スケルトン商人と獣人メイドの異世界転移繁盛記(インフィニティ)

ヒィッツカラルド

文字の大きさ
168 / 261

163【魔法使いの店】

しおりを挟む
 店の奥から現れた魔法使いレオナルドは、老婆の横に立つと、俺に向かってニッコリと微笑んできた。

「まさか、私の店まであなたが辿り着くなんて、思ってもみなかったわ。だって、魔法が使えない脳筋バカって聞いていたのですもの」

 魔法使いレオナルド――それは、俺の先輩に当たるウロボロスの書物の権利者だ。もう何千年も生きている化け物らしい。だから、禿げている。

『おい、レオナルド。この店は、何なんだよ?』

 レオナルドは虹色のローブを揺らしながら近くのソファーに腰を下ろすと答える。

「私が趣味でやっているマジックアイテムショップよ。二十二の異世界から集めてきた魔法の物品をそろえているの」

 そして、言いながら店の奥に手招きすると、アンティーク風の椅子が、まるで生きている子犬のように駆けてくる。

「まあ、座りなさい」

『あ、ああ……』

 俺は、少し戸惑いながらも、その椅子に腰掛ける。そして、疑問に感じていたことを訊いてみた。

『二十二って、他の権利者の異世界にも出入りしてるのか、お前?』

「まあ、私は他の異世界に割り込める魔法を持っているからね。それに、魔法の物品はゲートを通過できるからさ」

『それっていいのか?』

「何がよ?」

『店をやってるってことは、売上が出てるんだろ?』

「そうよ、もちろんね」

『異世界の金塊は、その異世界の権利者の物だろう。それって、横取りとかにならないのか?』

「バレなきゃ問題ないらしいわよ。アハッハッハ~」

『いや、いま、俺にバレてるだろ……?』

 するとレオナルドが澄ました顔で、俺の眼底を覗き込んできた。老人の皺だらけの顔が眼前に迫る。――キモい。

「それじゃあ、この店の品物を、いつ購入しても半額にしてあげるわ。それで、許してくれないかしら」

『なんと……』

 魅惑的な提案だった。マジックアイテムが半額で買えるのは、美味しい話である。しかし、この店のマジックアイテムは、ゴミ能力が多いのが気になった。

『んん~、どうするかな~……』

 腕を組んで考え込む俺――。

 おそらくレオナルドは、このような提案を他の権利者にも出して、異世界への不法侵入を許してもらっているのだろう。なんてズルいジジィなんだ。

 だが、俺は安易に承諾しなかった。ゴネる。

『なあ、俺の異世界で商売を勝手にやっておいて、その程度の提案で許してもらえると思ってたのか?』

「正確には、すでに許しはもらっているわよ」

『なんだと?』

「お前の祖父さんであるイチローは、私の弟子だったのだからね」

『祖父さんが……あんたの弟子……?』

「ここは、そもそもがイチローの異世界だったのよ。そのイチローが許していたのだから、なんの問題もないでしょうが」

『ぬぬ……』

 反論が思い浮かばない。なにせ、先人が許していたのならば文句も言いづらい。

 それに、祖父さんがレオナルドの弟子だったのにも驚いた。なんで、こんなオカマジジィに弟子入りしちゃうかな……。師匠を選べよって、言ってやりたかった。

「それに貴方は、まだ体験中の見習いなんだから、一人前に権利だけを主張しないでよね。生意気なのよ」

『体験中? なにそれ?』

「あら、聞いてないの?」

『聞いてないぞ?』

「ウロボロスの書物の権利者は、最初に“試練”と呼ばれている試験を二十二回受けるのよ」

『そ、そうなん……』

 そのような話は一度も聞いていない。鏡野響子も鬼頭二角も言ってなかったと思う。

「貴方は、まだその試練を二つしかクリアしていないの」

『えっ……。俺、いつの間に二つもクリアしたんだ?』

「私が聞いた話だと、一回目の試練は、城塞の書の石見が送り込んだ囚人を退けた、とか」

 城塞の書の石見?

 誰それ、知らん奴だな。それに、囚人を退けたって、そんな記憶は微塵もないぞ……。

「二回目は、私が置いていったレボリューションシードよ。しかも、それを仲間にしちゃったって聞いたわ。それも、すごいじゃない」

 レボリューションシード?

 何それ。それも知らんぞ。最近仲間になったのならば、ニャーゴかシレンヌのことだろうか?

