母校に就職したら指導教官が大好きだった先生でした

風花鳴海

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5 飛び込む勇気

留守番組

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「珍しいなあ、廣瀬、榊の同期ペアと昼一緒になんの」
昼定食のトレーを鈴木先生は廣瀬先生の、僕は榊先生の隣に置く。
「夏休みしか、昼休みにご飯食べられないですからね」
夏休みの学食は、教職員専用の体をなす。
「いつもお前ら一緒に飯食ってるの?」
「いつもではないんですけど、俺ら、五限目授業入ること多いんで、たいがい4限目に早弁ですね」
「手を動かせるから、昼ご飯後の生徒の眠気対策なんでしょうけど、物理って、毎日実験するわけでもないんだけどっていう」
「キツい日もあるよな、金曜日とか」
「体育で持久走やった日とか」
同期ペアの2人の会話がとまらない。この2人は本当に仲が良い。
「水谷先生、なんかありました?」
廣瀬先生は人の顔色を読むのがうまい。里見先生もよく失敗を見破られている。
「里見先生、国語科の模擬授業、あまり上手く出来なかったって、昨日連絡がありまして」
「で、なんで水谷ちゃんが元気をなくすのか」
「指導案も見ましたし、模擬授業のリハーサルもかなり積んだのに、もっとしてやれることはなかったのか、と思いまして」
鈴木先生がパクリと僕の皿に載ってたピーマンを食べる。
「水谷ちゃん、もし、学期中質問によく来た生徒の試験の点数が悪かったら、どう指導する?」
「答案を分析して、どこが出来ていないかを把握して、理解の弱いところを再指導、でしょうか」
「教師と生徒として、なら出来ることがなぜ里見相手だと出来なくなるのか。俺にはサッパリわからんけど、水谷ちゃんは里見相手だと急にダメ教師になるよな。特に、あれだ。最近その傾向が強い」
ダメ教師。鈴木先生の思いがけない強いダメ出しに、驚く。
「なんでそうなっちゃうかは知らないけど、生徒相手も新任相手もそう変わらないんじゃないの?やることはさ」
榊先生と廣瀬先生は、さっきまでの会話が嘘のように黙々と食べている。
「すみません」
「あ、悪い悪い。空気重くして。それより廣瀬、来週彼氏の実家行くんだって?」
榊先生がビクッとしている。
「あ、愛莉が研修から戻ったら夏休みいただくので、愛媛と岐阜にあいさつ行ってきます」
「両家回るんだ」
榊先生が、定食に目を落としたまま聞く。
「うん。四国初上陸。一週間まるまる留守にします」
「準備着々と進んでるのなあ」
鈴木先生が目を細める。
榊先生が手を合わせてごちそうさま、といい立ち上がり
「あ、俺実験室の鍵開けっ放しかもしれないんで、先戻ります」
そそくさと食堂を出て行ってしまう。
「あ、わたしも済んだんで。先に失礼します」
廣瀬先生が、続いて席を立つ。
「榊は、まだ失恋の痛みから回復してないのな」
鈴木先生がぽつりと言って、また僕の皿からピーマンを取ってくれた。
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