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9月
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しおりを挟む俺は蘇芳凪沙、17歳。県立の高校に通う普通の高校生だ。
ーーーそう、先程までは。
「…お兄ちゃん、ありがとう」
何とか両親を説得を完了し、それぞれの部屋に戻る途中で今まで無言だった菜美が俺に声をかけてきた。
別にいいよと自分の目の前にある艶のある黒髪セミロングの頭を優しく撫でて苦笑する。
(本当に礼はいらないんだよ。なんせ、シナリオ通りに事を進めたに過ぎないんだからなー)
この世界は前世でやり込んだギャルゲー、『永遠を誓う君との物語』の世界なのだ。
物語は主人公凪沙が高校2年の秋に両親から転校を告げられスタートし、転校するまでの期間に攻略対象の女子を口説き落とす。というもの。
友人の伝手やイベントで対象キャラとお知り合いになり、好感度を上げて学校を去る終業式の日に告白して終了。
……まあ、流れはそんな感じだ。
だから、両親に2学期の終業式までこちらにいさせて欲しいと説得する必要があった。妹の事を思ってと言うのも嘘ではないが、結果として説得の口実に利用してしまった。
兄としては瞳を潤ませる妹に逆に罪悪感を覚えるわけで。
本当にさっき一気に頭の中にゲーム内容がフラッシュバックして、両親の前でパニクらんで本当に良かったよ…。
相当やり込んでいたから、家族や友人の名前に周囲の関係性がすんなり今の自分の中にストン、とはまってすぐに受け入れらたのが我ながら笑えるやら呆れるやら…。
妹の触り心地の良い頭を撫でながら俺は小さく嘆息した。
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