盲目の剣聖はドラゴンの家族になりました

いいたか

文字の大きさ
22 / 24

第二十二話

しおりを挟む
“エンシェント” を冠する者達が動き出したか…。

彼の者達を産み落としたのは何時の頃だっただろうか。
長らくこの地に居るせいでもはやどうでも良くなってきてしまったが、どうやらそうも言ってはいられない様だ。
余に残ったのはあいつから託された、余とあいつの子である”エンシェント” 達だろう。

しかし、始祖の龍として余はこの世界の均衡を守るという仕事をしなければならないのだ。

始祖などと言っても読んで字のごとく始まりの龍である。 それだけなのだ。
全属性の魔法、ブレスが扱えるという事しか余には特技は無いといっても過言ではない。
否、無くなってしまっているという方が正しいか。

世界の均衡を正す行為と言うのは龍のみにならず複数の種族で行っているが、それはほとんどが始祖のみだ。
すなわち、負担が始祖達に来ている。

フェンリル、フェニックス…他にもさまざまな種族が居るが、彼奴等も世界の均衡を保つための鍵に過ぎない。
余は余達始祖を”神の怠惰” と呼ぶ。
神が、自ら作った世界の均衡を保つことを放棄したからだ。

知っているか、神よ。

この世界は貴様が思っている以上に広いのだ。

傲慢で薄汚く守る価値などないと思うものも多いが…。
それでも、守りたいと思えるものはある。 いや、守りたいと思うものの方が強く大きいのだ。
貴様はそれを知らない。 知らない事が貴様の弱さだ。

「おぉ、フェンリルよ。 久しいな」

「トカゲ風情が…」

「お前はいつもいつも…。 他の奴らは?」

「子供らを陰から見守りに行っているそうだ。 軟弱者共め」

「いや、気持ちは分かる。 お前だってそうだろう? 数百年前に子を連れて来た時の事、未だに余は忘れてはおらん。 あのお前が笑顔で子を抱き抱え、余達に紹介してきたあの日を」

「その首、噛み千切らないと喋るのをやめないのか?」

「余の子は、人間を家族に迎えたようだ」

「…は?」

「耳まで腐ったか老いぼれ狼。 余が産み出されてから”二人目” の龍の家族だ」

「神に知られたらどうするんだ」

「はっ! 余がそんなヘマをすると思ったか! もう二度と神に我が子を奪わせてなるものか。 そうなれば貴様が言うように神の首を余が喰い千切ってくれるわ」

「もしもその時は同席させて欲しいものだ」

あぁ、そうだな。
余達がその刻まで生きていれば共に、女狐の首を喰い千切ろう。
それが叶わぬ願いとお互い知っている。
始祖達は皆、神(女狐)によって寿命を制限されているからだ。

だからこそ、だからこそ”エンシェント” 達よ、どうか幸せになって欲しい。
そして新たなる我が家族よ。

余より、何よりの祝福を。

それが、始祖龍クリスタルレインボードラゴンたる余の願いだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした

茜カナコ
ファンタジー
魔法使いよりも錬金術士の方が少ない世界。 貴族は生まれつき魔力を持っていることが多いが錬金術を使えるものは、ほとんどいない。 母も魔力が弱く、父から「できそこないの妻」と馬鹿にされ、こき使われている。 バレット男爵家の三男として生まれた僕は、魔力がなく、家でおちこぼれとしてぞんざいに扱われている。 しかし、僕には錬金術の才能があることに気づき、この家を出ると決めた。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

処理中です...