ガンズ・アンド・シッスル

前原博士

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チャプター4 サンドクリークの戦い #1

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 けたたましく鳴り響く警告音。そしてすぐ付近で爆発音と衝撃が響く。
「なにっ!? 何がおきてんの!?」
「待テ、今カメラを切り替エる!」

 すると、それまで薄汚れた金属の壁であった船の天井部分が、空の映像に切り替わる。
 船の外部に設置されたカメラ映像とリンクしているのだ。
 そこに濛々とあがる黒煙、そして上空に光り輝くのは…… Vの字型のボディをした巨大なギターである。

「あれは何!?」「何が浮いてるの?!」
 少年ニンジャ達が不安そうに声をあげる。
「あれ、ダレル社の戦闘艦じゃん! なんでこんな所にいんの!?」
「そレよりモ、あいつここにも攻撃シてくるゾ!」
「ど、どうして僕たちを!?」
「あいつ等は目に付くもの何でもかんでも吹き飛ばす奴らなんだよ ねぇこの船武器は積んでないの?」
「上じゃ、タレットがある まだ少しくらいは動くじゃろ」
「おっけー!」

 天井に投影されていた映像が消えた。少女は階段を駆け上がり、格納庫から砲撃用タレットのコンソールへと向かった。

「うぇぇ…… なにこの骨董品!」
「そラお前、150年以上ハ前の代物ダカらな……」
 リベルタの言うとおり、コンソールはカビと埃がつもり、ほとんど何も見えない状態だった。
 袖で汚れをぬぐいとり、適当にスイッチらしきものを入れるとコンソールに緑色のランプがともる。

「よし後ハ俺に任せナ!」
 待つこと数秒、コンソールの出力インジケーターが40%を示し、低いうなり声の様な駆動音が鳴り出した。
 周囲のランプや計器も動き出すが、ほとんどは異常を示す赤ランプばかりで、あまり良い状態では無いようだ。

「これ大丈夫!?爆発したりするのは勘弁してよ!」
「サぁどウだかナ!とニかく何トかすルしかナイ!」

 リベルタは船外カメラごしに見えるギター型宇宙船にタレットの照準を合わせる。
 一撃で決めなければ当然反撃を受ける。 そうなれば、あっという間に木っ端微塵にされてしまうだろう、絶対に外すことは出来ない。
 そんな切羽詰った状況だというのに、リベルタは漏れ出す笑みを隠せないでいた。

「プレッシャーは最高!」
 少女が引き金を引くと船外に突き出されたタレットの銃身が150年ぶりに光り始める。その輝きはやがて弾丸となり放たれた。
「やった命中!」
「よっシャぁ! 撃ち続ケロ!」

 少女とAIは歓喜の声をあげるが、しかし。ギター宇宙船は無傷だった。
 宇宙船に使われている頑強なバリアが攻撃を防いでいた。ギター宇宙船はヘッドの向きを変え始める。当然、反撃のためだ。

「やばい! 全然効いてないじゃん! このオンボロ!」
「コりゃマズいな! せメテ出力がもっト出りゃぁ……」

 そうこうしてる間にもギター宇宙船はコチラに狙いを定めている。

≪俺たちに不意打ちをかますたぁいい度胸じゃねぇかぁ!!吹き飛ばしてやるぜ!≫

 ギター宇宙船から、がなる声と大音量のヘヴィメタルが響き渡る。
 宇宙船に巨大な外部スピーカーを付けるなど、狂気の沙汰でしかないが、彼らはそれがCOOLであると信じて疑わない人種だ。

≪DIE YOU BASTARD!≫

 性急なバスドラムの音と供に、尾から炎を上げるマイク型の飛翔物が数発迫る。
 ダレル社の使うミサイルだ。

「やばい!」
 船のカメラ越しに接近するそれは、しかしハヤブサのように飛来した黒い何かによって切り裂かれ、動力の残るエンジン部分はあらぬ方向に吹き飛び、爆弾部分は力なく落下していった。
 リベルタが黒鳥にカメラを向けるとブレードを抜いたZERO-NEMOの姿がある。

