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不落の要塞
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『カチャリ』と戦場に響き渡るベレッタM92のコッキング音。
ライアンに渡されたたった一丁の武器だ。
なぜ目の前の人を殺さなければいけないのかなどは分からないし分かる事もないだろう。分かりたくもないと言うのが正解かもしれない。
軍人である以上は上の命令は絶対、殺せと言う命令も絶対なのだから分かる、分からないの問題でもないが。
周りを見渡せばM4等のライフル銃で武装を固めた兵士達が沢山居る。
「軍曹!なぜ私だけベレッタ一丁なのですか!これでは死ねと言ってる様な物ではありませんか!」
何を言っているのか分からないと言う顔でこちらを見る軍曹。
ふっと口を開き話始める。
「誰しも初めはベレッタ一丁から始まる。生き残ればそれだけ我が部隊は支給がされる」
無理やり徴兵し、この有様だ。
「わかりました。 生き残れる様に精進します」
「分かればいい」
軍曹はまた作戦表に目を向け、ピンを刺し始める。
ぶつぶつと独り言を言いながら行っているので若干気味が悪いのが特徴だ。
また新兵の方を見た。 新兵は嫌な予感がしたのか身震いしている。
「君は新兵の二等兵だったな。 ベレッタが不服だと言うならば敵から奪ってくればいいじゃないか。 前線行きを指示する」
悪い予感が的中したためか震えが止まらなくなっているライアン。
自分が悪い事をしたのか?自問自答を繰り返しても答えは出ないしあるのは返答を待つ軍曹の厭らしい瞳。
「ラジャー! 指示に従いライアン二等兵はこれより前線に向かいます」
丁度その瞬間だった。付近の誰かの声が響き渡った。
「グレネードだあああ! 伏せろおおおお!!!」
慌てて伏せる新兵であるライアン二等兵。
だが足を組んで座っていた軍曹は間に合わなかったようだ。
グレネードが軍曹の付近に転がり落ち、爆発する。
グレネード自体の破壊力はそこまではないものの足くらいなら軽く吹き飛んでしまう。
「足が!!!衛生兵!!!」
直ぐに止血を施すライアン二等兵だったが大きな血管を損傷したためか、出血が酷過ぎる...。それは軍曹がもう長くないと言うのは明白な事を示すには十分だった。
止血の最中にはもう軍曹の命は尽きようとしていた。
「ライアン二等兵…私の名前はグレインだ。私の妻に、いつかこの指輪を渡して欲しい…」
「グレイン軍曹、喋らないでください奥さんが待っているのでしょう?」
「あぁ…だがダメだ…もう最期になってしまうな。少し喋らせてくれ。」
「ラジャー」
「すまなかった…私は嫌々徴兵された上に無理やりしたくもない昇進までさせれた自分が嫌で八つ当たりを部下にして…こんなクズの最後の命令《・・》だライアン二等兵…総員撤退だ」
この言葉を最後に彼は息を引き取った。
ライアン二等兵は状況の把握をしつつ指輪とドッグタグを回収した。
敵が奇襲を仕掛けて来たようで、辺りは騒然としていた。
銃の撃ち合う音、硝煙の匂い、吹き荒れる血しぶき、人々の叫び声。
ライアンの五感いっぱいに地獄が充満した。
だが、彼はその強烈な光景のお陰で手を強く握り、指輪とドッグタグの存在を思い出した。
なにより、軍曹から受けた総員撤退命令が下ったのを思い出せたのだ。
勇気を振り絞り、喉がはち切れんばかりに叫ぶ。
「総員撤退!総員撤退!」
比較的遮蔽になりそうな物に隠れながらどんどん撤退を始める。
それにつられる様にどんどん撤退が始まる。
敵はライアン達の方に追っては来ないようだ。拠点を一つ制圧し、指揮官である軍曹を討ち取れたのだからそれだけで十分戦果はあると言うことだろう。
「軍曹はグレネードを被弾し亡くなった。 最期に総員撤退命令を出して息を引き取った」
ライアンの言葉に皆驚いた。あの鬼軍曹が総員撤退命令を出すなんて、と。
付いている異名は悪魔軍曹。そんな彼が我々を気に掛けたのか、と。
