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しおりを挟む「理玖、お前フラフラしすぎて本家から嫌われてるんだって?」
「あぁ、あの家おかしいから嫌いなんだよ。」
「でもお前が反抗して立ち上げた会社めちゃくちゃ儲かってんだろ?柊家からしたらお前のこと手放したくないだろうな。」
友人とそんな会話をしながらも俺はこの後のことを考え憂鬱になった。
俺は柊理玖。柊家本家の次男でαの俺は幼少期からずっと柊家の教育を受け育った。人の上に立つための人格、知識、そして世継ぎを作るためだけの許嫁。大学在学中にそんなことが全部馬鹿らしくなって許嫁との婚約を破棄して卒業後に入社する予定の柊家の経営する会社にも就職せずに会社を設立した。
それから約8年。もう30にもなるが特定の相手もなくフラフラしている俺はよく柊家の本家に呼び出され説教をくらう。2年前までは女を取っ替え引っ替えして遊びまくっていたが、しつこい女に刺されかけてからは遊ぶことをやめた。それを良いことに次々に見合い話を持ってくる本家の奴らに嫌気がさしていた。
本家当主の俺の父は俺に本家を継いでほしいそうだが、俺はそんな気がない。俺には兄がいるし、兄には奥さんも子供もいる。兄さんが継ぐのが1番良いだろうに。今日も本家に行くが、甥っ子姪っ子に会えるのは嬉しい。兄さんの奥さんは不妊治療を長年していて子供が生まれた時には本家も分家も総出でお祝いムードだった。それに後継となる男の子だったから余計に。
兄さんの長男の優はおそらくαだ。兄さんも奥さんもαだからαの確率は高いだろうしな。優はえらく大人びていて正直子供らしくない。それに時折暗い顔をしているのが気になってよく会いに行くようになった。
長女の日和と次男の陽介は幼いが顔が整っていて可愛らしい。会うと抱っこをせがんでくれて可愛い。陽介は最近ようやく歩けるようになっていてトタトタと歩く様子が微笑ましい。
甥っ子姪っ子に会うのは嬉しいんだがな、、、。会うたびに結婚はまだかとか会社を継げとか小言をたくさん言われるのが憂鬱だ。
足が進むような進まないようなそんな感覚のまま本家へと向かう。本家は広大な土地で、父が住む本邸と兄さんが住む別邸、それに使用人が住む屋敷に会合をする屋敷と多くの建物が建っている。
敷地内の移動は徒歩では遠すぎるので車を使うし、セキュリティもかなり厳しく関係者以外が敷地内に入ることは難しい。
このデカい門も内側が全く見えない高い塀も何もかもに嫌悪感を抱く。
「俺だ」
そう言うと門が開き、父さんの付き人である清水さんが車の扉を開けてくれた。
「理玖坊ちゃん、そんな嫌な顔をされないでください。」
「嫌な顔するに決まってるだろ。毎度毎度同じことばかり言われるんだから。俺は甥っ子と姪っ子に会いに来たんだよ。父さんの小言を言われに来たんじゃねえよ。」
「旦那様は理玖坊ちゃんにかなり期待されてるんですよ。結弦様を後継と断言されないのもそのためかと。」
「兄さんでいいじゃん。俺なんかよりさ。」
「結弦様も優秀な方ではありますが、理玖坊ちゃんには及びません。それに、、」
「それに?」
「いえ、なんでもございません。さ、旦那様がお待ちです。」
清水さんに連れられ父さんの部屋へ行くと、過去に戻ったのかと思えるほど前回と全く同じ話をされた。適当に相槌を打ってやり過ごしたが最後に気になることを言われた。
「理玖、お前は結弦のようになるな。」
そんなことを言われた。どういうことだ?兄さんのようになるな?兄さんに何かあるのか?
そんな疑問を抱きながら、清水さんの運転で別邸へと向かう。
インターホンを押すと奥さんが出てくれてその後ろから日和が駆け寄ってきてくれた。
あぁ、俺の癒し。
「りくおじさん!!」
「日和~!久しぶりだな!」
「理玖さん、お久しぶりね。どうぞ。」
「すいません、お邪魔します。今日は兄さんはいないんですか?」
「えぇ、明後日まで出張なのよ。私も今から出かけなくちゃいけなくてね、子供達使用人にお願いしてるの。でもゆっくりしていって?」
「留守中にいいんですか?」
「えぇ、理玖さんですもの。」
この奥さんは感情があんまり読めないんだよな。兄さんにとっては俺は邪魔な存在だろうし。俺は兄さんのこと尊敬してるし好きなんだけど、家を継ぎたい兄さんからしたら父さんが継がせたがってる俺は邪魔すぎる存在だろうしな。その奥さんであるこの人にとっても俺は邪魔なはず。
「ひよりね!おえかきしてたの!おじさんもしよ!」
「日和、あまり理玖さんを困らせないのよ?お母さん出かけてくるからね?良い子にしててね?じゃあ理玖さん、よろしくね?陽介は寝てるから当分起きないと思うわ。優は部屋で勉強してるから。」
そう言って奥さんは出かけていった。
「おじさん!!はやく!!だっこ!!
「はいはい、ほらっ」
「きゃー!!」
日和は本当に甘えただな。陽介は眠っているらしく今日は会えないかもなと思いながら日和を抱っこしてリビングへと向かう。
ピンクや赤の明るい色を使って可愛らしい絵を描いていた日和は遊び疲れたのかぐっすり眠ってしまった。そんな日和を部屋へと運んだ俺は隣の優の部屋を訪ねた。
「優~?入るぞ?」
部屋に入ると机に向かっていた優がこちらを振り返った。
「理玖おじさん、久しぶり。」
「あぁ、久しぶりだな。勉強してるのか?偉いな。」
「そんなことないよ。普通だよ。」
「そっか。」
「・・・」
「優?どうした?なんか元気ないぞ?」
「・・・今、お母さんいないよね?」
「あ、あぁ、さっき出かけたぞ?」
「理玖おじさん、相談があるんだけど、聞いてくれる?その、、、、お母さんにもお父さんにも言わないでほしい。」
いつになく真剣な甥っ子の表情に少し背筋が伸びた。
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