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再びトレームグレイグ
LV31 ドライアドのお願い
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ドライアドに連れられ奥へ奥へと進んで行くと、樹齢数百年は経つであろう大木が聳《そび》え立《た》っていた。大木にドライアドが手をかざすと木の根がせり上がり洞窟が姿を現す。
「こちらです」
ドライアドは中へと入っていく。
洞窟の中では赤や黄色、青などの光の玉がふわふわと浮き、時折フミヤ達に寄ってきては離れる。
「きれいだな」
「モキュモキュ」
ドライアドが手を出すと、その光の玉はドライアドの手の平に乗ったり、腕や体の周りを旋回し喜んでいるように見えた。
「この子たちは妖精の幼子、まだ未熟なので体こそは形成されていませんが、それぞれに生命が宿っているんですよ」
「へえー」
フミヤは初めて見る綺麗な光景に心を奪われていた。
「着きましたよ、この奥です」
ドライアドの翳《かざ》した手によって木の根のカーテンが左右に開く。――と、中には静かに佇む2人の女性の姿が……。
「げっ」
*フミヤは逃げ出した。
*ミス! フミヤは逃げられない。
そこにはゼウスに休暇願いを出し、姿を晦ませた傷心中の二人の神の姿があった。(10・11話及び14・15話参照)
ドライアドはフミヤの背後から肩に手を乗せ、そっと前方へ突き出す。
「そうです。我らが神、アルテミス様とアテーナー様です」
「お二方は、心の傷を癒そうと私の元へ訪ねて来られましたが、今も尚その傷は癒えず、ここで引きこもっておられるのです」
「あ、は……はい」
「フミヤ様のせいで……」
ドライアドは、歯《は》に衣着《きぬき》せぬ物言いでフミヤに詰め寄った。
「お二方が立ち直り元の世界に帰るには、フミヤ様が加護を受け取って頂くしかないのです。とくにアルテミス様は私の直属の神、このままではイチカの森の衰退に繋がってしまいます」
アルテミスは森林・豊穣《ほうじょう》の神、アルテミスの力が衰えていくと木々や大地にまで影響を及ぼしてしまうのだ。
「うーん……後々めんどくさそうだし。ただでさえこの前、勝手に加護付けられてたし」
なかなかの感じで渋るフミヤに、ドライアドは懐から何かを取り出し見せる。すると、フミヤの目の色が一瞬にして変わった。
「そっ、それは‼」
「さすが、フミヤ様お目が高い!」
ドライアドが傍にあったテーブルに置いた物は、食材の中でも入手難易度S級ランクと言われる森のサファイヤ、『イイチコトリュフ』であった。
「フミヤ様が加護の受け取りに同意してくださるのなら、これを差し上げましょう」
「え、いや。でも……」
ドライアドは、生唾を飲むフミヤにさらなる追い打ちをするべく、懐《ふところ》からさらにもう一つイイチコトリュフを取り出しテーブルに置く。
「おおおおーー!」
*フミヤは物欲に溺れている。
「さらにもう一つ」
ドライアドの甘い囁きがフミヤを次第に追い詰めていく。
「あら、まだありましたわ」
*フミヤは魅了されている。
*フミヤのよだれは止まらない。
そして決着の時、テーブルに5つ目のイイチコトリュフが置かれると、頑《かたく》なだったフミヤの心の牙城《がじょう》は
脆《もろ》くも崩れ始めた。
「フミヤ様、どうでしょう?」
「うぅ。むむむ」
「もし、お受け頂けるのであれば、この私が定期的にイイチコトリュフをご提供致しましょう」
「……」
*フミヤは落ちた。
「仕方ないですね。ドライアドさんの頼みであれば、受けましょう。その加護とやらを……」
「ありがとうございます、フミヤ様。やりましたよ、女神様!」
こうして無事交渉が終わり、アルテミスとアテーナーは、フミヤと『同意と同意の契《ちぎ》り』を交わし、無事加護の授受に成功した。使命の達成によりすっかり元気を取り戻した二人は、フミヤとドライアドに礼を言い軽い足取りで去って行った。
ドライアドは、フミヤとメロを森の出口まで送り届けた。
「フミヤ様、ありがとうございました。万が一、お困り事があれば私に言ってください。私《わたくし》で良ければいつでもお力になりますので……」
そう言うと、ドライアドはフミヤに『森の首飾り』を渡した。
「それがあれば、いつでも私と会話ができます」
「わかった、ありがとう!」
フミヤは思わぬ食材の収穫に、ウキウキしながら家へと帰って行った。
*フミヤは純潔の森林《アルテミス》の加護を受けた。
*フミヤは豊穣なる狩猟 LV1のスキルを習得した。
*フミヤは戦略の守護神《アテーナー》の加護を受けた。
*フミヤは女神守護 LV1のスキルを習得した。
*神の加護により大幅にステータスが上がる。
*豊穣なる狩猟により下位スキル狩猟がマスター(LV10)となった。
*採集スキルが LV4からLV6に上がった。
*パワーセーブの呪文を覚えた。
*フミヤは傲慢にして強欲の称号を手に入れた。
―――――――――――――――――――――――――――――――
森の首飾り ドライアドからもらった首飾り。(ドライアドと交信できる)
