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死者の国 冥界

LV183 緊急会議(下)

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 広間のどよめきは次第に大きくなっていくなか、ゴンドラは高さ3m程の場所で止まる。そして、ゼウスは軽く咳ばらいをし
「えー、ワシが全知全能の神……」と、話し出す。

 だが、大きくなっていくどよめきが、ゼウスが声をかき消していく。

「えー諸君、ワシが全知全能の……」

 会場はどよめきが止まらない。

「アイツ自分で神って……なんか怪しいよな」

「そんなに強うそうじゃないし」

「なんか、偉そうじゃね?」


「えー諸君、ワシが全知……」
 尚もゼウスは話そうとするが、広間に集まった者達は聞こうとする気配がない。

「あれ、絶対ニセもんじゃね?」

「なにかのイベントなのか?」

「神、笑える」


 *ゼウスはぶち切れた。

 *ゼウスは「神の鉄槌」の魔法を唱えた。

 ゼウスの持つ杖から全方向に強力な稲妻が放たれる。

「危ない!」
 ファリスは咄嗟に移動し玉座を背にすると、魔法防御結界『 バブリ・デ・エ・マジカ』を発動する。

 そして、広間内にいる冒険者達もまた、ゼウスの稲妻に反応し防御魔法や盾などで防御をとる。手練れ揃いの冒険者達は、さすがと言うべき素早い動きだった。

 だが、ベレッタにこそ敗れはしたもののその実力はやはり神。人間の能力を遥かに凌駕する稲妻は瞬く間に、冒険者達の防御を突き破る。

「かなり手加減したつもりだが、随分人数が減ったな」
 ゼウスは辺りを見渡して言う。

 ふと、ゼウスの背後に立つベレッタ。

「何するんのじゃ、バカ神!」

 ベレッタはゼウスの後頭部を強く殴りつける。

「おふっ」

 *ゼウスは致命的なダメージを受けた。
 *ゼウスはピクピクしている。

 *広間にいる冒険者達は致命的なダメージを受けている。
 *広間の多くの冒険者達はピクピクしている。

 広間に敷かれた絨毯は焼け焦げ、多くの冒険者達が倒れる光景を目の当たりにした五大王はあんぐりと口を開けたままフリーズしていた。

 
 そして、5分後……。

 王宮兵士達がゼウスを含めた負傷者達を医療室に搬送していく。付き添いに回復魔法を持つヴィオラとファリス、トリニスタント出身のエミリーが席を外した。

 フミヤとゼウスから事前に説明を受けていたトーレムグレイグ王がゼウスの変わりに、残された者達へ任務の内容を説明していく。


 冥界デーメーテール奪還任務

 天界と人間界を繋ぐゲートの狭間に審判の門あり。
 生命終わりし時、生命は精神体となり審判の門を通る。

 善行を行いし者は天界の住民になる資格を与えられ、100年毎に転生するか天界の住民を継続するのかを選択できる権利を得る。

 悪行行いし者は冥界に落とされ、苦痛・苦行を永劫回帰する。悪行の小さき者から順にやがて永劫回帰は免除され、その先は完全なる無で服す。

 今回の任務では、神ゼウスのスキルにより生きた人間から精神体だけを抽出、冥界審判『アイアコス』の許可を経て、冥界へ送る。

 精神体となった人間は数時間もすれば本当に死ぬ。そのため、ゼウスは常にスキルを発動し半死体から精神体にエネルギーを送り続けなければならない。

 その際に捻出される魔力量は莫大であり、ゼウスの能力を持ってしても6人が限界らしい。

 選別された人間は直ちに冥界へと向かい、デーメーテールの捜索と説得をし、迅速な帰還をしなければならない。

 
 トーレムグレイグ王の任務の壮大さに、先ほどとは状況が打って変わりいつの間にか広間内は静まり返っていた。
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