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前途遼遠
LV252 救世主候補を探せ
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本日フミヤは休日である。一夜明け、フミヤは救世主になりえる人材を集めるべく、まずはトーレムグレイグ城にやってきた。
「――で、何の用だ」
あまり良くない予感がしたのか? 不機嫌そうにイレイザはフミヤに問う。炎煉のイレイザだ。
「あれ? 他の人は?」
「今回の勇者の付き添いは俺とシキートだけだ。レイモンドとシキートは街で買い物をしている。用があるなら街へ行くんだな」
「あー、いいのいいの。それよりイレイザって救世主ってのに興味ある?」
「おまえ、いつも馴れ馴れしいよな」
*イレイザはイラっとした。
「そう? それよりどう?」
「救世主……できるであれば、それほどの名誉職を断るわけない。名誉職と言えば王より三世代先まで豪華な生活が約束されるんだぞ!」
「そうなの?」
「そうだ。だが、名誉職を与えられたほとんどの者は、王から与えられずともすでに富みと名声を手に入れているヤツばかりだけどな」
「なるほど……」
「だが、それがどうした?」
「まあ詳しい話は後にして、夜に俺んち集合ね」
「おい!」
そう言うとフミヤは次の場所に移動する。
「いらっしゃいませーー! あれ、フミヤさん」
次にフミヤが訪れたのはモンペロ。そして、フミヤはモコに声を掛けた。
「モコってさ、救世主やりたくない?」
「なんですか、それ?」
「んーー、なんかすごい名誉職なんだって」
「嫌です!」
「嫌?」
「だって、名誉職っていろいろ面倒臭くありません?」
「うっ」
「その顔……私に面倒くさい事を押し付けようとしてるでしょ?」
「ううっ」
*フミヤは図星をつかれた。
モコの前でまごつくフミヤの姿を見た勤務中のヤマダが厨房から声を掛ける。
「フミヤさん、どうしたんっスか? 休日に珍しいっスね」
フミヤはモコから逃げるように離れると、すぐさまヤマダの元へ行き肩を抱いた。そして、耳元で小さく囁く。
「ヤマダ君、君にしかできない任務があるんだが……」
「俺にしかできない……それって格好良いっスか?」
「当たり前だろ。誰もがやりたくて仕方のないほどの任務らしいぞ」
「マジっスか‼ やるっス」
「お、じゃあ決定ね。夜に俺んちに来いよ! 他の者も来るから」
「わかったっス。仕事終わったら急いで帰ります」
「了解―待ってるぞ!」
「はいっス!」
こういう具合でフミヤは次々と救世主候補を集めていく。
しかし、フミヤがあまりにも多くの者に声を掛けたため、街中のあちこちで噂となり、さらに尾ひれが付いた。噂が広まるにつれ、いつの間にか『救世主』という代名詞はなくなり、「今日の夜、フミヤが割りの良い儲け話を紹介してくれる」と言った、間違った情報が伝わっていた。
そんな事を知る由もないフミヤは、「救世主を辞められるかも」という期待に心躍らせながら家路に着いたのだった。
「――で、何の用だ」
あまり良くない予感がしたのか? 不機嫌そうにイレイザはフミヤに問う。炎煉のイレイザだ。
「あれ? 他の人は?」
「今回の勇者の付き添いは俺とシキートだけだ。レイモンドとシキートは街で買い物をしている。用があるなら街へ行くんだな」
「あー、いいのいいの。それよりイレイザって救世主ってのに興味ある?」
「おまえ、いつも馴れ馴れしいよな」
*イレイザはイラっとした。
「そう? それよりどう?」
「救世主……できるであれば、それほどの名誉職を断るわけない。名誉職と言えば王より三世代先まで豪華な生活が約束されるんだぞ!」
「そうなの?」
「そうだ。だが、名誉職を与えられたほとんどの者は、王から与えられずともすでに富みと名声を手に入れているヤツばかりだけどな」
「なるほど……」
「だが、それがどうした?」
「まあ詳しい話は後にして、夜に俺んち集合ね」
「おい!」
そう言うとフミヤは次の場所に移動する。
「いらっしゃいませーー! あれ、フミヤさん」
次にフミヤが訪れたのはモンペロ。そして、フミヤはモコに声を掛けた。
「モコってさ、救世主やりたくない?」
「なんですか、それ?」
「んーー、なんかすごい名誉職なんだって」
「嫌です!」
「嫌?」
「だって、名誉職っていろいろ面倒臭くありません?」
「うっ」
「その顔……私に面倒くさい事を押し付けようとしてるでしょ?」
「ううっ」
*フミヤは図星をつかれた。
モコの前でまごつくフミヤの姿を見た勤務中のヤマダが厨房から声を掛ける。
「フミヤさん、どうしたんっスか? 休日に珍しいっスね」
フミヤはモコから逃げるように離れると、すぐさまヤマダの元へ行き肩を抱いた。そして、耳元で小さく囁く。
「ヤマダ君、君にしかできない任務があるんだが……」
「俺にしかできない……それって格好良いっスか?」
「当たり前だろ。誰もがやりたくて仕方のないほどの任務らしいぞ」
「マジっスか‼ やるっス」
「お、じゃあ決定ね。夜に俺んちに来いよ! 他の者も来るから」
「わかったっス。仕事終わったら急いで帰ります」
「了解―待ってるぞ!」
「はいっス!」
こういう具合でフミヤは次々と救世主候補を集めていく。
しかし、フミヤがあまりにも多くの者に声を掛けたため、街中のあちこちで噂となり、さらに尾ひれが付いた。噂が広まるにつれ、いつの間にか『救世主』という代名詞はなくなり、「今日の夜、フミヤが割りの良い儲け話を紹介してくれる」と言った、間違った情報が伝わっていた。
そんな事を知る由もないフミヤは、「救世主を辞められるかも」という期待に心躍らせながら家路に着いたのだった。
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