「あいつやるじゃん!」
「ああ、ソりゃイイけど一体どウする!?このマまじゃアやられチまウゾ!」
「ああんもうこのポンコツ!気合入れろっての!」

 狭いタレットの操縦席内でリベルタは滅多やたらにそこらの物を蹴り飛ばし始める。

「オイオイ、やめロって!ブっ壊す気かヨ!」

 その時、リベルタの周囲で異常を訴え続けていたパネルが、次々と正常を告げる緑のランプに変わり、低く唸っていただけのタレットの駆動音も数オクターブ高いものに変わった。
 タレットの出力は急激に上昇し、数値は130%を示す。

「リベルタ、お前何ヤった?」
「アハハハ! この手に限るってね! くー!たー!ばー!れー!」

 少女が渾身の思いと供に引き金を引くと船外に突き出されたタレットの銃身がひと際強く輝いた。
 そして発射された光弾はニンジャが使うクナイの形となり、ダレル社のギター宇宙船のバリアをやすやすと貫通し木っ端みじんに吹き飛ばしたのだった。
 それが船の最後の力であったのか、急激に出力は落ち、コンソールも沈黙してしまった。

「やった!! イッピイェイェイ!」
「リベルタお前最高ダよ! 最ノ高! 最最の高!!」

 少女とAIは興奮した様子で大声を上げて自らの勝利を称えあった。

「前かラ思っテたんダケどさ お前、モしかシて超能力者なんジゃないか?」
「私もそう思ってた! アハハハハハ!」
「ハハハハハハハ!」


 船の外に出た一行は空を見上げていた。
 勝利の余韻に浸っているわけではない、見上げた空の彼方にはギター宇宙船がまだいくつもあり、この星の最大の都市であるサンドクリークに向けて飛んでいるのが見える。

「やばいよ! あいつら、居留地も全部吹き飛ばす気だ」

 少年ニンジャたちが不安そうに話す。

「行け、若者たちよ 行ってみなを救いなさい」

 老人が口を開く。ZERO-NEMOはすでにどう奴らと戦うか思案している様子だ。

「もちろん私も行く こんな面白そうな事ほっとくわけにいかないじゃん!」
「ありがとうお姉さん、僕も頑張る」「僕も」「やっつけよう!」
「先に言っておくが、殺すのはダレル社の者だけじゃぞ マルティニには手を出すんじゃない」

 老人の言葉に、少年たちも一応の納得をしたようで曖昧にうなづいた。
 彼らがマルティニに悪い感情を抱くのは当然の事だ。
 だが混乱に乗じて彼らまで襲えば混乱に拍車かかるだけだ。
 ダレル社かマルティニの援軍が来たら、弱者である彼らはあっという間に根絶やしにされるだろう。

「さ、長老も早く!」
「いいから置いて行け、どうせ役に立たん 事態は急を要する さぁ早くいかんか!」
「わ、わかりました!」「どうかお気をつけて……」

 少年ニンジャ達は右手のこぶしを握り、また左手でそれを包むように手のひらを当てると老人に深深と礼をした。

「向こうに馬が居る、カウガール お前は生きた本物の馬に乗ったことがあるか?」
 ZERO-NEMOがフルフェイスマスクの光点を明滅させて話した。

 -----

 -数刻前 サンドクリーク マルティニ社オフィスビル周辺-

「一体どうなっている!? 何が爆発しているんだ!?」
 マルティニ社の部長で、この星の開発を社より任せられているウィリアムは、燃え上がる街の中で逃げ回る人々の渦をかき分けながら叫んでいた。

「爆発ではありません部長! 攻撃です! ダレル社の攻撃艦です!」
「なんだと!? 奇襲か!? 反撃はどうなってる!」
「それが、部隊のほとんどがスラムに集結していまして、先制攻撃でそのほとんどが……!」
「なんだと!? くそっくそっ! 私の街が! 私の社が!」

 街が燃えていた。弱き人々を押し込めたスラムも燃えていた。
 街に侵入した傍若無人の、ダレル社の尖兵たるメタルヘッズ達は、目につくあらゆるものに引き金を引いていた。
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