ライアンはドッグタグを本部に届けた後、本国の基地に帰された。
その為にグレインの遺族であるグレインの妻に会う事が出来た。
「ライアン二等兵です。 グレイン軍曹の事でお話があり参りました」
「あら、主人が?どうかされたのかしら」
急に心が苦しくなってきたのか、震えだす。あの凄惨な光景を思い出し、色々な物が込み上げて来る。
だが彼はしっかりと伝えると、そう決めたのだ。
「軍曹は…グレイン軍曹は不運にもグレネードを被弾し...お亡くなりになりました。この指輪を貴女にと」
指輪を差し出す。彼は見てしまっているのだ。指輪になされている刻印を。
『生まれ変わっても一緒に居よう』
受け取った指輪を見て夫人は無言で泣き出してしまった。
それもそのはずだ。立てかけられている写真を見る限り、幼い頃から彼らはずっと一緒に居たのだから。
ライアンはその場を去ろうとする。すると夫人はおもむろに立ち上がり泣きながら口を開いた。
「彼は...主人は...主人の最期は立派でしたか?」
「…えぇ、とても」
ライアンは一度も振り返らずにその場を後にした。
その後基地に戻ったライアンは拠点の奪還作戦の要として昇進が決まり、かなりの速度で気付けば生前のグレイン軍曹と並ぶ軍曹となった。
だが、グレインは殉職による二階級特進にてライアンよりも上とはなっていた。
元の拠点の奪還に夜襲を行った。警備が手薄になることが事前調査で分かっていた為だ。
様々な物を使い、敵を殲滅して行く。
そうして、なんとも渋い形ではあったが奪還する事が出来、敵の指揮官、並びにその補佐官を捕虜に取れた。
その後その任務の功績から曹長へと昇進が決まる。
そして彼は自身の部隊には満遍なくライフル銃などの装備を行き渡らせ、拠点に機関銃やスナイパーライフル等も充実させていき、拠点はかなりの武力を得た。
装備は当然、新兵であっても渡していた。
ライアンのやり方が功を成し、その拠点はライアンが死んでもそのやり方を継承したお陰で一度も墜とされる事は無かったそうだ。
そして、その名はこう呼ばれる事となる。
『不落の要塞』と。
ライアンに渡されたたった一丁の武器だ。
なぜ目の前の人を殺さなければいけないのかなどは分からないし分かる事もないだろう。分かりたくもないと言うのが正解かもしれない。
軍人である以上は上の命令は絶対、殺せと言う命令も絶対なのだから分かる、分からないの問題でもないが。
周りを見渡せばM4等のライフル銃で武装を固めた兵士達が沢山居る。
「軍曹!なぜ私だけベレッタ一丁なのですか!これでは死ねと言ってる様な物ではありませんか!」
何を言っているのか分からないと言う顔でこちらを見る軍曹。
ふっと口を開き話始める。
「誰しも初めはベレッタ一丁から始まる。生き残ればそれだけ我が部隊は支給がされる」
無理やり徴兵し、この有様だ。
「わかりました。 生き残れる様に精進します」
「分かればいい」
軍曹はまた作戦表に目を向け、ピンを刺し始める。
ぶつぶつと独り言を言いながら行っているので若干気味が悪いのが特徴だ。
また新兵の方を見た。 新兵は嫌な予感がしたのか身震いしている。
「君は新兵の二等兵だったな。 ベレッタが不服だと言うならば敵から奪ってくればいいじゃないか。 前線行きを指示する」
悪い予感が的中したためか震えが止まらなくなっているライアン。
自分が悪い事をしたのか?自問自答を繰り返しても答えは出ないしあるのは返答を待つ軍曹の厭らしい瞳。
「ラジャー! 指示に従いライアン二等兵はこれより前線に向かいます」
丁度その瞬間だった。付近の誰かの声が響き渡った。
「グレネードだあああ! 伏せろおおおお!!!」
慌てて伏せる新兵であるライアン二等兵。
だが足を組んで座っていた軍曹は間に合わなかったようだ。
グレネードが軍曹の付近に転がり落ち、爆発する。
グレネード自体の破壊力はそこまではないものの足くらいなら軽く吹き飛んでしまう。
「足が!!!衛生兵!!!」
