そろそろ寿命なはずなのに、世界がじじいを離さない

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新生活

到着

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 たしかに異人は珍しい。しかし、国内でゼロというわけでもないらしい。城で噂になるほどだろうか。

「新しくやってきた異人は特別強い力を持っていて、神の加護があるに違いないと。来るべき時が来たら、この国を救ってくれるだろうと。そういう話をちらほら聞きました」
「それはさすがに尾ひれが付きすぎでは……」
「父上は本気のようです。ちなみに、僕もこの目で拝見しましたので本気です」

 アルトの曇りのない眼に見つめられ、鉄次郎は何も言えなくなってしまった。

 一行が出発する。王宮軍に挟まれる形で王族の馬車がゆっくり進み、鉄次郎はその横についた。今のところ特に変わった様子はない。

 聞いた話では、ダイオンにはそれはそれは強い軍人がいるらしい。しかも、武器を使わずにその身一つで剣を持った大男をも投げ飛ばすという。それを聞き、皇帝も軍事力を上げて有事に備えたいと考えるようになったそうだ。

──強い軍人か。この目で見られるといいが。

 大男が勝てないくらいだから、きっと体躯の良い人間なのだろう。今の老体では敵わないかもしれないが、異能力時なら良い勝負ができるかもしれない。一度手合わせを願いたいと鉄次郎は考えた。

 しかし、話し合いに言っていきなり手合わせは無理がある。まずは交流を持たなければならない。そもそも、今回会えるとも限らないのだ。

──きっとこれからも魔王について情報共有で行き来するだろうから、いつか機会があると期待しておこう。

 半日してソードフルの国境を越えた。ここからはダイオンの領土となる。壮大な草原が広がり、モンスターが歩いている。たいていは大人しいもので、こちらに向かってくるもの以外は素通りしていった。

「今日は野営をいたします」

 陽が暮れ始め、川の近くで野営の準備が始まった。鉄次郎も率先して手伝う。簡易の寝床が完成し、各々寛ぎ始めた。

 鉄次郎が空を見上げる。遮るものが何も無い夜空はどこまでも続いていて吸い込まれそうだ。

「お、流れ星。明日は良いことがありそうだ」

 鉄次郎は流れ星に向かって手を合わせた。


 翌朝、午前中のうちにダイオンの王都に到着した。王都の入り口に数人の軍人が立っている。その中に異彩を放つ者がいた。オーラからして並大抵の人間でないことが分かる。

 意外だったのは、それが女性だったことだ。しかも、鉄次郎と同じ年代の。

──これはまた可愛らしいおばあさんだ。

 鉄次郎とさほど変わらない体系の老女に、佳代一筋の鉄次郎は不覚にもときめいてしまった。
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