懐かしの鉄道旅

かき氷はイチゴ味が一番

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1987年夏「寝台特急さくら」

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 JR発足のこの年の夏、結構電車を使って旅行した。
 ついに憧れのブルートレインこと寝台特急に乗れることになった。
 九州に行ってみようということで普通は航空機が早いのだが、父は飛行機があまり
得意でなく、新幹線では朝8時に出ても現地(長崎方面)には夕方近くになるので、
「どうせなら夜行列車を楽しんでみるか!」
になって当時16時40分だったか、ブルートレインのなかで東京駅をいの一番に出発
する「寝台特急さくら 長崎・佐世保行」に乗ることになった。
 もう入線のところから見たくて東京駅10番線に両親を急がせる。
 8月も中旬過ぎだがまだまだこの時間帯は暑くて明るい。
 品川方面から栄えある列車番号「1」の「さくら」がテールマークの電光版の
「さくら」と寝台特急マーク入りのヘッドマークを見せながら入線。
 後ろ6両が佐世保行、で長崎行のほうに食堂車もついているが、入線するときに
食堂車で勤務するスタッフが並んでホームの人にお辞儀している姿が印象的であった。
 寝台は家族と言うこともありA寝台個室と言うことで父も奮発したものだw。
 後で自分で他のタイプの寝台を使って分かったことだが、A寝台はベッドも広めで
窓もB寝台より広くてゆったり感がある(私自身は大人になって一番安いほうのB寝台
を二段を使っても平気であったが)。
 当然部屋に入って施錠すれば他の客とは接触しない。
 部屋に入って窓を見ると一段高いホームに新幹線がちらっと見える。
 段差があり過ぎて全容は見えない。
 いよいよ発車時刻だ。
 ガタン!と車体が動いて、またガタンと二回目の揺れがあったのち、ややぎこちない
感じで車両が動き出した。
 やがて新幹線との段差がややなくなり並走する新幹線も見えてくる。
 有楽町・新橋・・・付近を通過するが車内放送はない。
 と思っていたら品川手前で何となく渋い聞こえ方がする車内放送が入った。
 「本日もJR線をご利用いただきありがとうございます。この電車は寝台特急さくら
号長崎・佐世保行でございます。途中横浜、沼津、富士、静岡、豊橋、名古屋、京都、
大阪の順に停車してまいります。なお寝台室には浴衣のご用意はありますが浴衣を着
られたまま、停車駅のホームに出られることはどうかご遠慮ください。次は横浜に停
まります」
というような車内放送があって、ブチっとマイクが切れる音がした。
「ねえ、食堂車行こうよ!」
「まだ早いよw」
 景色は多摩川を渡って神奈川県に入ったことが分かった。
「でも混むだろうから早めに行ったほうがいいかしら?」
と母。
「じゃあ、早めに行っておくか」
ということになった。
 東海道新幹線とは並行していたが反対側を走ってるはずで見えず、海側(海は見え
ないが)の景色が専ら窓には映る。
 車体は耳を澄ますと結構ギイギイ、キュウキュウ言っているようだが走っていると
存外快走しているようにも感じる。
 横浜に停車。まだ五時くらいで外は全然まだ明るい。
 通勤通学客がホームにたくさん見えるがそのうちの何人かはこちらのブルートレイン
のほうを見ている。
 よく見るとカメラを構えて撮っている人も見えた。
 横浜を発車すると次は沼津まで停まらない。
 ここで我々の家族はやや早いが食堂車に出かける。
 しかし食堂車は意外にももう混んでいて、もう少しタイミング遅ければ並ぶところで
あった。
 まだ17時15分にもなってなかったはず(横浜過ぎてすぐだったから)。
 食堂車内では両サイドの景色が見える。
 前に新幹線でも見た、丹沢山地が夕日に囲まれながら見えている。
 父はビールに何か頼んでいたが、私はハンバーグ定食みたいのだった。味覚は普通の
お子ちゃまなんでw
 食事を待ったり、食べている間にも東海道線の上り列車と色々すれ違う。
 湘南色の普通列車、白地に緑のラインが特徴の特急踊り子号、そして意外にも多く
すれ違うのは貨物列車だった。
 列車が確か平塚を過ぎ、多分大磯か二宮あたりのときにやっと朱蒙下食事が出てきた
はずだ。
 食堂車はもうどのテーブルも満席でさらに人が並んでいる状態だ。