直ぐに止血を施すライアン二等兵だったが大きな血管を損傷したためか、出血が酷過ぎる...。それは軍曹がもう長くないと言うのは明白な事を示すには十分だった。
止血の最中にはもう軍曹の命は尽きようとしていた。
「ライアン二等兵…私の名前はグレインだ。私の妻に、いつかこの指輪を渡して欲しい…」
「グレイン軍曹、喋らないでください奥さんが待っているのでしょう?」
「あぁ…だがダメだ…もう最期になってしまうな。少し喋らせてくれ。」
「ラジャー」
「すまなかった…私は嫌々徴兵された上に無理やりしたくもない昇進までさせれた自分が嫌で八つ当たりを部下にして…こんなクズの最後の命令《・・》だライアン二等兵…総員撤退だ」
この言葉を最後に彼は息を引き取った。
ライアン二等兵は状況の把握をしつつ指輪とドッグタグを回収した。
敵が奇襲を仕掛けて来たようで、辺りは騒然としていた。
銃の撃ち合う音、硝煙の匂い、吹き荒れる血しぶき、人々の叫び声。
ライアンの五感いっぱいに地獄が充満した。
だが、彼はその強烈な光景のお陰で手を強く握り、指輪とドッグタグの存在を思い出した。
なにより、軍曹から受けた総員撤退命令が下ったのを思い出せたのだ。
勇気を振り絞り、喉がはち切れんばかりに叫ぶ。
「総員撤退!総員撤退!」
比較的遮蔽になりそうな物に隠れながらどんどん撤退を始める。
それにつられる様にどんどん撤退が始まる。
敵はライアン達の方に追っては来ないようだ。拠点を一つ制圧し、指揮官である軍曹を討ち取れたのだからそれだけで十分戦果はあると言うことだろう。
「軍曹はグレネードを被弾し亡くなった。 最期に総員撤退命令を出して息を引き取った」
ライアンの言葉に皆驚いた。あの鬼軍曹が総員撤退命令を出すなんて、と。
付いている異名は悪魔軍曹。そんな彼が我々を気に掛けたのか、と。
ライアンはドッグタグを本部に届けた後、本国の基地に帰された。
その為にグレインの遺族であるグレインの妻に会う事が出来た。
「ライアン二等兵です。 グレイン軍曹の事でお話があり参りました」
「あら、主人が?どうかされたのかしら」
急に心が苦しくなってきたのか、震えだす。あの凄惨な光景を思い出し、色々な物が込み上げて来る。
だが彼はしっかりと伝えると、そう決めたのだ。
「軍曹は…グレイン軍曹は不運にもグレネードを被弾し...お亡くなりになりました。この指輪を貴女にと」
指輪を差し出す。彼は見てしまっているのだ。指輪になされている刻印を。
『生まれ変わっても一緒に居よう』
受け取った指輪を見て夫人は無言で泣き出してしまった。
それもそのはずだ。立てかけられている写真を見る限り、幼い頃から彼らはずっと一緒に居たのだから。
ライアンはその場を去ろうとする。すると夫人はおもむろに立ち上がり泣きながら口を開いた。
「彼は...主人は...主人の最期は立派でしたか?」
「…えぇ、とても」
ライアンは一度も振り返らずにその場を後にした。
その後基地に戻ったライアンは拠点の奪還作戦の要として昇進が決まり、かなりの速度で気付けば生前のグレイン軍曹と並ぶ軍曹となった。
だが、グレインは殉職による二階級特進にてライアンよりも上とはなっていた。
元の拠点の奪還に夜襲を行った。警備が手薄になることが事前調査で分かっていた為だ。
様々な物を使い、敵を殲滅して行く。
そうして、なんとも渋い形ではあったが奪還する事が出来、敵の指揮官、並びにその補佐官を捕虜に取れた。
その後その任務の功績から曹長へと昇進が決まる。
そして彼は自身の部隊には満遍なくライフル銃などの装備を行き渡らせ、拠点に機関銃やスナイパーライフル等も充実させていき、拠点はかなりの武力を得た。
装備は当然、新兵であっても渡していた。
ライアンのやり方が功を成し、その拠点はライアンが死んでもそのやり方を継承したお陰で一度も墜とされる事は無かったそうだ。
そして、その名はこう呼ばれる事となる。
『不落の要塞』と。
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