 何にしろ、言っていることが俺の記憶と噛み合っていない。なんか、話がだいぶ擦れ違っている。

「まさか、試練を二回ともイレギュラーな方法でクリアしたもんだから、金徳寺様は大変楽しんでいるらしいわよ。貴方のことを気に入り始めている感じだったわ」

『金徳寺って、ゴールド商会の社長だよな?』

「そう、その方よ。まあ、何にしても、あと二十回の試練が残っているから、頑張りなさいな。それが終わったら、正式な権利者として認められるはずだからさ~」

『それで、その試練って、どんな基準で行われるんだ?』

「先輩である権利者が、なんらかの方法で試練を与えるのよ。それをクリアして、生き残れば合格ね」

『それが、あと二十回も来るのか?』

「そうなるわね~」

『その試練に失敗したら、どうなる?』

「ウロボロスの書物を回収されるわね」

『回収されたら?』

「死ぬんじゃないの。私も詳しくは知らないけれどさ」

『あ~、死んじゃうんだ~……』

 レオナルドが笑顔で俺の肩を叩きながら言った。

「まあ、気楽にやりなさい。失敗しても、死んで無に帰るだけだからさ」

『それは、気楽にできんだろう……』

 まあ、なんにしろ頑張るしかないだろう。それに、知らない間に試練をクリアしている程度の試験内容だ。もしかしたら今後も、なんの問題もなく知らないうちにクリアしちゃったりしているかもしれない。難しく考えないで、来るものは拒まずの精神で受け止めてやろうではないか!

「ところでシローちゃん。なんか買っていくかい? この異次元便器なんてお買い得だよ?」

『そんなもん、要らんがな……。それよりも、この店って幻なのか? メイドのチルチルは見ることができなかったし、入ることも叶わなかったぞ?』

「このミラージュショップの入口は、ゲートマジックの扉に近い作りになっているのよ。だから、魔法のセンスが少ないと、見ることも入ることも叶わないわけ」

『それで、選ばれし者しか来店できないのか……』

「ショップとしては非効率だけど、誰でも入れる店なんかよりも、特別感が高くて良くないかしら?」

『そうかね……。俺には悪趣味すぎる店だぜ……』

 そう言いながら踵を返した俺は出口に向かう。

「シローちゃん、もうお帰りなの?」

『外に人を待たせているからな』

「じゃあ、初来店のお祝いに、これをあげるわよ」

 そう言いながらレオナルドは、銅製の古びた指輪を差し出した。

『なんだいそれ?』

「アイテムボックスLv1が掛かっている指輪よ。あげるわ」

『ほんとうに!?』

 アイテムボックスが掛かった指輪ってだけで貴重品だと思えた。それを気楽にくれるなんて、もしかしてレオナルドって、相当金持ちなのか?

「ただし、私がこの異世界で小銭を稼ぐことを許してね。そしたら、これを、あげちゃうわ」

 そう言ってレオナルドは、気持ち悪くウィンクをして見せた。

 キモい――。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜

音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった! スキルスキル〜何かな何かな〜 ネットスーパー……? これチートでしょ!? 当たりだよね!? なになに…… 注文できるのは、食材と調味料だけ? 完成品は? カップ麺は? え、私料理できないんだけど。 ──詰みじゃん。 と思ったら、追放された料理人に拾われました。 素材しか買えない転移JK 追放された料理人 完成品ゼロ 便利アイテムなし あるのは、調味料。 焼くだけなのに泣く。 塩で革命。 ソースで敗北。 そしてなぜかペンギンもいる。 今日も異世界で、 調味料無双しちゃいます!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

異世界では地味な俺が、なぜか神々に最愛されて無双してる件

fuwamofu
ファンタジー
平凡な高校生・桐生ユウは、女神の手違いで異世界に転生した。 チートもスキルも貰えず、冒険者登録すらままならない落ちこぼれ……のはずだった。 しかし周囲の異常な好感度、意味不明な強運、そして隠された神格スキルによって、ユウは「無自覚に全能」な存在へと覚醒していく。 気づけば女神も姫騎士も魔王娘も彼に夢中。誤解と崇拝が加速する中、ユウの“地味な日常”は世界を揺るがす伝説になっていく。 笑いあり、胸キュンあり、ざまぁありの最強(なのに本人だけ気づいてない)異世界ファンタジー開幕!

処理中です...