孤独な泥棒

hazuki

文字の大きさ
上 下
7 / 13

報告

しおりを挟む
「あたし実はもうすぐ結婚するんだ……」

予想外のカミングアウトに俺は一瞬固まった表情をしたが冷静を装った。

「え?そうなの?おめでとう」

せっかく心を許せる友達だと思ってたが、異性の友達は結婚相手にとってはなかなかいい気持ちはしないだろう。

なんとなく俺は胸がモヤモヤした。

「好きな人だったら喜ばしいけど、政略結婚だよ。父の命令?ITの社長なんだって。その人、女にだらしないみたい。結婚相手くらい好きな人がいいよ」

紫は大きい会社の1人娘だった。

俺は紫の話しを聞いてもっとモヤモヤした。そして、紫の話しが頭に繰り返され、この人物を知っている気がした。

「ん?IT社長?それ一堂さん?」

「うん。知ってる?あの人どう?女遊びやめなさそうでしょ?結婚やめたい……。まだ会ったことないんだけどね……」

俺はなんと答えていいかわからなかった。

ただ、紫に幸せになってほしいのに、一堂さんは紫を悲しませるかもしれないと思ってしまった。

「あんまり知らないけど……ちゃんと会って、一堂さんと女の噂とかのこと話してからでも遅くないんじゃない?」

紫は自分の頬を軽く両手で叩く。

「そうだね。決めつけはだめよね……本人と話しあってみる。ありがとう煌。やっぱり煌は優しいね。
今だからいうけど、高校生の時も煌と話して癒されてたんだ。形見をなくした時も煌にきいてもらって心が温かくなった。ありがとう」

俺はびっくりした。
いつもなら、とりつくろことができるのに……。始めて俺の中身を褒めてくれた人がオーナー以外にもいたことにびっくりしたのだ。

ーー俺は紫に自分を出してたんだな~。
しおりを挟む

処理中です...