DNAの改修者

kujibiki

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第444話 脅迫

「マーガレット様~っ!」

「カーミラ、どうです。盗賊は捕らえましたか?」

「グループの一つを捕まえましたが、どうも本当にただの盗賊のようです」
「それにどの者も10代後半から20歳前半で“誕生の儀”はもちろん、パートナーもいないようです」

「そうですか…」

この辺りにいる盗賊全てが実験の関係者ではないようですね。

「引き続き盗賊たちを捕まえていくように。同時に町や村には聞き込み調査をして情報を収集して下さい」

「はい、かしこまりました」

もうフリーノース領都の屋敷にも手紙が届いていることでしょう。
エリカが無事なら私達はここで盗賊達を一グループずつ捕まえていけば良いのです。
むしろ後はカーミラに任せて私も領都に帰った方が良いかもしれませんね。



XX XY



うぅ~、困りました。
「どうしましょう…」

マーガレット様から届いた手紙を読むと、エリカ様を屋敷から出さないようにし、身辺に気を付けるようにと書いてあります。

(あぁ~、もう手遅れなのです)

エリカ様があの晩に攫われたのは事実なのです。
屋敷の敷地の外壁に穴が開けられていただなんて…、埋め戻されていましたが痕跡がありました。

わざわざ手紙を送って来られるという事はコロビアで何かが起こったのでしょうか…。
エリカ様に関係があるとしたら…。

「誰か、各都市長様に緊急連絡。管轄内の町や村の捜索を内々に開始するように伝えて。コロビアには私が手紙を書くので届けて下さい」

マーガレット様に対応を確認している時間はありませんね…。

「「「はいっ!」」」

後は…、領界を越えられた場合のことも考えておかないと…。
申し訳ありませんが私の判断で領主様達へ協力を仰ぎましょう。

「誰か、ルージュ領、王領、ジャトワン領へ同じように緊急連絡を…、パレス領は隣接していないからいいわ」

「「「はいっ!」」」

私は手紙を書いたら念のため屋敷への侵入経路を調べておきましょう。



XX XY



ガチャ…。

「エリカ様、ご足労ありがとうございます」

「ここはどこ? あなたは誰?」

少し前に魔動力車での移動は終わり、少し歩いてどこかの建物に連れてこられました。
歩く時に足の拘束は解かれましたが依然として手は後ろ手で拘束され、目隠しをされています。
今聞こえてくる声は魔動力車内で話していた女性の声ではないようです。

「場所は…そうですね~、コロビアから半日の距離にある所でしょうか。私が誰かは当然言えません」

「もしあなたが首謀者なら私をどうしてこんな目に?」

「魔動力車の中で聞いたと思ったのですが…、これはマーガレット様に対する復讐です。マーガレット様にご自身の行いを後悔していただく為に来ていただきました」
「もう、何をされるかも分かっているのでしょう?」

「……そんなこと、本当に…」

この者達は私に“誕生の儀”をさせようとしています。

「今、あなたとあなたのお母様の為にと~っても素敵な(弱々しくて興味を持たれていない)精子を探していますからねぇ。もうしばらく待ってください」
「あぁ、もちろん私は男性にも納得していただいてから精子をいただきますので…」

そんな男性達も自分の精子が領主様やお嬢様に使われると知れば喜んで提供するでしょう。

「お母様にまで同じことを…?」

「えぇ、実験の発案者ですからね。あの年齢で“誕生の儀”が出来て二人目を産むことが出来ればこの国の為にもなるのではないですか?」

(以前私が思った事と同じ…)
「それは…、まずは男性を増やすことを、そして男性の体質を調査して改善しない事には…。お母様もきっとそう考えて…」

「確かにマーガレット様は先見の明がある方です。男性の数が減り続ければいずれ“誕生の儀”も出来なくなるのですから…。しかし、息子を無理やり実験台にされた私達の気持ちはどうなのですか?」
「せめて見知った相手、想いを抱いていた相手、男性と女性が共に納得してから“誕生の儀”が出来れば良かったのではないですか?」

「……」

「私はエリカ様が“女”になられるのを待っていたのです。どこの誰とも分からぬひ弱で女性達から相手にもされないような男性の精子で“誕生の儀”をさせる事を…」
「でも、そうすることによってそのような精子も有効活用されるのですからフリーノース領の為に貢献できて良かったですね」

