だから王子は静かに暮らしたい。

天(ソラ)

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番外編

閑話 ホワイトデーは何倍返し?

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 先月の菓子メーカーの陰謀に引き続き、今月はそのお返しをしなければならない日もこの世界にはしっかりある。

 ある意味これ広めた人は律儀だと思う。

「アルヴィン様、失礼します」

 リヒターが扉を開けたその姿に僕はうんざりした。別にリヒターがどうのって話ではない。問題は彼が両手に抱えてるいるものだ。

 目を背けたい気持ちではあったが、それで解決するなら苦労はしない。僕は手にしていた紅茶の入ったティーカップをテーブルに戻し、リヒターに向き直った。

「…リヒター、それはどなたから?」

「騎士団の団員全員から一人一輪ずつだそうです」

「僕、あの人達にあげた記憶ないんだけど」

 半眼になってリヒターの持つ抱えきれないくらいの白薔薇を見る。

 先月のクッキー作りも恒例なら、この『お返し』も恒例行事である。前世では良くお返しは三倍返し。なんて聞いたが、

「これ何倍返しなんだよ…」

 僕の住む離宮は今様々な贈り物で溢れている。お菓子にアクセサリーはまだ可愛いものだ。一番困るのは花。しかも何故か白薔薇が圧倒的に多い。確かに白いものを送るイメージはあるけど、離宮がどこぞのアイドルコンサートの楽屋のように溢れかえっている。

 この季節の僕の離宮は別名『白薔薇宮殿』。まんまだね。

「畏れながら、騎士団の者達は来年期待しているのでは」

「…だよね、僕もそう思う」

「………消しますか?」

「リヒター、騎士団長が泣くからやめて」

 こんな感じでクッキー大量生産するから年々悪化するんだよね。いい加減何か対策考えないと。

 ちなみに兄と父からは共同で薬草園という名の温室を送られました。何倍か考えるだけでも恐ろしい。

「とりあえず花に罪はないから、離宮のどこかに飾って貰える?」

「畏まりました。そうでした、アルヴィン様」

 部屋から出て行きかけたリヒターが振り返る。

「何?」

「そこにあります箱は我々『影』から貴方様への贈り物でございます。気に入って頂けたら幸いです」

 首を傾げる僕に一礼し、リヒターは部屋から退出して行った。

 …いつの間に。

 そこと言われ疑問符を浮かべた僕がティーカップに手をかけようとした直ぐそばに、翡翠色のリボンでラッピングされたホールケーキが入るくらいの白い箱が置かれていた。

 早速開けて見ると中には、最新の暗器の数々が。

 さすが『影』の皆さんです。

「これに使われているのは従来の金属ではないな。軽い。あ、でもここが鋭利だからーー」

「中々エゲツない贈り物だな」

「わわっ!?」

 新しい暗器を検分しているすぐ肩口に声がして、危うく足元に暗器を落としそうになる。

 こんな非常識な登場する人物は1人しかいない。

 僕は椅子から立ち上がり、声の主から3歩程離れてからニッコリ微笑んだ。

「ちょうどいい所に。ギルフィス、是非新しい暗器を試させて下さい」

「絶対、君の性格形成あの陰険の影響受けているよな」

「何の話ですか?ついでに今回の衣装は手抜きですか?」

 シンプルな白シャツとズボンの上に白衣姿のギルフィス。分かる、分かるけどっ。

「医者なんだけど」

「城の医官はそんな格好じゃありません!!」

「いやぁ、白で統一したかったから」

「洒落にもなりませんよ…」

 がっくり肩を落とし席に戻る僕の向かい側に、さり気なくギルフィスが座る。自分のついでに紅茶を用意すれば、嬉しいそうにそれに口をつけた。

「念の為にお聞きしますが、ご用件は」

「ん?先月のお返し」

 ですよねー。

 ギルフィスは何も無い所からポン、と赤いリボンでラッピングされた一冊の分厚い本を取り出した。

「何を選べば君が喜んでくれるか迷ったんだよね」

 東雲色の表紙のその本は人間の言語ではない文字の題名が書かれていた。

「これは魔族の文字ですか?」

「そう、古い魔族文字で『神話の魔法』って書かれている」

 サラッと凄い事言ってません?これはもしかしなくても…、考えただけで手が震える。

「魔王様。これ禁書でしょ?」

「厳密に言えば原書は持ちだしは無理だから、写本してみた」

「禁書は禁書でしょうがっ!!!」

 クッキーのお返しに禁書って、何倍返しの前に世界がひっくり返るわっ。これ解読して使ったら世界滅亡する!!

「貴重な本なのにぃ」

「はいそこ、頰膨らませても可愛くないですからね。そりゃ興味深いですが、恐ろしいし第一僕には読めません」

 魔族の古代文字なんて解読するのに、何年かかるやら。僕が生きているうちは全解読無理。

 そう言ったら、ギルフィスがあっけらかんと読めるよと。

 え、どうやって?

 知的好奇心に目を輝かせる僕にギルフィスはそれはそれは楽しそうに人差し指を立ててこう告げた。

「アルヴィンが俺と結婚して魔族になれば、読めるようになる」

 禁書はギルフィスの顔面にクリーンヒットした。



 









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☆早いけどホワイトデーネタでした。
シリアスばかりは疲れるものでσ(^_^;)
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