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22 王都への帰還
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ダリルは、ミリアを追い掛けて間一髪 救うことができた。
誘拐犯のピエロから誰の命令だと聞き出そうとすると、ピエロが 何かを訴えるように 首を動かした。
その視線の先にある胸の刻印の文字を見て息を呑む。
(この文字は……天使の文字)
術の意味は裏切り者には死を。
昔 一緒に人間界に行ったとき、悪さをさせないうに、天使が書いた術式とそっくりだ 。
どういうことだ?
悪魔と天使では 術式が違う。
(天使の文字など 悪魔が簡単に知り得ない )
それを悪魔の体に直接施すと言うことは、主犯は天使なのか?
何故、天使か悪魔を使役する?
何故、人間の魂を欲しがる?
意味がわからない。
「たっ……頼む。みっ……見……逃して……くっ、くれ」
ピエロが 悲壮な面持ちで 命乞いする。なんと愚かな奴だ。 しくじった者に明日はない。
どのみち死ぬことしか 選べないこに。
違いは誰に 殺されるかだけだ。
「………」
少しでも情報引き出そう。
「なら選べ 。私か 、お前の雇い主か」
「分かった。何が知りたい?」
「………」
握る力を緩めると、勘違いしたピエロが嬉しそうな顔をする。
質問内容を暫し考える。
術が発動するには多分、キーワードがあるはずだ。その言葉意外なら死ぬことはないだろう。
「魂はいくつ必要なんだ?」
「千個です」
かなりの数だ。古の魔王でも 復活させる気か?
「魂を何処へ運んでるんだ?」
「東の渇れ地のパッ、パッ……」
突然、ピエロの体が風船のように膨れあがる。
(ワードに 引っかかったか)
その瞬間、ピエロの心臓を握りつぶした。ピエロは 爆発することなく、瞳からすうっと光が消えていく。
手を引き抜くと 支えを失ったピエロの体が どさりと足元に転がる。
「………」
ダリルは、血で汚れ手をハンカチで丁寧に拭く。
これ以上ここにいても意味がない。
帰ろうと振り返ると、ミリアが何かを取ろうと ぴょんぴょん飛び跳ねている。何故泣かない。その方が可愛げがある。それなのに、相変わらず意味不明の行動だ。
「何をしている?」
声をかけるとミリアが得意気に拾い集めた物を見せびらかす。
「羽ですよ。羽! ほら、こんなに集めました」
見ると、それは自分の羽だった。
何をしていたのかと思えば 、そんなつまらないモノを拾い集めていたとは。 肝が据わっているのか、馬鹿なのか。
ダリルは やれやれと首を振る。
「はぁ~」
「この長いのが風切羽。 この小さいのは…… 小翼羽? それとも雨覆羽? どっちだろう?」
人の気も知らないで、ご丁寧に 一本、一本、区別し出した。
「全く、帰るぞ」
「あっ!待ってください」
そう言って私の服を引っ張ってミリアが引き止める。ポケットからキュルをそっと取り出す。怪我をしたらしく、ぐったりしている。
「ひどい怪我でしょう。ピエロさんに、やられたんです」
「………」
ミリアが持っているほど、酷い怪我では無い。
指をキュルの額につけて、自分の魔力を注入すると、キュルが 瞳を震わせて目を開ける。
「キュル!よかった。すごく心配したのよ」
ミリアが、そう言ってキュルに頬ずりする。その姿に目を細める。
今こうして目の前にミリアがいる事がたまらなく嬉しい。 もう、二度とあんな思いをしたくない。
そこまで考えて、はたとする。
( 何故 私は、こんなに喜んでいるんだ?)
