箱庭の魔王様は最強無敵でバトル好きだけど配下の力で破滅の勇者を倒したい!

ヒィッツカラルド

文字の大きさ
32 / 69

32・水源

しおりを挟む
俺はキルルと並んで町の道端に積まれた丸太の上に腰掛けながら大工仕事に性を出しているゴブリンやコボルトたちの姿を眺めていた。

仕事に励む連中は一端の職人風の空気感を出している。

職人のメモリーが開封された連中なのだろう。

俺たちの側にはかったるそうにゴブロンと角刈りが座っていた。

ゴブロンが小指で鼻糞をほじってやがる。

周りを眺める俺は隣に腰かけるキルルに言った。

「皆真面目に働いているな……」

『そうですね』

キルルは明るい笑みで俺に問いかける。

『魔王様も働きたいのですか?』

俺は頬杖を膝に付きながら答えた。

「まさか、俺が大工仕事をしたいと思うのか?」

『したくはないのですか?』

「無理だ。俺は学校の工作すら出来ずに怠けていた男だぞ。大工仕事なんて絶対に不可能だ」

『言っている意味が分かりませんが、とにかく無理なのですね』

「まあ、そう言うことだな……」

キルルにそう返した後に俺は近くでだらけているゴブロンと角刈りを凝視した。

だらける二名は日差しが暑いのか手を団扇代わりにして顔を扇いでいる。

「なあ、ゴブロンに角刈り」

「なんでやんすか、エリク様?」

「お前らはここで何をしているのだ?」

ゴブロンがだらだらした態度で答える。

「決まってるじゃあありやせんか」

「なんだ?」

「護衛でやんす」

「『護衛?」』

俺とキルルが二人並んで首を傾げた。

「そうでやんすよ、エリク様。我々は魔王様の親衛隊なのですから、当然ながらの護衛中でやんす」

「そのだらけた態度が護衛の態度か?」

「だらけてようが、だらけていまいが、護衛は護衛でやんす」

『僕には護衛を言い訳に仕事をサボっているようにしか見えませんが?』

キルルが可愛い顔で的確なことを指摘した。

流石は秘書だな、鋭いぞ。

「そ、そんなことはないでやんすよ、キルル殿! これは立派な護衛の仕事でやんす!!」

慌てるところを見るからに図星だったようだ。

「まあ、いいさ。だらけているところを皆に見られているんだ。そのうち皆にやっかまれても知らんからな」

ギグッ!!

ゴブロンと角刈りが硬直した。

『魔王様も民が見ているのですから少しはシャキッとしてくださいね』

ギクッ!!

