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11月
21
しおりを挟む皆がいる場所からどんどん離れ、校舎の外側を迂回し雨塚先輩は進んでいく。
辺りは薄暗く人気はない。
軋む身体を叱咤して後からついてくる俺を前を行く先輩は時折振り返り、その度歩調を合わせてくれる。
やがて校舎の裏庭付近までくると前方から、何か物音が聞こえて来る。
俺は言い知れぬ不安に音の方へ走って行きたかったが、前を行く先輩が無言で片腕を広げそれを制す。
「巻き込まれますよ」
何にかは問う必要はなかった。
前方で地面に吹っ飛ばされ転がっていく、その姿。
「吉良っ!!!」
薄闇でも分かるボロ雑巾のような満身創痍の体躯を見るや否や、先輩の制止を無視して駆け寄っていく。
「何でこんなになってんだよ、このバカ!!」
「なぎさ、…ぐっ」
「動くなバカ!!」
肌の見える場所だけでも擦り傷や痣だらけだ。制服下はもっと酷い事になっているだろう、その証拠に俺を見て上半身を僅かに浮かそうとしただけで、苦悶の表情で呻き声が上がる。
「骨とか大丈夫か!?」
「一応手加減はしているから、問題ない」
俺の問いは背後から返ってきた。
冷たく低い声音は静かな怒りに満ちている。
ボロボロだの吉良と違って相手は汚れもなくそこに立っている。
これはケンカじゃない、一方的な暴力だ。
「…何で、貴方がこんなこと」
「君を守れなかった罰だよ」
「なっ!?」
何だよそれ!!
「吉良から離れたのは俺の意志です吉良は何も悪くありませんっ」
「何も悪くない?」
「はい」
元は言えば俺の勝手な感傷で吉良から離れ、自ら人気の少ない場所に行ったんだ。吉良は何も悪くない。
しかし、先輩は冷笑を浮かべ『お前もそう思う?』と俺の傍の吉良に問いかけた。
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