最強勇者の夫～陰であなたを支えます。

暗黒大陸

LV240 渡航

　暗黒大陸へ向かうは、精霊妃ミルミルを含む高名な七名と洗練された航海技術を持つ船員及び屈強な兵士達。その数およそ300人である。

　今回の遠征規模はかなりの大きい。そのため、ムジャールから調達した巨大魔法船は約300人の乗員を乗せてもまだまだ余裕がありとても広い。当初の計画では1000人規模の軍隊の派遣も考慮されていたが、統率の崩れを懸念し人数をに絞っての渡航となった。

　一人の船員が大声で叫ぶ。
「また、魔物です！　前方、前方に巨大な魔物、大王イカです」

「やれやれ、昨日もイカの丸焼き食べたところだぞ」

　船員の声を聞きつけ、船首楼に立ったのは剣王シロク・メイル。

「砲弾の準備を致しますか？」
　船員が尋ねる。

「いや、一体なら問題ない」
　シロクは答えた。

「助けはいるかね？」
　シロクの横に並ぶは、伝説の宮廷道化師ピエロ・ポリオ。

「倒すのは一人で大丈夫なんだが、このままでは今日もイカメインの食事になってしまう」
　そう言うと、シロクは剣を抜き後方に重心を置く構えをとった。

「衝突まであと約100ｍしかありません！」
　船員達はあまりの大王イカの大きさと接近の速さにひどくうろたえている。

「焦らすなよ。すぐ終わる」
　シロクはゆっくりと大王イカに狙いを定め、剣技を繰り出した。

「エアースレイブ！」

　シロクが縦に繰り出した斬撃は真空波となり大王イカに直撃する。海面より姿を現した10m程の巨体は瞬時に真っ二つになった。

「相変わらず雑だな。このままではイカの巨体が船に当たってしまうではないか」
　
　ピエロ・ポリオは指で空中に何度も円を描きだした。すると、円を描いたその場所に魔法により形成された輪が浮かび上がった。

「キラーサークルジャグリング」
　
　ピエロが左手右手と手を振る事でその刃は真っ二つとなった大王イカの亡骸に向かって飛んでいく。

　ピエロは楽しむようにその場で手を振り踊る。ピエロの放った輪はピエロの踊りに合わせるように舞い、弧を描きながら大王イカの巨体を何度も細かく切り刻んでいった。

「さすが……伝説の男は尚も健在だな」

「お主もな。その技、勇者ヴィオラだけの技だと思っていたんだが……」

「ああ、これは俺がアイツに教えた技だ。これでも俺は、ヴィオラの剣の師匠なんだぜ」

「なるほど」

　その後も荒れ狂う海と多発する巨大生物達をなんなく倒しながら、遠征軍はなんなく暗黒大陸へと向かう。

　現在、負傷者は0人。