 やはり人気なのであろう。
 列車は大きな駅である小田原に近づく。東海道新幹線が右手から近づいてきてるので
鉄道好きで時刻表も読める小3の私には小田原付近とすぐわかる。
 山々も近づいているが今日は富士山は雲が遠くにかかっていてよく見えない。
 太陽は山合いに沈みかけていてあともう少しで日没であろう。
 小田原駅を通過していく。
 小田急線のロマンスカーが停車しているのもわかり、左手に小田原城跡も映った。
 山が急に迫ってきた感じだが列車は速度は変えないまま走り続ける。
 有名な根府川あたりで左側に雄大な相模湾が見えるがそろそろ夕暮れの中で群青色
から黒く見える海はやや不気味に見えた。
 トンネルをくぐるようになる。
 食事を食べ終わるころだが、デザートのアイスクリームを注文する予定だ。
 トンネルは長くてなんか耳の奥がつんとする感じだ。
 やがて左手には温泉街特有の立派なホテル群などが見えるがそこはまだ熱海では
なく「湯河原」だ。湯河原も熱海ほど知名度はないかもしれないが知る人は知る名湯
であり、隠れ家的な温泉かもしれない。
 またトンネルをいくつかくぐると列車はやや速度を落とす。
 しかし普通に熱海駅も通過していく。
 またトンネルの連続というのは新幹線と同じである。
 その後、完全に暗くなってきて景色も楽しめず暇になってきたものの、ブルートレ
インに乗っているという興奮は止まず、豊橋駅では停車中に左手の地上新幹線の下り
を「ひかり号」が軽やかに通過していくのが見えた。
 暗闇の中の新幹線が高速で通過していくのはまさに流れ星みたいで綺麗だった。
 そして名古屋駅に停まって、またまた毎度のように、発車の際に「ガクン・・・
ガクン」と時間差を置いて二回揺れるんだな、というのは覚えていたが、少なくとも
京都の前のどこかでは寝ていたらしい。
 そして途中夢か何かは分からないが一回か二回かうっすら目が覚めてはどこかの駅に
停車(多分大阪)してたのや、真夜中、僅かに電灯だけつけている誰もいないが明らか
にホームの数だけなら大きいとわかる駅(西明石?姫路?岡山?)あたりを通過した
のも記憶に残っている。
 そしてそのあたりで本日三回目のトイレに向かった(トイレはもう覚えて一人で
いける。大のほうはボットン式みたいに見える臭くてあんまり清潔感はないトイレ。
 戻るとすぐまた眠りこけられる。
 で大阪を出ると次の停車駅は早朝の広島駅であるが全然覚えておらず。
 ハッキリ気付いたときには周防灘の小さい島々が浮かぶ瀬戸内海の幻想的な朝の
素晴らしい風景が目の前に出ていた!
 興奮して通路でもっと見ようと出ると見知らぬ叔父さんや叔母さんから
「おはよう!」
「あら、かわいいね、坊や。おはようございます」
などとあいさつされた。
 寝台列車って後日何度も旅するとわかるけど、一晩同じ箱の中で一緒に寝泊まり
した連帯感って言うのか自然に見知らぬ人同士でもすれ違うと挨拶が出てしまう
不思議さがあると思う。
 下関でそこそこ人は降りていった。
 朝の駅弁を求める人もいる。
 機関車の付け替えもあって下関と次の門司は停車時間が長いのだ。
 小倉を過ぎるとここでは九州内を走る日豊線特急「にちりん」の一部や門司を
始発にする鹿児島本線特急「有明」などもちらちら見えて、九州最大の駅博多に
到着する。
 ここではホームから二本くらいは在来線の特急列車と思われるものが停まって
いる。
 実は長崎に早く移動するならこのまま「さくら」に乗るより、長崎本線直通
の特急「かもめ」に乗り換えるほうが早くつく。
 寝台特急のくせに、ただの特急「かもめ」に抜かされていくのだ。
 肥前山口駅で長時間停車して後ろの「佐世保行」を切り離して、すっきりした
姿で有明海を左手にしながら(海はあんまり見えないけど)一路長崎を目指す。
 諫早、そして終点長崎。長崎は地上駅で(当たり前だが)もう先はない端の
液と言うことがわかるように線路は打ち止めで途切れている。
 路面電車も走り坂が多い街という印象であった。
 我々はここからレンタカーを借りて有明海と雲仙岳の雄大な景色を見つつ、
雲仙の温泉旅館に泊まったのだ。

                         <完>
 
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