スケルトン商人と獣人メイドの異世界転移繁盛記(インフィニティ)

ヒィッツカラルド

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160【新しい扉】

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 俺がピノーに見せた真珠のネックレスは、粒の大きさは8ミリで、数は45粒の品だった。中古品ショップで七万円で買ってきた傷物の安物だが、この異世界では、驚くほど高級品らしい。

 その辺は、チルチルとピノーの反応を見たのならば、俺でも理解できた。

 震える声でピノーが言った。

「シ、シロー殿……。少しよく見せてもらえませぬか……」

『ああ、構わんよ』

 そう言い、俺はパープルの宝石箱ごとピノーに差し出した。ピノーはそれを恐る恐る受け取り、貴重品でも扱うような慎重な素振りで手に取って眺めていた。

「なんて大きな粒なんだ……。しかも、すべての粒が均等に揃っているではないか……。これは、奇跡の代物ですぞ……」

『そうなのか?』

「しかも、このケースはなんですか?」

 現代では、少し前によく見られたネックレスケースだ。珍しい物でもない。しかし、こちらの異世界では高価に見えるのだろう。

「このケースも贈り物ですか……?」

『まあ、そうなるな』

 平然と言ってのける俺の態度を見て、ピノーが言った。

「シロー殿……。もしかして、ご存じでないのですか、この真珠のネックレスの価値を……」

『そんなに高いのか?』

「高いも何も、このネックレス一つで、城がいくつも建ちますぞ……」

『えっ、マジ!』

「これ程のネックレスを、城を建てる権利を得るためだけに貢ぐなんて、正気の沙汰とは思えません……」

『そこまで、するのか……』

「これならば、城を建てる権利の他に、貴族の称号だって一緒に買えますぞ!」

『マジか!』

 思いもしないほどに、真珠のネックレスは高価らしい。

 どうやらピノーの話では、こちらの異世界で真珠を取るには天然のアコヤ貝を取らなければならないらしい。

 しかも、アコヤ貝を取れても、確実に中に真珠が入っているとは限らないとか。そして、仮に真珠が入っていても、粒が球体とは限らないらしいのだ。しかも、大きさがバラバラで、同じ大きさの粒が揃うのは稀だとか。

 だから、ネックレス一本の粒が均等に揃っているのは、相当運が良くなければあり得ない光景らしい。

「これは、国宝級のネックレスですぞ……」

 ピノーがまじまじと俺の仮面を見つめながら言う。

「これを、本当に貢いじゃうんですか……?」

『うん、貢いじゃう』

 俺の気の抜けた返答を聞いたピノーがケースを差し戻すと、背筋を伸ばして俺に訊いてきた。

「ゴ、ゴホン……。シ、シロー殿。聞きたいのだが、このネックレスをもっと仕入れられないかな~」

 質問するピノーの表情は引きつっていた。声も裏返っている。訊いていいのかと疑っているような素振りだった。

 俺は素直に答えてやる。

『資金があれば、さほど難しくもないぞ』

「し、資金とはいかほどですか?」

『そうだな~。これと同じぐらいの品物ならば――』

「同じ、品物ならば……?」

 ピノーが生唾を飲みながら俺の回答を待つ。禿げた頭から汗が流れ落ちていった。

『おそらく、大金貨十枚。1000000ゼニルぐらいかな~』

「安いッ!!!!」

 興奮気味なピノーが立ち上がって言った。

「買いますぞ。何本でも買いますぞ!!」

『そ、そうなん……』

 興奮するピノーを前に、後方のチルチルが耳打ちしてくる。

「シロー様、長く、太くを心がけてくださいませ」

 俺はチルチルが何を言いたいのかすぐに察した。数をセーブして、貴重品だと思わせて、価格を釣り上げろと言っているのだ。流石は大店の娘、チルチル。商売上手である。

 俺はすぐさまに言い訳を考えてから述べた。

『しかし、これ程の真珠を揃えるには時間がかかります。そうちょくちょくネックレスを作れないのですよ』

「そりゃあ、そうですよね……」

 少し落ち着いたのか、ピノーがソファーに腰を戻した。

『次に真珠のネックレスが入荷しましたら、ピノー殿にお譲りします。ですが、価格は幾らになるかわかりませんよ』

「か、構いません。これだけの品物を譲ってもらえるならば、いくらでも払いましょうぞ。いつまでだって待てますぞ!」

『ありがとうございます……』

 俺は、よくわからないままにお礼を述べた。

 そして、もう一つピノーにお願いしたいことがあったので、それを述べる。

『ところで、ピノー殿。俺からも一つお願いしたいことがあるのですが』

「なんですか、なんなりと仰ってください」

『俺の使うゲートマジックのレベルが上がりましてね。新しい機能が追加されたのですよ』

「はあ……」

『今までは、私の現在地と故郷の我が家をゲートマジックで繋ぐことしかできなかったのですが、出口に当たる扉を増やせることになりましてね』

「はあ?」

 どうやらピノーは俺が言いたいことを理解できていないようだった。流石は魔法が使えない平民である。

『要するに、出口を指定した場所に、もう一つ扉を置いておけるようになりましてね』

 二つだった扉が三つになったのである。一つは、現代の実家に。一つはピエドゥラ村の店に。増えた一つをサン・モンに置きたいのである。

「ええ……っと?」

『だから、最初っから在る扉をピエドゥラ村の店に置いて、新しい扉をサン・モンのどこかに置きたいのです』

 ここまで言えば、魔法に疎いピノーでも察してくれるだろう。

「ようするに、魔法でピエドゥラ村とサン・モンを一瞬で行ったり来たりできるようになったのですね!」

『その通りだ』

「おお、それは素晴らしい!!」

 やっと理解してくれたらしい。助かる。

「ならば、使っていない客室がありますので、そこを提供しましょうぞ。そうすれば、いつでも品物を下ろせるようになって便利でしょうとも。それに、シロー殿もサン・モンに居る際は、宿を取らなくても済みますし」

『いいのですか、部屋まで提供してもらって?』

「こっちも、願ったりです。是非とも、そうしてもらえると助かりますぞ」

 こうして、俺はアサガント商店に部屋を借りることになった。家賃も要らないらしいから儲けものである。

 ゲートマジックをもう一つレベルアップさせたら、出口がさらに一つ増えるはずだから、そうしたらパリオンのコメルス商会に部屋を借りようと思っている。マリマリも許してくれるだろう。

 そうしたならば、移動もぐっと楽になるだろうさ。商売も、しやすくなるはずだ。

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