スケルトン商人と獣人メイドの異世界転移繁盛記(インフィニティ)

ヒィッツカラルド

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34【香辛料モンスター】

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『ただいま~』

「おお、これはシロー殿。おかえりなさいませ!」

「お、おかえり……」

 見えない扉から俺が橋の袂のキャンプ地に帰ってくると、焚き火の前でマージとプレートルが出迎えてくれた。マージは唐突に無の空間から現れた俺に少し驚いている。プレートルは普段から声が大きいだけである。

『はい、飴ちゃんをあげよう』

「ありがとうございます!」

「きゃ~、ありがとう~!」

 二人は俺から飴ちゃんを受け取ると、即座に口へ放り込んだ。そして、瞳を蕩けさせながら舐めている。

「うめ~~!」

「おいちぃ~~!」

 飴ちゃん一つでこれだけ喜んでもらえるのだから、かなり砂糖は貴重なのだろう。

「「レロレロレロレロレロレロ~」」

『なあ、二人にいろいろと訊いてもいいかな?』

「なんでござるか?」

「なんでも訊いていいぞよ。飴ちゃんをもらったからのぉ~」

 そのための飴である。情報を集めるための賄賂なのだ。

『では……』

 俺は二人の前に腰を下ろす。焚き火を挟んで向かい合った。

『この国では、飴ちゃんって珍しいのか?』

「珍しいに決まってるじゃろう。砂糖菓子なんて、貴族様の食べ物じゃ」

「拙僧が子供の頃は、年に一度、食べられるか食べられないかのご馳走でしたからのお!」

『それは、今でもか?』

「当然ぞな。飴玉一つで小銀貨一枚はするぞ!」

『えっ、そんなにするのか……』

 平民の一食が30ゼニルぐらいだから、100ゼニルはそこそこの高級品だろう。お菓子とはいえ、子供が簡単に買える値段ではないようだ。

「しかも、こんなに美味しい飴をワシらにくれるなんて、シロー殿は相当な金持ちなんじゃな」

『いや、それほどでもない……』

 ……飴、売れるんじゃね?

 たぶん、一個50ゼニルでも売れるぞ、これ!

 それから俺は、二人に詳しい話を訊いてみる。

『この国では、砂糖とかってどうやって入手しているんだ?』

「それは決まっているじゃろ」

『決まってる?』

「冒険者や職人が森に入って、キラービーなどの巣から採取するしか方法はなかろうて」

『キ、キラービーの巣を……』

 俺だってゲームの知識から、キラービーの存在ぐらいは知っている。

 キラービーとは巨大な毒蜂だ。しかも凶暴で肉食の害虫である。人間だって当然襲うモンスターだ。

 そんなものの巣を襲って蜂蜜を集めているのだ。それは砂糖が貴重になるのも理解できる。

 この異世界が不憫なのは知っていたが、砂糖を求めてキラービーを襲うところまで行っているとは思わなかった。人間って逞しい……と、少し引いてしまう。

『それじゃあ、唐辛子とかはどうしているんだ?』

「唐辛子なら森で採れるが、大体スコヴィルワームと戦闘になるからのぉ。採取も簡単じゃあなかろうな」

『スコヴィルワームって何だ?』

 聞いたことがない名前だ。ワームって言うからには、ミミズっぽい魔物なのだろう。

 マージが焚き火を突つきながら説明してくれる。

「唐辛子の根元に住む巨大な芋虫型モンスターじゃ。体液が超高濃度のカプサイシンを含んでおり、噛まれると麻痺と激痛が走るぞい。最後の手段として自爆し、周囲に辛味爆弾を撒き散らす最悪なモンスターじゃ」

『怖い!?』

 カプサイシンを含んだ自爆って、凶悪すぎるだろう。

「まあ、スコヴィルワームの死体からも唐辛子が採れるから、駆除して損のないモンスターじゃ」

『唐辛子の採取も命懸けだな……』

 この異世界、畑で採れる安全な香辛料は無いのかよ……。

『ちなみに、胡椒はどうやって採っているんだ?』

「あれは珍しいモンスターなのに、凶暴で強い怪物だからのぉ~。だから採取は難しいぞい」

『胡椒もモンスターなのか……』

「長い蔓を振り回してくる植物系の巨大モンスターじゃ」

『巨大なのかよ……』

「それなのに、胡椒の実は少ししか取れないのじゃ。本当にケチ臭いモンスターぞよ」

 どうやら、この世界にはまともな香辛料が存在しないらしい。そりゃあ高く売れるわけだ……。

『塩って、どうやって取っているんだ?』

「もちろん海で釣ってるぞ」

『塩を、釣る……?』

 また、何かおかしい……。

「ソルトフィッシュを海で釣ってるに決まっておろう」

『ソルトフィッシュって?』

「塩分を含んだ魚だ。その切り身を乾燥させて粉末にしたのが塩なのじゃ」

『海水から塩は取れないのか?』

「何故に水から塩が取れるのじゃ?」

 マージは不思議そうに小首を傾げている。どうやら俺が非常識なことを言っているようだった。

 そして、マージの話だと、この異世界の海水は真水のようである。海はしょっぱくないらしい。

 流石は月が七つもある異世界だ。そもそもの常識が異なるっぽい。

 しかし、サン・モンの町に入る際に、防壁の周りには小麦畑が広がっていた。だから小麦は畑で取れるのは間違いない。

『小麦は、ちゃんと畑で取れるんだよね?』

「当然じゃ」

『小麦は害獣とかに襲われないのか?』

「モンスターどころか、動物ですら生の小麦は食べないぞ。小麦は粉にしないと毒があるからな」

 この異世界の小麦は毒があるのかよ……。

 完全に農業の概念が違っているらしい。そこから勉強しないとならないっぽい。これは、大変だぞ……。

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