【急募】バッドエンド

文字の大きさ
21 / 81

フルフェイスヒーロー

しおりを挟む
「えッ!?」

 突然の絶望に体が瞬時に動いて、俺は近くの木の影に隠れた。

 なななんで? ゴールデンウィークには大分早くない?

 まだ4月も前半だというのに、少し前に制服を着た由奈がいた。高校生だから制服なのは当然だとして、何故ここに立っているのか説明してほしかった。

 ちなみに由奈は一人じゃなかった。

 俺たちとは違う制服を身に着けた左目に眼帯した男といる。うわ……ッ厨二病男じゃん。ゴールデンウィークのイベント前倒しされてんじゃん。

 もう諦めた。これまでも人生をやり直すたび少しずつおかしなことはあった。今さら一か月早まったところで驚くことじゃない。

 けど、由奈から逃げる準備はできていなかった。

「無視して通り過ぎればいいのか」

 簡単なことだった。

 何食わぬ顔をして二人から距離を保ちつつ競歩で通過する。なんのアクシデントも無く俺はイベントを回避した。一瞬由奈が助けを求める目をこっちに向けた気もするけど、反応したら負けだ。

――やッッッッた!

 なんだよ、拍子抜け。これでもう俺は自由の身! あとは校内で会わないよう努力すればいいだけだ。さっさと登校しちゃお。

「止めてください!」
「…………」

 はぁ~ん? 俺の良心抉る叫びやん?

 でも今の俺は違う。この程度に靡く人生一度目の人間じゃない。

「僕の左目が語っているんだ。君が前世のパートナーだとね。覚えていないかい、僕と愛し合った日々を」
「キモ」

 ふほぉぉッ。厨二が語り始めたァ! おぅふ……そうだ、そんな変態案件を初対面に語る奴だった。

 でもさぁ、億が一前世っていうものがあって今世に生まれ変わって前世の恋人に会った時、相手が覚えていない場合悲しいよね。話しかけたとしてもおまわりさん呼ばれるだけだしさ。まあ俺だったら、どう転んでもあんな気持ち悪く説明しないけど。

 とりあえず行こ。俺には関係無いことだ。もしかしたらこの二人が上手くいくかもしれない。

「何を言っているんだ、ニーナ!」
「キモ!」

 …………行こ。

「思い出すまで離さないよ」
「やだっぁぁあぁ」

…………んもぉぉ~~~~~!

 なんであいつあんな気色悪いんだよ! 仮に本当でも成功する確率マイナス五億じゃん!

 でもここで俺が出ていったら出会ってしまう。しかも厨二がキモ過ぎだから、助けた俺にフィルターがかかってきっとまた俺を好きになる。うぬぼれじゃない。

「ニーナ!」
「助けて!」

 …………行かない!

「ニーナ! 思い出してくれニーナ!」

 …………ニーナニーナうるせぇな!

 俺《・》は行かないからな!

 隣にあったバイクに置いてあるヘルメットを拝借して被る。バイクの持ち主さんごめんなさいまだ帰ってこないでください!

「あーあー、マイクテス、オーケー」

 鞄を放り、揉める二人へ向かって走り出す。

「そこまでだ」
「誰だ!」
「私は誰でもない。お前こそ嫌がる女性の手を引いて、なんのつもりだ」

 俺は堀塚蓮ではありません! 謎のヒーロー!

「なんだとぉぉ?」

 怒るよねぇ、だよねぇ、知ってた。見てよ、由奈だって謎の人物が増えてぽかんとしちゃってるじゃん。由奈からしてみれば、フルフェイスの俺もワンチャン敵かもしれないもんね。

「僕たちの仲を裂こうとするとは、さては貴様、敵国のサイネルだな」
「サイネルだかカバネルだか知らないが、私はただの通りすがりだ」
「通りすがりがそんなに怪しいはずないじゃないか」
「これは私の正装。馬鹿にするとは、どうなっても知らないぞ」

 知らないのは俺だ。設定ゼロで飛び込んだものだから何もかもがガッバガバ。何が制服にフルフェイスが正装なんだよ。喋り方も怪しさしかない。恥ずかしいから、由奈はさっさとどっか行ってくれないかな。

「すごい」

 由奈いるし。すごいって何。良いのか悪いのか分からない感想もらっちゃった。本当、俺の為にも消えてくれませんか。

「ちくしょおおこれでもくらえ! 左目に宿りしドラゴンよ、今こそ目覚めよ。ダイナミックドラゴンアタ―――ック!」

 だだだせぇぇぇ~~~~ッ。あばらが折れそう! フルフェイスの中、表情筋という表情筋が大炎上してるよ!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

処理中です...