「なっ、な…、そんな…」

「まさか“ひどい…”なんて言いませんよね。それと同じような事をマーガレット様が行っておられるのです」

「……でも、二回目の精子が採取出来る可能性が…」

「……、保証されていないから実験なのですよ。仮に二回目の採取が出来ると分かったとしても実験方法が許せません」
「だから同じように実験して過ちを自ら体験してもらうのです」
「エリカ様が男性ならもっと良かったのですがね…。フフフ…、ハハハ…」

「……」
お母様…、誰だか分からない彼女の意見はもっともです。
理解は出来ますが、でも今はそんな事を考えている暇はありません。
このままでは本当に“誕生の儀”をさせられてしまいます。



XX XY



「マーガレット様!」

「カーミラ、何か分かりましたか?」

「それが…、盗賊達は日ごとに少しずつ捕まってきていますが、どの者も言う事は同じですね。ただ話を聞いていると、ある者が徒党を組むことを勧めていたそうです」

「それは怪しいですね…」

モナミさんに教えてもらった時はまだ盗賊達は徒党を組むほどではなかったはずですが…。
おそらくその者が計画の首謀者でしょう。

「カーミラ様、マーガレット様宛に不審な手紙が届きました」

「「何ですって!?」」

「て…手紙をこちらへ…」

私がここに居る事を知っている?
また首謀者からの手紙かもしれません。すぐに中身を確認します。

――― エリカ様は預かりました。無事に返して欲しければ三日後コロビアから陽が昇る方角に半日ほどの所へお越しください。魔動力車の運転手以外の同伴は認めません。姿を現さなければ大切なお嬢様は二度と戻りませんよ ―――

「そ…そんな馬鹿な…、エリカが領都から連れ去られた?」

私は手紙をカーミラに手渡します。

「マ…マーガレット様!?」
「……、こ…こんなこと。マーガレット様、これは罠です。仮にエリカ様が本当に連れ去られていたとしてもお一人で向かえばマーガレット様まで捕らわれてしまいます」

「えぇ、そうね。まずはエリカの安全を確認しないと…、それでも三日で領都に確認する手段がありません」
「とりあえず、盗賊を捕まえるのは継続して拠点を見つけることを急ぎましょう」

「分かりました!」



「マーガレット様、屋敷のビオラから手紙が届きました」

「なんですって!?」

エリカの安否を確認出来ないと思っていましたが、こんな時に手紙が送られてくるなんて…。

「くっ…、やはり…本当に…」

デイジーから手紙を受け取り、文面を読むとエリカが何者かに攫われてしまったということが書かれていました。
屋敷にいたエリカをどうやって…?

今は…それはいいわ。
それから手紙には各都市長に探索するように伝え、ビオラの判断でフリーノース領に隣接するルージュ領、王領、ジャトワン領に協力を頼んだということが書かれていました。
まぁ、どこに連れ去られたか分からない場合は速やかにそうする事が正しいでしょう。
でも、エリカはこのコロビア周辺にいるのです…。
話が大きくなる前にビオラにも連絡をしておかないと…。

しかし、これで本当にエリカが攫われているのが分かりました。
三日以内にエリカの居所が分からなければ、言われたとおり私が出向くしかないようです。
あぁ~エリカ…、大丈夫かしら…。



XX XY



「モナミ様~、今日も“シャルル巻き”のお店は閉まっていましたよ~」

閉まっていたのは残念ですが、あの広場の光景は異様です。
お店の中を覗き込む者、大樹の周りをうろうろしたり置いてあるテーブル席に座っている者達、人は多いのに活気が無くひっそりとしているのです。

「ありがとう、テラ。それにしても一体何があったのでしょう」

少し前に王都からルージュ領都へ向かわれてからそんなに日は経っていないのに…。

「せっかくルージュ領都に戻って来たのに“シャルル巻き”が食べられないだなんて~」

「ナンシー、食べられないって言わないで。私も我慢しているのだから…」

「やはり建物に人の気配は無かったので従業員の皆さんはどこかへ出かけているようですね」

「もう三日よ…」

「モナミ様、広場に来ていた者に聞きますと休業してもう六日目だそうです」

「そんなに…」

私達は王領内を旅している間に我慢の限界を突破しましたからなんとか耐えられますが、ルージュ領都にいる者にとっては一番苦しい時でしょうね。

なんだか街の活気も無くなりましたがサマンサ様はご存知なのかしら…。
そもそもサマンサ様達も“シャルル巻き”が食べられなくて辛い思いをされているのでは…。
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