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8:魔王城の初来店者は、また来ます
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「勇者さんまで用意するなんて、びっくりの演出です。しかも私たちみたいな見学者が倒せるようになってるんですね! うーん、スッキリしました」
「……うむ。そうだな。だが、あまりにも驚いて椅子から落ちてしまっては危ない。悪かった、許せ」
「いえ、こんな楽しかったの初めてです!! ありがとうございました」
「おお、案内したかいがあったぞ」
地面に何度も頭突きを叩き込むかのように頭を下げて、お礼を言う。この部屋は一見豪華だが、建築材は安物を使用しているのだ。いつ床に穴が開かないかとハラハラする。
「でも、これで終わりなんですねえ。楽しかったから本当に残念です。楽し……かった……なあ」
これが向日葵のような笑顔というのだな、と思った。頬に流れる涙を手で拭き取ってやると恥ずかしそうにまた笑った。
誕生日に奮発してと言っていたな。彼女がもう一度ここにやって来られるのは、来年ということになるわけだ。
……来年、か。
「……ふむ、実はな。現在、魔王城年間利用券というものを考案中なのだ。完成したら、クリスに試用してもらいたいが……どうだ?」
「は、はい!? え、えーと、ありが……ありがとうございます!!」
少し考えるように俯いている。
「何か不満があるか?」
「いえ、そんなこと! とても嬉しいです、感激です!」
「さあ、最後は魔王の出陣といこうか。元来、勇者とはこの部屋で決着をつけることとなっているのだが、こちらから勇者を倒しに行く魔王も面白かろう?」
「はい!」
城門までいくと少しずつだが、客が入ってきていた。ゴーレムが不器用な手で料金を受け取っている。
「また来い。城門まではタダだ」
すると、思い詰めたようにクリスは俺に視線を合わせた。仮面越であるが、瞳に力強さを感じる。
「……いえ、お金を貯めてまた来ます! 年間利用券も試用じゃなくて、いつか買います!! 絶対です!!」
「ほほう、小娘が大きくでたな。いいぞ、やってみるがよい。俺はこの城で待ち構えている。今度は本気でいくから、屈強な男でも連れてこないとやられてしまうぞ」
「……そんなことしません!!」
何やら不満げな顔だ。まさか俺ともあろうものが接客を間違えたというのか? だがクリスの表情は一瞬で変わり、また元の笑顔へと戻った。何度も振り返りながら、木々の陰が落ちる山道を歩いて行く。
見えなくなる頃にこちらを振り向き、大きく手を振ったクリスにつられて、自然と手が上がった。
「まったく。面白い『初めてのお客様』だったな」
踵を返して城内に戻ると、シチューのいい匂いが流れてきた。
「……うむ。そうだな。だが、あまりにも驚いて椅子から落ちてしまっては危ない。悪かった、許せ」
「いえ、こんな楽しかったの初めてです!! ありがとうございました」
「おお、案内したかいがあったぞ」
地面に何度も頭突きを叩き込むかのように頭を下げて、お礼を言う。この部屋は一見豪華だが、建築材は安物を使用しているのだ。いつ床に穴が開かないかとハラハラする。
「でも、これで終わりなんですねえ。楽しかったから本当に残念です。楽し……かった……なあ」
これが向日葵のような笑顔というのだな、と思った。頬に流れる涙を手で拭き取ってやると恥ずかしそうにまた笑った。
誕生日に奮発してと言っていたな。彼女がもう一度ここにやって来られるのは、来年ということになるわけだ。
……来年、か。
「……ふむ、実はな。現在、魔王城年間利用券というものを考案中なのだ。完成したら、クリスに試用してもらいたいが……どうだ?」
「は、はい!? え、えーと、ありが……ありがとうございます!!」
少し考えるように俯いている。
「何か不満があるか?」
「いえ、そんなこと! とても嬉しいです、感激です!」
「さあ、最後は魔王の出陣といこうか。元来、勇者とはこの部屋で決着をつけることとなっているのだが、こちらから勇者を倒しに行く魔王も面白かろう?」
「はい!」
城門までいくと少しずつだが、客が入ってきていた。ゴーレムが不器用な手で料金を受け取っている。
「また来い。城門まではタダだ」
すると、思い詰めたようにクリスは俺に視線を合わせた。仮面越であるが、瞳に力強さを感じる。
「……いえ、お金を貯めてまた来ます! 年間利用券も試用じゃなくて、いつか買います!! 絶対です!!」
「ほほう、小娘が大きくでたな。いいぞ、やってみるがよい。俺はこの城で待ち構えている。今度は本気でいくから、屈強な男でも連れてこないとやられてしまうぞ」
「……そんなことしません!!」
何やら不満げな顔だ。まさか俺ともあろうものが接客を間違えたというのか? だがクリスの表情は一瞬で変わり、また元の笑顔へと戻った。何度も振り返りながら、木々の陰が落ちる山道を歩いて行く。
見えなくなる頃にこちらを振り向き、大きく手を振ったクリスにつられて、自然と手が上がった。
「まったく。面白い『初めてのお客様』だったな」
踵を返して城内に戻ると、シチューのいい匂いが流れてきた。
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