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しおりを挟む「あ、これ。」
休日に欲しかった医学書を買いに本屋へと足を運び、レジへ向かう途中に視界に入ったもの。奏多くんに頼まれて買った雑誌の最新号だ。
あの雑誌渡してからもう1ヶ月近く経つのか。年齢を重ねるごとに時間が過ぎるのが早くなっていく気がするよな。
この本また買っていったら奏多くんはあの時のような笑顔を見せてくれるだろうかと、そう思ったのは確かだ。
「俺は何してんだか。」
本屋を出た俺の手にある袋の中には買う予定だった医学書とあの音楽雑誌。気づいたら一緒に購入してしまっていた。
彼の笑顔を見たいって思ってしまったんだ。休日なのに、彼のことを考えてしまうなんて俺も大概だな。
---プルルルル
荒木先生、、??
「はい、もしもし。どうしましたか?」
「休みの日にすまんな。彼方の一昨日の検査の結果が出てな。」
何種類もの検査を一昨日行った。病気の進行が進んでないといいが、最近の様子からおそらく進んでる。
「正直、今すぐにでもドナーが必要なレベルだ。・・・・明日、彼方に伝える。」
先生がそう言うってことはおそらく、余命を告げるってことだ。
ついさっきまで、奏多くんの笑顔を想像していたのに、一気に気分が落ちた。
明日伝えるってことはその時に俺も一緒にいるってことだよな。
「あと、2年ってとこだ。」
「・・・そうですか。わかりました。」
なんで、なんでそんなホッとしたような顔をするんだよ。
研修医の間にも余命を告げられた人は見たことがあった。だからこそわかる、これは異常だ。ほとんどの人はその場で涙したり、絶望したような顔をしたりするもんだ。
なんでそんな、ホッとしたような、待っていたかのような顔をするんだよ。
荒木先生は彼がそんな顔をすることがわかっていたかのように、悲しそうな顔をして去っていった。
「これ、今月号。」
何を言えばいいのか分からず昨日買った雑誌を渡した。
「ありがとうございます。嬉しいです。」
そう言って見せる笑顔は見たかった笑顔のはずなのに余命宣告を受けた直後とは思えないような笑顔で、なんだか複雑になった。死ぬんだぞ?この世から、いなくなってしまうかもしれないんだぞ?今笑顔で見ているその雑誌ももう見られないんだぞ?好きな音楽も聴けないんだぞ?我慢ならなかった。
「なんでそんなに笑顔でいれんだよ。」
「え?」
「ドナーが見つからなければ、後2年なんだぞ?」
「そうですね。ドナーが見つかることを願ってます。」
「俺にはそんな風に見えねえ!俺はお前に生きて欲しいのに!!」
「せ、先生?」
「・・・好きだ。奏多君のことが好きなんだ、、俺の好きな人を、、この世から失くさないでくれよ、、、。」
「・・・・好きなの?僕のこと?」
「っ、、、・・・・・・」
まずい、つい勢いで言ってしまった。
というか俺、好きだったのか、、。さ
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