続いて俺が硬直した。

「そんなことよりも……」

俺は話を反らすために自分の脇の下をクンカクンカしてみた。

脇の下がほのかに臭うのだ。

「なあ、キルル。俺、臭くないか?」

『すみません、魔王様。僕は臭いが分からなくて……』

「あ~~、そうだったな……」

俺はもう一度自分の脇の下を嗅いでみた。

確実に酸っぱい臭いが漂ってくる。

「なあ、ゴブロンに角刈り、お前らも嗅いでみるか?」

「結構でやんす……」

ゴブロンが露骨に嫌な表情で拒否していたが、角刈りのほうが平然と話に乗って来た

「じゃあ、俺は少しだけ」

そう言い角刈りが俺の脇の下に鼻を近付ける。

クンカクンカと臭いを嗅いだ。

「あ~、確実に臭いますね~」

「そう言えば転生してから一週間ぐらい過ぎたが、一度も風呂に入ってないな……」

『魔王様は、お風呂に入りたいのですか?』

角刈りが言う。

「エリク様、この辺にお風呂なんて高級な施設はありませんよ……」

「風呂は贅沢品か?」

「贅沢ですね。私はお風呂になんて浸かる贅沢をしたことがありませんよ」

ゴブロンもコクリコクリと頷いていた。

「じゃあお前らは風呂をどうしているのだ?」

「体をお湯に浸けたタオルで吹くとか、川に水浴びに行くぐらいですよ」

「水浴びか~、俺も水浴びでもするか~」

「じゃあ、どうでやんす。これから水浴びにでも行きやんすか?」

「水浴びってどこでやるんだ?」

「川でやんすよ」

「川って近いのか?」

「ここから200メートルぐらいでやんす」

「じゃあ、行ってみるか。ゴブロン、角刈り、俺を水浴び場まで案内しろ」

「「はっ!」」

二名のゴブリンは元気良く敬礼すると森のほうへと俺を案内する。

そして、森の中を200メートルほど進むと滝が見える川に到着した。

『なかなかの滝ですね』

「そうだな」

岩場に聳える滝の高さは15メートルほどの高さだ。

滝壺に子供たちが水浴びをしながらワイワイと遊んでいる。

「ここが水浴びの滝でやんす」

「なんか思ったより立派な滝だな。自然豊かで清々しいぞ。マイナスイオンに溢れていそうだな」

『何を言ってるかよく分かりませんが、そうですね、魔王様』

川下のほうを見れば女性たちが選択に励んでいる。

「洗濯もここでやっているのか?」

「洗濯だけでなく、村の水はすべてここから汲んできて使っていますよ。飲み水もここで汲んでます」

「生活用水すべてがこの川からの使用なのね」

「そうでやんす」

「うぬぬ?」

なんか滝上から声が聞こえたような気がする。

俺が滝の上を見上げると角刈りが言う。

「滝の上流は、女性用の水浴び場です。あと飲み水は上流から汲んでくるので、飲み水汲みは女性たちの仕事となっています」

角刈りの話を聞いて俺の眼の色が変わる。

「要するに、上は楽園なのだな!」

俺の熱い声色を感じ取ったゴブロンが拳を強く握り締めながら言った。

「その通りでやんす!!」

だが、ゴブロンが悲しそうに上流を見上げながら述べる。

「ですが、上は禁男のエリア……。男は何人たりとも近付けないでやんす……」

その時であった。

我々四名の背後をアンドレア、カンドレア、チンドレアの三名が話ながら坂道を登って行くのである。

「カンドレア、チンドレア、今日は力仕事をご苦労でありんす。お主らのお陰でだい作業がはかどったでありんすよ」

「御姉様、力仕事なら我々妹にお任せください」

「御姉様の分まで我ら妹が頑張りますわ」

「本当に助かるでありんす。それじゃあ一日の閉めに水浴びでもしてからご飯にするでありんす」

「「はい、御姉様」」

俺、ゴブロン、角刈りが三姉妹の後ろ姿を黙ったまま見送った。

「「「…………」」」

『ど、どうしました、魔王様……?』

俺はキルルを無視してゴブリンたちに言う。

「ゴブロン、角刈り、聞いたか、今の?」

「へい、聞きやした……」

角刈りが言う。

「それで、魔王様はどうなされるつもりですか?」

俺は真剣な眼差しで答えた。

「決まってるだろ。行動あるのみだ!」

「「流石は魔王様!」」

その言葉でゴブリンたちは俺の気持ちを察してくれた。

「そこでだ、何か名案はないか?」

「古典的ですが、草木の陰から覗き込むのが得策だと思います!」

「よし、名案だ! その作戦で行動するぞ!!」

「「はっ!!」」

ゴブロンと角刈りが凛々しく敬礼したときである。

キルルがフワフワと空に飛び上がると滝の上流に向かって声を放った。

「アンドレアさ~ん、カンドレアさ~ん、チンドレアさ~ん。覗きですよ~」

「「「はっ、裏切り者が居る!!」」」

俺たち三名が驚愕に固まる。

するとキルルの呼び掛けにカンドレアとチンドレアが滝の上流から頭を出した。

そして、我々を見下ろす角度から大木槌を投擲してきたのだ。

投げられた大木槌が俺の足元に着弾してドゴンっと跳ねる。

「危ねぇ!!!」

俺たち三名は走って森のなかに逃げ込んだ。

そして、自分たちの安全を確保するとゴブロンが俯きながら近くの木を拳で叩いて悔やむ。

「ち、畜生でやんす……」

俺は微笑むキルルを見ながら愚痴った。

「まさか、こんな間近に密告者が存在するとは……。おちおちと覗きすらできないのかよ……」

ただただキルルはニコニコと微笑んでいた。

この幽霊少女が怨めしい……。

「仕方ない、覗きは諦めよう……」

「そ、そうでやんすね……」

「しょうがないから、滝の水だけでも飲んで行くか……」

「女性たちの味がするかも知れやせんからね……」

なかなか分かってるな、こいつ。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...