人間など 使い捨ての存在だ。
そもそも、 どうしてミリアを助けに来た? 重要な秘密を握ってるわけでもない。敵の手に落ちても 何の支障もないのに……。
心の中に芽生えた気持ちを 表す言葉を 探していると 背中を触られる感触に 我に返る 。
もちろん、触っているのは ミリアだ。
「何をしている?」
「どうやって、翼を出し入れしてるのかと思って。服に穴はないんですね」
「………」
ダリルは、ベリっとミリアの手を引き剥がすと、触られないように距離をとる。
「男の体を 勝手に触るんじゃない」
「ケチケチしないでください。とっても綺麗で、 見惚れちゃいました~」
「なっ!」
ミリアが 夢見るように 両手を合わせる。自分の姿を美しいなどと、一度も思ったことはない。だから 素直に褒められると、こそばゆくて逃げ出したくなる。しかし、ミリアの瞳に浮かんでるのは 好奇心だけ。
それなのに、自分を一喜一憂させる事に怒りがこみ上げる。
「どうかしたんですか?」
「お前は馬鹿か? いや 馬鹿だ。 絶対に馬鹿だ! 馬鹿以外にない」
***
心配をして、声をかけただけなのに 罵倒される。
「なっ、 ひどいです」
いつものダリルに戻ったが、あまりに言われようだ。
「普通の娘なら 心配で私とあいつの戦いを 見守っているものだろう」
「自分で強いって言ってたじゃないですか。 嘘だったんですか?」
「嘘じゃない!」
そう聞くと 強く否定する。
全く 何を言いたいのか。やれやれと首を振る。
強いというダリルの言葉を信じたから安心して 羽集めしていたのに。
事実 、ダリルの姿を見た途端 ピエロが手を放した。
(もしかして……応援してなかったから拗ねてる?)
「ごめんなさい。今度、戦うことがあったら ちゃんと応援しますから 機嫌なおしてください」
ぺこりと頭を下げる。
男と言う生き物は 自分の良いとこを見せびらかせたい生き物だと お母様が言っていた。 ダリルは自分の勇姿を私が見てなかったから、プライドが傷ついたのね。こういう時は おとなしく謝った方が 機嫌が早く直る。
ミリアは 頭を下げたまま 上目遣いでダリルを見たる。ダリルが 怒って何度も何か言おうとして私を見る。 しかし、その度に言葉を詰まらせている。
「なっ………おっ………そっ……もういい!帰るぞ」
結局、言うの諦めた。良かったと胸を撫で下ろす。
***
ミリアは何もない空き地を見渡す。
帰ると言ったのに、見えるのは 木、木、木ばかりで、馬車が無い。道さえ見当たらない。
「馬車は、どこですか?」
「馬車は無い」
「えっ? どうやって帰るんですか? まさか、山道を歩くなんて言わないで下さいよ」
すると、ダリルが 自分のジャケットを脱いで私の肩にかける。ほんのりとダリルの匂いが香り立つ。
自分が、いつのまにか ダリルの匂いを覚えていたことがおかしかった。
「ふふっ、ダリルの匂いがします」
「っ」
ダリルの手が一瞬止まる。 どうしたのかと見ると、こわばった表情で私を見ていたが、横を向いて小さくため息をつく。
(私、何かした?)
「ダリル?」
「様! これで寒くないはずだ」
そう言うと一歩後ろに下がる。こんな時でも身だしなみに気を使っているダリルには 困ったものだと呆れる。
どう見ても 大人の服を着た子供だ。
ぶかぶかで服の中で泳いでいる。
ダリルが、いきなり私をお姫様抱っこした。
「では、行くぞ」
「キャッ」
えっ? どう言うこと?
ダリルが、地面を蹴ると 二人の体が、ぐんと空中に浮く。
そのまま 駆け続けると、どんどん空が 近づいて来る。ミリアは素晴らしい体験に 手を叩きながら喜ぶ。
「凄い。凄い! 空を飛んでます」
「飛んで無い。 走ってるだけだ」
相変わらず細かいことを言って ムードを台無しにする。でも、許す。
鳥になった気分。 心なしか風が冷たい。
「しっかり掴まっていない 落ちるぞ」
「はい」
分かったと 体ごとみつくと 、ダリルのくぐもった声がする。
「ぐるじい。前が見えない」
「あっ、ごめんなさい」
見るとダリルの頭を抱えていた。慌てで腕を外す。
「全く! 私を殺す気か。こういう場合は 私の首の後ろで手を組むんだ。男に抱き上げられたことがないのか」
そうだと 認めるのは癪なので、その件については 返事をしない。
「こうですか?」
「そうだ 」
ミリアはダリルに言われた通りにした。確かに、このポーズは収まりが良い。感心していると ダリルが、さらに高くジャンプする。
すると、眼下に箱庭のような景色が広がる。 遠くに王都の象徴の王宮が小さく見える。
(こんな遠くまで助けに来てくれたんだ ……)
そう思うと ミリアの心が温かくなる。
そういえば、 お礼を言っていなかった。お礼を言おうとしたが 、ダリルの 端正な横顔に見ているうちに 違う言葉がするりと口から漏れる。
「 綺麗 ……」
「そうだな。こうやって空から見ると 見慣れた景色も違って見えるだろう」
慌てて口を閉じた。しかし、私の言葉を 勘違いしてダリルが返事をする。
ミリアは、数回瞬きして 話を合わせる。
「そうですね。小さくて可愛いです」
「可愛いか」
薄く笑うダリルを見ていると息苦しくなる。おこりんぼのくせに 、そんな顔を見せるのは反則だ。今日のダリルは、 何から何までいつもと違って調子が狂う。
「そう言えば!ピエロさんがダリルの事を、テネ……テネ何とかと言ってましたけど。それが本名何ですか?」
「様!……テネブラ。本名じゃない。まぁ お前にラテン語は難しいか」
「ラテン語たったんですね。意味は何ですか?」
「どうして知りたがる? 私に興味でもあるのか」
「………」
ダリルが からかうように聞いてきたが、 ミリヤは返事に窮する。
別に深い意味があって聞いたわけではない。ただの好奇心だ。
でも、 改めて問われると……。
死を覚悟するくらい怖い目にあったのに 離れがたい自分がいる。
どうしてなの?
楽しかったことも、誉められたことも無いのに。 私も今日はおかしいみたい。
「………」
「………」
返事に困ったミリアは ダリルの視線から逃れるように 景色を眺める。
***
ダリル は王都へと戻りながら 事件が 振り出しに戻ったことに顔を顰める。
これで手がかりが、なくなった。
しかも、天使が一枚噛んでいるかもしれない。となれば 余計に悪魔の私は 表立って行動するのは避けたい。
しかし、それをアイツが許すかどうか……。
のんきな顔で景色を眺めているミリアを見て小さく嘆息する。
しばらくは コイツに頼るしかないか……。
おわり
長い間 読んでくださりありがとうございました。
次回が ありましたから毎週にします
誘拐犯のピエロから誰の命令だと聞き出そうとすると、ピエロが 何かを訴えるように 首を動かした。
その視線の先にある胸の刻印の文字を見て息を呑む。
(この文字は……天使の文字)
術の意味は裏切り者には死を。
昔 一緒に人間界に行ったとき、悪さをさせないうに、天使が書いた術式とそっくりだ 。
どういうことだ?
悪魔と天使では 術式が違う。
(天使の文字など 悪魔が簡単に知り得ない )
それを悪魔の体に直接施すと言うことは、主犯は天使なのか?
何故、天使か悪魔を使役する?
何故、人間の魂を欲しがる?
意味がわからない。
「たっ……頼む。みっ……見……逃して……くっ、くれ」
ピエロが 悲壮な面持ちで 命乞いする。なんと愚かな奴だ。 しくじった者に明日はない。
どのみち死ぬことしか 選べないこに。
違いは誰に 殺されるかだけだ。
「………」
少しでも情報引き出そう。
「なら選べ 。私か 、お前の雇い主か」
「分かった。何が知りたい?」
「………」
握る力を緩めると、勘違いしたピエロが嬉しそうな顔をする。
質問内容を暫し考える。
術が発動するには多分、キーワードがあるはずだ。その言葉意外なら死ぬことはないだろう。
「魂はいくつ必要なんだ?」
「千個です」
かなりの数だ。古の魔王でも 復活させる気か?
「魂を何処へ運んでるんだ?」
「東の渇れ地のパッ、パッ……」
突然、ピエロの体が風船のように膨れあがる。
(ワードに 引っかかったか)
その瞬間、ピエロの心臓を握りつぶした。ピエロは 爆発することなく、瞳からすうっと光が消えていく。
手を引き抜くと 支えを失ったピエロの体が どさりと足元に転がる。
「………」
ダリルは、血で汚れ手をハンカチで丁寧に拭く。
これ以上ここにいても意味がない。
帰ろうと振り返ると、ミリアが何かを取ろうと ぴょんぴょん飛び跳ねている。何故泣かない。その方が可愛げがある。それなのに、相変わらず意味不明の行動だ。
「何をしている?」
声をかけるとミリアが得意気に拾い集めた物を見せびらかす。
「羽ですよ。羽! ほら、こんなに集めました」
見ると、それは自分の羽だった。
何をしていたのかと思えば 、そんなつまらないモノを拾い集めていたとは。 肝が据わっているのか、馬鹿なのか。
ダリルは やれやれと首を振る。
「はぁ~」
「この長いのが風切羽。 この小さいのは…… 小翼羽? それとも雨覆羽? どっちだろう?」
人の気も知らないで、ご丁寧に 一本、一本、区別し出した。
「全く、帰るぞ」
「あっ!待ってください」
そう言って私の服を引っ張ってミリアが引き止める。ポケットからキュルをそっと取り出す。怪我をしたらしく、ぐったりしている。
「ひどい怪我でしょう。ピエロさんに、やられたんです」
「………」
ミリアが持っているほど、酷い怪我では無い。
指をキュルの額につけて、自分の魔力を注入すると、キュルが 瞳を震わせて目を開ける。
「キュル!よかった。すごく心配したのよ」
ミリアが、そう言ってキュルに頬ずりする。その姿に目を細める。
今こうして目の前にミリアがいる事がたまらなく嬉しい。 もう、二度とあんな思いをしたくない。
そこまで考えて、はたとする。
( 何故 私は、こんなに喜んでいるんだ?)
人間など 使い捨ての存在だ。
そもそも、 どうしてミリアを助けに来た? 重要な秘密を握ってるわけでもない。敵の手に落ちても 何の支障もないのに……。
心の中に芽生えた気持ちを 表す言葉を 探していると 背中を触られる感触に 我に返る 。
もちろん、触っているのは ミリアだ。
「何をしている?」
「どうやって、翼を出し入れしてるのかと思って。服に穴はないんですね」
「………」
ダリルは、ベリっとミリアの手を引き剥がすと、触られないように距離をとる。
「男の体を 勝手に触るんじゃない」
「ケチケチしないでください。とっても綺麗で、 見惚れちゃいました~」
「なっ!」
ミリアが 夢見るように 両手を合わせる。自分の姿を美しいなどと、一度も思ったことはない。だから 素直に褒められると、こそばゆくて逃げ出したくなる。しかし、ミリアの瞳に浮かんでるのは 好奇心だけ。
それなのに、自分を一喜一憂させる事に怒りがこみ上げる。
「どうかしたんですか?」
「お前は馬鹿か? いや 馬鹿だ。 絶対に馬鹿だ! 馬鹿以外にない」
***
心配をして、声をかけただけなのに 罵倒される。
「なっ、 ひどいです」
いつものダリルに戻ったが、あまりに言われようだ。
「普通の娘なら 心配で私とあいつの戦いを 見守っているものだろう」
「自分で強いって言ってたじゃないですか。 嘘だったんですか?」
「嘘じゃない!」
そう聞くと 強く否定する。
全く 何を言いたいのか。やれやれと首を振る。
強いというダリルの言葉を信じたから安心して 羽集めしていたのに。
事実 、ダリルの姿を見た途端 ピエロが手を放した。
(もしかして……応援してなかったから拗ねてる?)
「ごめんなさい。今度、戦うことがあったら ちゃんと応援しますから 機嫌なおしてください」
ぺこりと頭を下げる。
男と言う生き物は 自分の良いとこを見せびらかせたい生き物だと お母様が言っていた。 ダリルは自分の勇姿を私が見てなかったから、プライドが傷ついたのね。こういう時は おとなしく謝った方が 機嫌が早く直る。
ミリアは 頭を下げたまま 上目遣いでダリルを見たる。ダリルが 怒って何度も何か言おうとして私を見る。 しかし、その度に言葉を詰まらせている。
「なっ………おっ………そっ……もういい!帰るぞ」
結局、言うの諦めた。良かったと胸を撫で下ろす。
***
ミリアは何もない空き地を見渡す。
帰ると言ったのに、見えるのは 木、木、木ばかりで、馬車が無い。道さえ見当たらない。
「馬車は、どこですか?」
「馬車は無い」
「えっ? どうやって帰るんですか? まさか、山道を歩くなんて言わないで下さいよ」
すると、ダリルが 自分のジャケットを脱いで私の肩にかける。ほんのりとダリルの匂いが香り立つ。
自分が、いつのまにか ダリルの匂いを覚えていたことがおかしかった。
「ふふっ、ダリルの匂いがします」
「っ」
ダリルの手が一瞬止まる。 どうしたのかと見ると、こわばった表情で私を見ていたが、横を向いて小さくため息をつく。
(私、何かした?)
