78 / 87
最後の戦い③ sideベンダル
暗黒竜に呑み込まれたベンダルもただでは居かった。暗黒竜の中に結界を張り吸収されんように耐えた。腹の虫に聖なる結界を張られた、暗黒竜の黒い塊が苦しみに呻いた。
「ぐっ……小賢しいまねを」
腹の中のブランドを吸収しようと集中し、停止した触手。俺は好機を逃さず暗黒竜に紫炎をぶつけた。
竜神様は、俺の上空で再び浄化の力を集め始める。一度浄化の力を使いしかも、完全体ではない彼女が暗黒竜に勝てる可能性は低い。
それでも、彼女が諦めない限り、何度でも力を貸そう。この身が朽ち果てようとも。剣を振るう幾度となく!
「力が足りないなら……わたくしの生命力を。この命に代えても、アーガストは護りますわ」
竜神様が命を捨てる覚悟をした時だった。静かに何の前触れもなく、それは起こった。
ポツリ……。
小さな滴が、優しく、穏やかに頬に当たった。俺と竜神様が見上げた空は、雲一つないどこまでも高い晴天。
そこには稲光もトグロを巻く黒雲も無かった。
雲のない空から、光の雨が降りだした。
ポツリ、ポツリと小さな粒が、どどっと打ち付けるような豪雨に。
光は皮膚から、肺から体の中に染み込んだ。体が燃えるように熱い。
「力が漲る……これは?聖なる力か!」
「そうです!マナツと皆さんの聖なる祈りの力ですわ!
ありがとうマナツ。遠く離れても、貴女はわたくしに力をくださいます」
光の雨に焼かれもがき苦しみ、暗黒竜は腹の中から、ブランドを吐き出した。
「助かりましたよ竜神様。
この雨は……なんと優しく背中を押してくれるような温かな力です」
ブランドが恵みの雨を待ちわびた蛙のように目を細めた。
「暗黒竜……いえ!ザギドナ。これで終わりにします。今度は呪い一つ残さず浄化しますわ」
ぶわあっと竜神様から、光が溢れた。光は竜巻となって空を突き抜けた。
竜神様を形作っていた輪郭が曖昧になり、自らを巨大な聖光の球体と変化させた。
目すら開けられない圧倒的な神々しい光。
聖なる力の原始そのもの、如何なる邪悪を赦さず塵一つ残さず焼き尽くす。裁くモノが其処にはいた。
「返り討ちにしてくれる!!」
邪悪な暗黒竜は吼えた。黒い塊を震わせ、原始の闇そのものとなった。呪いを撒き散らし、竜神様に体当たりした。
闇と光が激しくぶつかり合う。力と力が渦を巻く。土地を削り、木々と俺たちを吹き飛ばした。
ドオンーーー。
両者が弾け飛んだ。
力を失った竜神様が崖から墜ちていく。
ザギドナは浄化され霧散した。
制御者を亡くし行き場を失った力が爆発し、光が迸る。
強烈な光は爆風とともにアーガスト全土を駆け、白夜のように夜を照らした。
あなたにおすすめの小説
贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる
マチバリ
恋愛
貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。
数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。
書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。
勘違い妻は騎士隊長に愛される。
更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。
ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ――
あれ?何か怒ってる?
私が一体何をした…っ!?なお話。
有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。
※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。
「俺にしがみつくのはやめろ」と言われて恋が覚めたので、しがみつかずにリリースします。相容れないとほざくあなたは、今、私に捨てられましたわ
西野歌夏
恋愛
前世でフラれた記憶を思いだしたフローラ・ガトバンは、18歳の伯爵令嬢だ。今まさにデジャブのように同じ光景を見ていた。
エイトレンスのアルベルト王太子にまつわるストーリーです。
※の付いたタイトルは、あからさまな性的表現を含みます。苦手な方はお気をつけていただければと思います。
2025.5.29 完結いたしました。
冷遇された妻は愛を求める
チカフジ ユキ
恋愛
結婚三年、子供ができないという理由で夫ヘンリーがずっと身体の関係を持っていた女性マリアを連れてきた。
そして、今後は彼女をこの邸宅の女主として仕えよと使用人に命じる。
正妻のアリーシアは離れに追い出され、冷遇される日々。
離婚したくても、金づるであるアリーシアをそう簡単には手放してはくれなかった。
しかし、そんな日々もある日突然終わりが来る。
それは父親の死から始まった。
殿下、今回も遠慮申し上げます
cyaru
恋愛
結婚目前で婚約を解消されてしまった侯爵令嬢ヴィオレッタ。
相手は平民で既に子もいると言われ、その上「側妃となって公務をしてくれ」と微笑まれる。
静かに怒り沈黙をするヴィオレッタ。反対に日を追うごとに窮地に追い込まれる王子レオン。
側近も去り、資金も尽き、事も有ろうか恋人の教育をヴィオレッタに命令をするのだった。
前半は一度目の人生です。
※作品の都合上、うわぁと思うようなシーンがございます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
【完結】 君を愛せないと言われたので「あーそーですか」とやり過ごしてみたら執着されたんですが!?
紬あおい
恋愛
誰が見ても家格の釣り合わない婚約者同士。
「君を愛せない」と宣言されたので、適当に「あーそーですか」とやり過ごしてみたら…?
眉目秀麗な筈のレリウスが、実は執着溺愛男子で、あまりのギャップに気持ちが追い付かない平凡なリリンス。
そんな2人が心を通わせ、無事に結婚出来るのか?
引きこもり聖女は、娼館で初めてを捧げた相手に溺愛されたんですけど
西野和歌
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した聖女アーシアは、自分が魔王と戦い死ぬ運命だと思い出す。
――死にたくない。そして、聖騎士セシルを死なせたくない――
だから彼女は聖女を辞めることにした。
その方法は――純潔を捨てること。
氷の神像と呼ばれる美しい聖騎士に、ずっと想いを寄せていた。
愛しのセシルに告白したものの、あっさり振られた。
やけになって飛び込んだ娼館で、仮面の男に抱かれた夜。
純潔を捨てに行った夜の相手が、誰より愛しい人だった。
知らないまま結ばれた二人と、立ちふさがる聖女という存在の意味。
アーシアが起こす最後の奇跡の果てに待つ幸せとは。
・成人シーンには☆つけてます。
唯一の味方だった婚約者に裏切られ失意の底で顔も知らぬ相手に身を任せた結果溺愛されました
ララ
恋愛
侯爵家の嫡女として生まれた私は恵まれていた。優しい両親や信頼できる使用人、領民たちに囲まれて。
けれどその幸せは唐突に終わる。
両親が死んでから何もかもが変わってしまった。
叔父を名乗る家族に騙され、奪われた。
今では使用人以下の生活を強いられている。そんな中で唯一の味方だった婚約者にまで裏切られる。
どうして?ーーどうしてこんなことに‥‥??
もう嫌ーー