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3 ひと皮むけて
平井の兄
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鍵をあけて、玄関のドアを開けたら、そこに見たことのない男物の革靴。
俺はパニックを起こしてドアを閉め、考える。とうとうその日が来たんだ。先輩が俺の留守中に男を部屋に入れる、なんて日が。
付き合っているわけではない。ふざけてしたやつはノーカウントなら、告ってもいない。だから、俺は先輩の彼氏じゃないし、こういう日が来たって何も、なにもおかしくはないし、先輩は何も悪くない。だけど、俺。なんか腹立つのは何。
深呼吸して、とりあえず、どこか外で時間つぶすってLINE入れとかないと、いつまでも帰れないよな。と思い、スマホを取り出したところで、ドアが開いた。
「優介、何やってんだ?入れよ」
え。兄ちゃん?
急に出張になってこっちにきた兄は、せっかくだからと、家に寄ってくれたらしい。そしたら、先輩が帰ってきて、すでに自己紹介は終わっているのだとか。
5歳年上の兄ちゃんは、俺からしたらずっと大人で、俺は何でも兄ちゃんの真似をして育ってきた。兄ちゃんは、大学を卒業後、地元の会社に就職した。今日は、取引先を訪ねに来たそうだ。
先輩がいつもの絶品煮物を作ってくれて、兄ちゃんも入れた3人でご飯を食べる。
「連絡してくれれば良かったのに」
「そしたら、抜き打ちチェックにならんだろが」
「チェックって何。俺なんも悪いことしてねーし」
「兄ちゃんに黙って女の人住まわせてるのは悪いことじゃねーのか」
「藤原先輩は、ルームシェア。住まわせるのとはちょっと違う」
藤原先輩は、兄弟の会話には全く入らず(自分のことを言われているのに)多分あの顔は、頭ん中で数式いじってる。
「あの、お風呂、わたし鶴の湯さん行くからお二人でどうぞ」
先輩が突然、近所の銭湯に行くなんて言い出す。会話の腰を折られて、兄ちゃんは
「じゃあ、俺らも銭湯行く。そしたら、今日は、風呂沸かさなくて済むだろ」
よくわからない理由だったけど、なんとなく流れで3人連れ立って銭湯に行く。
先輩も俺も部屋の鍵は持ってきたから、どっちかを待たずに上がったらすぐ帰る、と決めて、男湯と女湯とに別れた。兄ちゃんと銭湯なんて、もしかしたら初めてのことかも知れない。
「優介、お前実際のところどうなのよ?藤原さん」
「好きなんだけど、付き合えない」
「なんで」
「そういう約束で、部屋に来てもらった」
いつまでもそのままでいられるわけじゃない。それはわかっている。でも、出来れば一日でも長く先輩と先輩の数式を眺めていたい。っていうのは、兄ちゃんにはわかってもらえないと思うし、恥ずかしくて言いたくもない。
「女が一緒の部屋に住むっていうのに、何もないと思ってるわけないだろが」
「それをないと思ってる人なんだよ。先輩は」
「優介はそれでいいのか」
こんな話してたら、のぼせる。確実に。そう思って洗い場に出る。さっき洗ったような気もするけど、頭を洗ってあえて冷たい水で流す。
「向こうもはっきりしたいのかも知れんぞ」
兄ちゃんが隣でからだを洗いながら言う。
「それに、告ったらふられるって、なんで決めつけてんの」
決めつけてはいない。はずだった。俺、たしかに、ふられるって。先輩が部屋を出て行ってしまうって、思っていた。
「兄ちゃん、今日泊まるの?」
「明日の朝、帰るから」
もう一回湯船に入って、すぐ上がる。
「帰るか」
「うん」
あー。でもまだ。もうちょっと、結論後延ばしでも良いよねえ。
俺はパニックを起こしてドアを閉め、考える。とうとうその日が来たんだ。先輩が俺の留守中に男を部屋に入れる、なんて日が。
付き合っているわけではない。ふざけてしたやつはノーカウントなら、告ってもいない。だから、俺は先輩の彼氏じゃないし、こういう日が来たって何も、なにもおかしくはないし、先輩は何も悪くない。だけど、俺。なんか腹立つのは何。
深呼吸して、とりあえず、どこか外で時間つぶすってLINE入れとかないと、いつまでも帰れないよな。と思い、スマホを取り出したところで、ドアが開いた。
「優介、何やってんだ?入れよ」
え。兄ちゃん?
急に出張になってこっちにきた兄は、せっかくだからと、家に寄ってくれたらしい。そしたら、先輩が帰ってきて、すでに自己紹介は終わっているのだとか。
5歳年上の兄ちゃんは、俺からしたらずっと大人で、俺は何でも兄ちゃんの真似をして育ってきた。兄ちゃんは、大学を卒業後、地元の会社に就職した。今日は、取引先を訪ねに来たそうだ。
先輩がいつもの絶品煮物を作ってくれて、兄ちゃんも入れた3人でご飯を食べる。
「連絡してくれれば良かったのに」
「そしたら、抜き打ちチェックにならんだろが」
「チェックって何。俺なんも悪いことしてねーし」
「兄ちゃんに黙って女の人住まわせてるのは悪いことじゃねーのか」
「藤原先輩は、ルームシェア。住まわせるのとはちょっと違う」
藤原先輩は、兄弟の会話には全く入らず(自分のことを言われているのに)多分あの顔は、頭ん中で数式いじってる。
「あの、お風呂、わたし鶴の湯さん行くからお二人でどうぞ」
先輩が突然、近所の銭湯に行くなんて言い出す。会話の腰を折られて、兄ちゃんは
「じゃあ、俺らも銭湯行く。そしたら、今日は、風呂沸かさなくて済むだろ」
よくわからない理由だったけど、なんとなく流れで3人連れ立って銭湯に行く。
先輩も俺も部屋の鍵は持ってきたから、どっちかを待たずに上がったらすぐ帰る、と決めて、男湯と女湯とに別れた。兄ちゃんと銭湯なんて、もしかしたら初めてのことかも知れない。
「優介、お前実際のところどうなのよ?藤原さん」
「好きなんだけど、付き合えない」
「なんで」
「そういう約束で、部屋に来てもらった」
いつまでもそのままでいられるわけじゃない。それはわかっている。でも、出来れば一日でも長く先輩と先輩の数式を眺めていたい。っていうのは、兄ちゃんにはわかってもらえないと思うし、恥ずかしくて言いたくもない。
「女が一緒の部屋に住むっていうのに、何もないと思ってるわけないだろが」
「それをないと思ってる人なんだよ。先輩は」
「優介はそれでいいのか」
こんな話してたら、のぼせる。確実に。そう思って洗い場に出る。さっき洗ったような気もするけど、頭を洗ってあえて冷たい水で流す。
「向こうもはっきりしたいのかも知れんぞ」
兄ちゃんが隣でからだを洗いながら言う。
「それに、告ったらふられるって、なんで決めつけてんの」
決めつけてはいない。はずだった。俺、たしかに、ふられるって。先輩が部屋を出て行ってしまうって、思っていた。
「兄ちゃん、今日泊まるの?」
「明日の朝、帰るから」
もう一回湯船に入って、すぐ上がる。
「帰るか」
「うん」
あー。でもまだ。もうちょっと、結論後延ばしでも良いよねえ。
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