メリッサ博士の欲望開発メモ

豆丸

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メモ①

 助手C、考えてごらんよ。
 
 今回の実験はさ、素晴らしいエネルギーの転換期をもたらすものになるだろう。
 魔力も聖神力も暗黒力もさらに魔石さえも使用しないんだよ。  
しかもさ、エネルギーを使用した後に二酸化炭素も毒物質も放出しない。実に自然に優しいクリーンエネルギーなんだ。 

 ええ?そんな都合のよいエネルギーないだろうって??

 ははっ、そんな狭小な思考能力だからさぁ。難関セイラン大学卒の天才博士の僕の足元にも及ばないんだ。ゆえに、君はいつまでも博士号を貰えない、つまんない助手Cのままなんだよ。 

 
あれ?怒ったのかい? 
ははっ、本当のこと言われたらきついよね?ごめんよ。 

 ……ちょっと帰られないでくれよ。

 は?パワハラでやってられない。徹夜は当たり前、お給料は低いし退職するだって……いやいや落ち着いて待ってくれよ。
 今、君は世紀のエネルギー転換期に居合わせてるんだ。これは素晴らしいことなんだよ?本来なら、平凡モブ助手が居合わせられることなんてないんだからさ。

 行くなよって!
せめてさ、僕の偉大な新しいエネルギー理論を聞いてからにしてくれたまえ。  

もったいないぶらずに早く言えって?
低学歴は余裕ががないねぇ。うそうそ行かないで下さい。

こほんっ。
それでは、新しいエネルギーを発表するよ。それはね……人の欲望だ!

助手C?なに……マヌケ面を晒してるんだい?もう一回言うよ、欲望だよ。 

とある宗教だと欲望は五つあると言われているよ。
「睡眠欲、食欲、財欲、色欲、名誉欲」 とかだね。僕はこの中の色欲ならエネルギーに変換可能だと思うんだ。
 
 色欲、主に男女間の性的な欲望や情欲のことだよ。ああ、もちろん僕だって男男や女女があることも把握済みだよ。
 
 論点はそこじゃなくてさ、性的な願望を煽って煽って極限まで我慢させることにより発する感情のエネルギーを利用するんだ。端的に言うと我慢力?欲望力的な?目の前に美味しそうな異性がいても、触れたくても触れられない。犯したくても犯かせないみたいなさ! 

 ……なに、助手C?その冷たい目は?……んっ?そんなのエネルギーに転換不可能だって? 
はははっ、だから君は平凡な……以下略なんだよ。     この天才な私が開発した『欲望吸いとルーン君』を使用すれば可能なのさ。
 吸いとった欲望は、装置を通って結晶化されて欲望石になるんだ。無限の可能性を秘めた新しいエネルギーだ!凄いでしょう? 

うん?驚きすぎて開いた口が塞がらないのかい?
分かる……分かるよ。 ただ、ひとつ問題なのが人選だよ。無限の性欲をもて余した奴を使用しないとなんだ。
そこでだ、助手Cに獣人の雄を用意してもらいた。もちろん奴隷でいいよ。簡単だろう? 

 ……人権、倫理に反するって?なに言ってるんだい?奴隷に人権なんてないだろう?  
 大陸全土に全奴隷解放宣言が確立されてて、今は奴隷が使えないって??
 
 はぁ?嘘だよね?
 
 もう……三年前の話しだって?そんな下らないことさ、偉大な研究に明け暮れてた僕が把握するわけないよね?  
 
 元奴隷の獣人でいいからさ、雇えないかな?それもいないのかい?なぜさ?
 
 今……獣人たちはホスマ大陸に集結してる?魔人に牛耳られた祖国を取り戻そうと戦争してるって?……自国の奪還とか、そんなこととーでもいいよ!
 このままでは僕の素晴らしい計画が頓挫してしまう。  
 困るよ……。
 
 嘆く僕を後目に、助手Cは机に辞表を叩きつけて出ていった。助手A、Bに続きCまでも……。どいつもこいつも今まで可愛がってあげてたのに不義理な奴だよ。
 でも、こんなことで僕は諦めない!失敗は成功の母だからね。一人での準備は大変だけど、僕は天才だからなんとでもなるさ。 

 人っ子一人いない閑散とした研究室の奥、世紀の大発明になる予定だったガラクタたちの山。僕の祖父は大陸の五本指に入る商会を経営してる。無論お金持ちだ。それなのに、年々研究援助額を減らされているんだよ。優秀な孫に出資できる栄誉を不意にするなんて馬鹿なクソジジイだよ。本当に世の中、素晴らしい研究を理解出来ない低俗な人間が多くて困るよ。
 
 ガラクタの中から再利用できる物を探し、少し買い出して、目当ての装置を開発しよう。経費削減やむ無しだ。なあに、天才な僕にかかれば簡単な話だよ。 

 よし、早速使用してみよう。

 召喚条件は……えーと、獣人の雄。年は20から30歳まで。妻子や恋人がいなくて独身者。童貞はお断りと。体力馬鹿で強靭な身体の……とにもかくにも発情してやりたくて我慢してる奴。  
 召喚時間は、深夜0時から早朝5時までとして、元いた場所にお帰りいただこう。 

 装置に条件を入力し、スイッチを押す。上手くいけば、用意した大きな檻の中に獣人が召喚されるはずさ。 

ぶぉーーーんっと鈍い低音をたてて『おいでませ君』が稼働した。
 檻の床が淡く光輝くと徐々に光が集まり人の形を形成していく。
 光が失われた床に目を見張るような大柄な人影。そこには獣人が寝転がっていた。装置は大成功したのさ。  
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