に徹するほうが良いのかな?

 だとしたら、俺を使ってくれる頭の切れる相棒が欲しいところだ。しかも、絶対に裏切らない信用の置ける人物でないとならない。

 しかし、そんな都合の良い人物が、そうそう落ちているわけもない。

 しかも、場所は異世界だ。頭が回り、信用ができて、商売に通じる人物。そんな好物件に簡単に出会えるとは思えない。

 出会えたとしても、コミュ障な俺がその人物を仲間に口説けるかどうかも自信がない。

 やはり、他人に頼るのは難しいだろう。自分で何とかするしかない。

 今までも、そうやって一人で生きてきたのだ。これからだってできるだろうさ。たぶん――。

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