パワーセーブ 消費MP1 自分の力を抑える事ができる呪文。
(解除しない場合、24時間後にその効果は自動消滅する)
「こちらです」
ドライアドは中へと入っていく。
洞窟の中では赤や黄色、青などの光の玉がふわふわと浮き、時折フミヤ達に寄ってきては離れる。
「きれいだな」
「モキュモキュ」
ドライアドが手を出すと、その光の玉はドライアドの手の平に乗ったり、腕や体の周りを旋回し喜んでいるように見えた。
「この子たちは妖精の幼子、まだ未熟なので体こそは形成されていませんが、それぞれに生命が宿っているんですよ」
「へえー」
フミヤは初めて見る綺麗な光景に心を奪われていた。
「着きましたよ、この奥です」
ドライアドの翳《かざ》した手によって木の根のカーテンが左右に開く。――と、中には静かに佇む2人の女性の姿が……。
「げっ」
*フミヤは逃げ出した。
*ミス! フミヤは逃げられない。
そこにはゼウスに休暇願いを出し、姿を晦ませた傷心中の二人の神の姿があった。(10・11話及び14・15話参照)
ドライアドはフミヤの背後から肩に手を乗せ、そっと前方へ突き出す。
「そうです。我らが神、アルテミス様とアテーナー様です」
「お二方は、心の傷を癒そうと私の元へ訪ねて来られましたが、今も尚その傷は癒えず、ここで引きこもっておられるのです」
「あ、は……はい」
「フミヤ様のせいで……」
ドライアドは、歯《は》に衣着《きぬき》せぬ物言いでフミヤに詰め寄った。
「お二方が立ち直り元の世界に帰るには、フミヤ様が加護を受け取って頂くしかないのです。とくにアルテミス様は私の直属の神、このままではイチカの森の衰退に繋がってしまいます」
アルテミスは森林・豊穣《ほうじょう》の神、アルテミスの力が衰えていくと木々や大地にまで影響を及ぼしてしまうのだ。
「うーん……後々めんどくさそうだし。ただでさえこの前、勝手に加護付けられてたし」
なかなかの感じで渋るフミヤに、ドライアドは懐から何かを取り出し見せる。すると、フミヤの目の色が一瞬にして変わった。
「そっ、それは‼」
「さすが、フミヤ様お目が高い!」
ドライアドが傍にあったテーブルに置いた物は、食材の中でも入手難易度S級ランクと言われる森のサファイヤ、『イイチコトリュフ』であった。
「フミヤ様が加護の受け取りに同意してくださるのなら、これを差し上げましょう」
「え、いや。でも……」
ドライアドは、生唾を飲むフミヤにさらなる追い打ちをするべく、懐《ふところ》からさらにもう一つイイチコトリュフを取り出しテーブルに置く。
「おおおおーー!」
*フミヤは物欲に溺れている。
「さらにもう一つ」
ドライアドの甘い囁きがフミヤを次第に追い詰めていく。
「あら、まだありましたわ」
*フミヤは魅了されている。
*フミヤのよだれは止まらない。
そして決着の時、テーブルに5つ目のイイチコトリュフが置かれると、頑《かたく》なだったフミヤの心の牙城《がじょう》は
脆《もろ》くも崩れ始めた。
「フミヤ様、どうでしょう?」
「うぅ。むむむ」
「もし、お受け頂けるのであれば、この私が定期的にイイチコトリュフをご提供致しましょう」
「……」
*フミヤは落ちた。
「仕方ないですね。ドライアドさんの頼みであれば、受けましょう。その加護とやらを……」
「ありがとうございます、フミヤ様。やりましたよ、女神様!」
こうして無事交渉が終わり、アルテミスとアテーナーは、フミヤと『同意と同意の契《ちぎ》り』を交わし、無事加護の授受に成功した。使命の達成によりすっかり元気を取り戻した二人は、フミヤとドライアドに礼を言い軽い足取りで去って行った。
ドライアドは、フミヤとメロを森の出口まで送り届けた。
「フミヤ様、ありがとうございました。万が一、お困り事があれば私に言ってください。私《わたくし》で良ければいつでもお力になりますので……」
そう言うと、ドライアドはフミヤに『森の首飾り』を渡した。
「それがあれば、いつでも私と会話ができます」
「わかった、ありがとう!」
フミヤは思わぬ食材の収穫に、ウキウキしながら家へと帰って行った。
*フミヤは純潔の森林《アルテミス》の加護を受けた。
*フミヤは豊穣なる狩猟 LV1のスキルを習得した。
*フミヤは戦略の守護神《アテーナー》の加護を受けた。
*フミヤは女神守護 LV1のスキルを習得した。
*神の加護により大幅にステータスが上がる。
*豊穣なる狩猟により下位スキル狩猟がマスター(LV10)となった。
*採集スキルが LV4からLV6に上がった。
*パワーセーブの呪文を覚えた。
*フミヤは傲慢にして強欲の称号を手に入れた。
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森の首飾り ドライアドからもらった首飾り。(ドライアドと交信できる)
パワーセーブ 消費MP1 自分の力を抑える事ができる呪文。
(解除しない場合、24時間後にその効果は自動消滅する)
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