漆黒の騎士と紅蓮の皇帝

太白

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皇帝サイドⅩ

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    白薔薇の騎士Ⅱ

 僕がドゴンと友達になってから、数日後、ドゴンはリリィに会わせてくれた。

「あら、レックスじゃない。久しぶりね。ずいぶんと背が伸びて」
「リリィも元気そうだね! 僕、騎士候補生になったんだ」

 一瞬、リリィの顔色が変化したような気がした。あれ? 僕、変なこと言ったかな?

「そう……陛下からお聞きしているわ。私が貴方の教育係に任命されたの。普段は騎士というものは自分のことに専念するのだけれど……このご時世じゃね。ワガママ言ってられないわ。宮殿だって人手不足だし、騎士候補生を育てるのなら、騎士が教えるのが一番手っ取り早い。ところで、レックス。『青薔薇の騎士』には会えた?」

 『青薔薇の騎士』。確か騎士の位は三つあって、『白薔薇』、『青薔薇』、『黒薔薇』の騎士がいる。なかでも『黒薔薇の騎士』が一番強いらしい。でもその黒薔薇の騎士とやらは、今はいないみたい。まぁ、この戦争じゃ何があってもおかしくないよね。
 で、残るは青薔薇の騎士なんだけど、

「確か、ヨーデルって言う人だよね? ドゴ……いや、陛下からお話は聞いているよ。でもまだ会えていないんだ」
「そう、まぁ彼も忙しいからね。そのうち会えると思うわ」
「ヨーデルさんってどんな人? こわい?」
「怖くない、怖くない、安心して、レックス。ヨーデルも騎士の名に恥じない、立派な人よ」
「そっか! 楽しみにしておくね!」

 リリィに宮殿の中を案内してもらう。思っていたよりもずっと広いんだ! いろんなお部屋があって、あ、でも、

「レックス。ここは陛下の書斎よ。残念ながら貴方は入れないの。陛下御自身の他には騎士しか入室は許可されていなくてね」
「そうなんだ! 「トップ・シークレット」ってやつ?」
「そうよ、レックス。だから貴方はまだ入れない。でも貴方のことなら、すぐに騎士になれるでしょうし、陛下の書斎に行けるようになるのも時間の問題ね」

「確かユールさんもそんなこと言っていたよ? でも僕、そんなにすぐに騎士になれるかな? 僕、そんなに強くないよ?」
「ユールって、あのユール? ユール・タマージュのことかしら」
「そうそう! そのユールさん」

「……まだ元気にしていたのね。いい加減くたばってくれないかしら」

 ??? リリィ、もしかして怒ってる? 確かにユールさんはいい人じゃないけど、わるい人でもないんじゃないかな? だって、ユールさんがいなかったら、こうしてリリィにも会えていないわけだし。僕がそんなことを考えてると、

「あぁ、ごめんなさい。ちょっと私、ユールとはいろいろあってね。レックスにこういうことはあまり言いたくないのだけれど、私あの人のこと

 やっぱり、リリィ怒ってる! どうしよう? こんなときは話変えないと。

「リリィ、今日はいい天気だね」
「貴方、バカなの? 話変えようとしてるのバレバレよ」

 う。バレた。そして、リリィにバカって言われた。ちょっと悲しい。

「あぁ、ごめんなさい。ひどいことを言ってしまったわ。今のは忘れて」
「うん……そういえば、候補生って何するの?」
「そうね……レックス、貴方、文字の読み書きはできるわよね?」
「うん、できるよ。お母さんに教えてもらった! ちょっとぐらいなら難しい文字も読めるよ。でもお父さんが持っていた、指南書はよくわからなかった!」
「逆に分かったら、私が怖いわよ、そうね、文字の読み書きができるとしたら、次はテーブルマナーだけど……それはできる?」
「うん、ナイフとフォークの持ち方はわかるよ! お母さんに教えてもらった。確か外側から使うんだよね?」
「そうそう、だとしたら、次は語学かしら……」
「お父さんの本読んでたから、五ヵ国語ぐらいはわかるよ?」
「え?」
「え? これって普通じゃないの?」
「普通じゃないわよ、レックス。貴方、騎士としての教育はほとんど済んでいるじゃない。となるとあとは実技、レイピアの使い方ぐらいかしら」

「レイピア? レイバンなら知ってるけど」
「レイバンはサングラスよ、じゃなくて、レイピア! わかりやすくいうと騎士が使う武器のことよ」

 あ、リリィ笑ってる。機嫌直ったみたいでよかった。

「レイピアの使い方って難しい?」
「まぁ、騎士が使いこなさなければいけない武器だから、難しいことは難しいけど、レックス、何か武器は使ったことある? そうね、たとえば木刀とか」
「僕、ステゴロ」
「だから、なんで貴方、そんな言葉知ってるのよ」

 リリィがお腹を抱えて笑う。僕、そんなに面白いこと言ったかな?

「まぁ、そうね……ステゴロしか知らないのなら、レイピアは早いわね。木刀からはじめましょうか」
「うん、わかった」
「まずは、そこからよね。道のりは遠いんだか近いんだか………私、よく分からなくなってきたわ」

「フェルナンデス、其方の影武者を用意した。しばらくは安心するがよい」
「そうですか、父上、それで、その、影武者とやらの名前は?」
「レックス。レックス・ウィステリア。其方も覚えておけ」
「レックス。ラテン語で「王」ですか。生意気ですね」

 フェルナンデスは呟く。

「まあ、あまり難しいことは言わんが、仲良くしてやってくれ」
「父上がそう仰るなら、そうしますけど、その……何かそいつに取り柄はあるんですか?」
「レックスは五ヵ国語を話せるぞ」
「……え?」

 ドゴンのひと言で、フェルナンデスの時は止まった。
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