「ダリル?」
「様! これで寒くないはずだ」
そう言うと一歩後ろに下がる。こんな時でも身だしなみに気を使っているダリルには 困ったものだと呆れる。
どう見ても 大人の服を着た子供だ。
ぶかぶかで服の中で泳いでいる。
ダリルが、いきなり私をお姫様抱っこした。
「では、行くぞ」
「キャッ」
えっ? どう言うこと?
ダリルが、地面を蹴ると 二人の体が、ぐんと空中に浮く。
そのまま 駆け続けると、どんどん空が 近づいて来る。ミリアは素晴らしい体験に 手を叩きながら喜ぶ。
「凄い。凄い! 空を飛んでます」
「飛んで無い。 走ってるだけだ」
相変わらず細かいことを言って ムードを台無しにする。でも、許す。
鳥になった気分。 心なしか風が冷たい。
「しっかり掴まっていない 落ちるぞ」
「はい」
分かったと 体ごとみつくと 、ダリルのくぐもった声がする。
「ぐるじい。前が見えない」
「あっ、ごめんなさい」
見るとダリルの頭を抱えていた。慌てで腕を外す。
「全く! 私を殺す気か。こういう場合は 私の首の後ろで手を組むんだ。男に抱き上げられたことがないのか」
そうだと 認めるのは癪なので、その件については 返事をしない。
「こうですか?」
「そうだ 」
ミリアはダリルに言われた通りにした。確かに、このポーズは収まりが良い。感心していると ダリルが、さらに高くジャンプする。
すると、眼下に箱庭のような景色が広がる。 遠くに王都の象徴の王宮が小さく見える。
(こんな遠くまで助けに来てくれたんだ ……)
そう思うと ミリアの心が温かくなる。
そういえば、 お礼を言っていなかった。お礼を言おうとしたが 、ダリルの 端正な横顔に見ているうちに 違う言葉がするりと口から漏れる。
「 綺麗 ……」
「そうだな。こうやって空から見ると 見慣れた景色も違って見えるだろう」
慌てて口を閉じた。しかし、私の言葉を 勘違いしてダリルが返事をする。
ミリアは、数回瞬きして 話を合わせる。
「そうですね。小さくて可愛いです」
「可愛いか」
薄く笑うダリルを見ていると息苦しくなる。おこりんぼのくせに 、そんな顔を見せるのは反則だ。今日のダリルは、 何から何までいつもと違って調子が狂う。
「そう言えば!ピエロさんがダリルの事を、テネ……テネ何とかと言ってましたけど。それが本名何ですか?」
「様!……テネブラ。本名じゃない。まぁ お前にラテン語は難しいか」
「ラテン語たったんですね。意味は何ですか?」
「どうして知りたがる? 私に興味でもあるのか」
「………」
ダリルが からかうように聞いてきたが、 ミリヤは返事に窮する。
別に深い意味があって聞いたわけではない。ただの好奇心だ。
でも、 改めて問われると……。
死を覚悟するくらい怖い目にあったのに 離れがたい自分がいる。
どうしてなの?
楽しかったことも、誉められたことも無いのに。 私も今日はおかしいみたい。
「………」
「………」
返事に困ったミリアは ダリルの視線から逃れるように 景色を眺める。
***
ダリル は王都へと戻りながら 事件が 振り出しに戻ったことに顔を顰める。
これで手がかりが、なくなった。
しかも、天使が一枚噛んでいるかもしれない。となれば 余計に悪魔の私は 表立って行動するのは避けたい。
しかし、それをアイツが許すかどうか……。
のんきな顔で景色を眺めているミリアを見て小さく嘆息する。
しばらくは コイツに頼るしかないか……。
おわり
長い間 読んでくださりありがとうございました。
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