3 / 10
第3話
しおりを挟む
僕が彼と出会ったのは、高校生のときだった。
二学年の時に同じクラスになった。
お互いに学年の中で名前が知られるような、そういう目立つ部分を持たない平凡な生徒だった。
僕が彼を意識するようになったのは、二学年の秋だった。
学校祭の準備の最中。
部活とクラス、それぞれの出し物を掛け持ちしている者は自然と部活の出し物の方に力を入れるようになる。
クラスに残ったのは、部活の準備がない者や帰宅部の面々だった。
クラスの女子に仕切られて、僕たちは役割を全うするのに力を注いでいた。
ダンボールが足りない、と言われて、彼と僕は二人でダンボール置き場へと向かった。
学校という場所は不思議だ。教室という名の同じような箱が四階まで同じように縦横に並んでいる。その箱から、学園祭というイベントに向けて人が染み出してくる、飛び出してくる。
イベントへ向ける気持ちが建物に蔓延すると、インフルエンザのように猛威を振るいはじめる。
それは恋愛ごとにも副作用を起こしていた。
僕のような、多数に埋もれる生徒のところにまで、誰某(だれそれ)の何事かがあった、と聞こえてくるぐらいだ。
学校中が病気だった。
病巣の中を、僕と彼はダンボールを取りに歩いていく。
僕の頭の中の学校の地図のルートでは、その場所へ行くには教室を出て一番近くの階段を一階まで降りて、校長室の前の廊下を通り、左に曲がる。そして、生徒の下足入れ、保健室、購買と行くと、外につながるドアがある。そこを出ると、右手にダンボールを積んである場所があるのだった。
しかし、彼は三階まで降りると、そのまま向かいの建物につながる、屋外の通路を進んでいった。
僕は戸惑いながらも彼についてゆく。
短い彼の髪は、風にもびくともしないんだな、と思った。
向かいの建物に入って彼はそこを一階まで降りた。
僕が来たことのない場所だった。
それを伝えると
「俺はこっちの方が好き」
そう言って、僕がいつも通るところより暗い廊下を進んで行く。
ここは、倉庫になってる部屋が多いんだ、と彼は、鍵がかかった教室の方に目をやる。
次いで、ほら、と僕を促して逆の方に目を向けさせた。
そこには、黄色く染まった世界があった。
大きなイチョウの木が一本だけ立っていて、廊下と外をつなぐ窓の並びに映えていた。
「いいだろ、ここ」
少し笑ったように感じて、斜め前にいる彼の方を向くと、イチョウの木が網膜に焼き付いて、彼まで黄色く染まって見えた。
初めて、他人を綺麗だと思った瞬間だった。
そして、僕も学校に蔓延する病気にかかったと自覚するまで、そう長い時間はかからなかった。
二学年の時に同じクラスになった。
お互いに学年の中で名前が知られるような、そういう目立つ部分を持たない平凡な生徒だった。
僕が彼を意識するようになったのは、二学年の秋だった。
学校祭の準備の最中。
部活とクラス、それぞれの出し物を掛け持ちしている者は自然と部活の出し物の方に力を入れるようになる。
クラスに残ったのは、部活の準備がない者や帰宅部の面々だった。
クラスの女子に仕切られて、僕たちは役割を全うするのに力を注いでいた。
ダンボールが足りない、と言われて、彼と僕は二人でダンボール置き場へと向かった。
学校という場所は不思議だ。教室という名の同じような箱が四階まで同じように縦横に並んでいる。その箱から、学園祭というイベントに向けて人が染み出してくる、飛び出してくる。
イベントへ向ける気持ちが建物に蔓延すると、インフルエンザのように猛威を振るいはじめる。
それは恋愛ごとにも副作用を起こしていた。
僕のような、多数に埋もれる生徒のところにまで、誰某(だれそれ)の何事かがあった、と聞こえてくるぐらいだ。
学校中が病気だった。
病巣の中を、僕と彼はダンボールを取りに歩いていく。
僕の頭の中の学校の地図のルートでは、その場所へ行くには教室を出て一番近くの階段を一階まで降りて、校長室の前の廊下を通り、左に曲がる。そして、生徒の下足入れ、保健室、購買と行くと、外につながるドアがある。そこを出ると、右手にダンボールを積んである場所があるのだった。
しかし、彼は三階まで降りると、そのまま向かいの建物につながる、屋外の通路を進んでいった。
僕は戸惑いながらも彼についてゆく。
短い彼の髪は、風にもびくともしないんだな、と思った。
向かいの建物に入って彼はそこを一階まで降りた。
僕が来たことのない場所だった。
それを伝えると
「俺はこっちの方が好き」
そう言って、僕がいつも通るところより暗い廊下を進んで行く。
ここは、倉庫になってる部屋が多いんだ、と彼は、鍵がかかった教室の方に目をやる。
次いで、ほら、と僕を促して逆の方に目を向けさせた。
そこには、黄色く染まった世界があった。
大きなイチョウの木が一本だけ立っていて、廊下と外をつなぐ窓の並びに映えていた。
「いいだろ、ここ」
少し笑ったように感じて、斜め前にいる彼の方を向くと、イチョウの木が網膜に焼き付いて、彼まで黄色く染まって見えた。
初めて、他人を綺麗だと思った瞬間だった。
そして、僕も学校に蔓延する病気にかかったと自覚するまで、そう長い時間はかからなかった。
0
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる