ガンズ・アンド・シッスル

前原博士

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チャプター7 コードウェルよ銃を取れ #3

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<<ごめん皆、俺は大丈夫 リベルタも無事だ>>
<<コードウェル! このどうしようもないお坊ちゃんめ! お前なんかよりわしの可愛いリベルタに怪我が無いかが心配じゃぁ!>>
<<ほんとにごめんよサワー だが俺の手には、親父の作ったショットガンがある もう奴らの好きにはさせない>>
<<やる気の所申し訳ないがなドラ息子よぉ! もう敵はあらかた倒したぞ そろそろケツをまくるぞお前ら!>>とマルコ。

 屋敷はアラモ砦の様相を呈していた。しかし全滅の憂き目にあったのは攻め手であるダレルだ。
 コードウェルを守るため、マルコ・ファミリーは優秀なガンマンを失った。だが敵はおおよそ100人以上を失い敗走した。
 脱出の最大の好機であると思われた。だが。

<<全員伏せロ! ヘリが来た!>>
 リベルタの持つ支援AIから警告の二秒後、ギターピック型ロケットが着弾した。ダレル社の誇る、頭蓋骨型ヘリは、ローターの音と逆位相の音を人為的に出して音を相殺していた。戦闘の喧騒に紛れて十数機の編隊で接近していたのだ。

「畜生! こりゃぁショットガンじゃだめそうだな!」
「はやく隠れておじさん!」
 ダレルのスカルヘリはめちゃくちゃに周囲をロケット弾で掃討を開始した。敵も味方も、お構い無しだ。
 KABOOM!KABOOM!

 ロケット弾の一発が屋敷に隣接していた巨木に命中する。老スナイパー、サワーの陣取っていた木だ。

「おじいちゃん!!」
「やべぇ、俺が行く! リベルタ、お前たちはあのヘリをなんとかしてくれ!」
「ちょっとおじさん!? 離れたら危ない!」
「俺がやる やらせてくれ!」

 引きとめようとするリベルタを振り払い、コードウェルは走り出した。リベルタは一瞬ためらったが、コードウェルに背を向けて、迫り来るスカルヘリに対して銃を構えた。


「サワー! おいサワー! どこだ、居るのか!?」

 コードウェルは攻撃を受けた巨木の付近で大声を上げていた。あちこちから火のついた蔓や枝葉が落ちてくる。サワーからは応答がない。

 木自体は吹き飛ぶことなく健在だがその衝撃で落ちたかなにかしたに違いない。コードウェルは声を限りに叫んで走った。
 そして枝葉の中に埋もれるように落ちているライフル銃を見つけた。間違いなくサワーの銃だ。

 コードウェルが周囲に目を凝らすと……居た。サワーだ。まるで落ちた大鷲のように翼を広げて倒れ臥していた。
 どうやら老スナイパーは爆発の最中、飛行装置を使って滑空し落下の衝撃を緩めたようだ。

「サワー!! 畜生、無事か? 生きてるかサワー?」
 コードウェルはサワーの頬を叩く。すると老人はうめき声を上げて目を開けた。

「な、なんじゃ コードウェルか この鼻垂れ坊主めが…… はやく逃げろ わしの事は……」
「何言ってんだ! お前を置いていけるわけないだろ! お前は、お前は俺が生まれた時からずっと一緒に居てくれたんだ! サミュエルは皆家族だ! だろ!?」
「馬鹿を言うな おいぼれのわしより、お前が生きるべきじゃ そらさっさと行け馬鹿息子が!」
「うるさい! いいか、俺は社長だ! お前は俺の指示に従え! いいか、サミュエルはまだ死んでない 俺と、お前が居ればまたやり直せる! お前が必要なんだサワー! だから絶対に死ぬな! これは命令だサワー!」

 ふり絞るように、毅然として言いながらも、コードウェルは泣いていた。顔面から出せるあらゆる体液を出して泣いていた。
 サワーはもう何も言えず、ただコードウェルに向けて手を上げて、その背中におぶさった。

「男になったな、コードウェル いや…… コードウェル社長」

 老スナイパーは視覚と直結されたスコープゴーグルを外し、白濁した瞳で男の背を見た。その目の水晶体は濁りきり、光を映していない。だがそのまなざしはどこまでも深く透き通っていた。

「ああ、一からやり直そう 先ずはここを切り抜けるぞ」
 コードウェルはサワーを担ぎ上げ、よたつきつつも走り出す。
 だが状況は悪化の一途とたどっていた。

 マルコの仲間たちは次々と倒れ、いまや戦えるのはリベルタとZERO-NEMO、そしてマルコの三人だけだ。
 敵は上空から戦闘ヘリでむやみやたらに攻撃を続けている。彼らの射撃の腕が拙いのだけがせめてもの救いか。

「早く早ク! コードウェルが来たゾ! ケツまくレ、リベルタぁ!」
「わかってる! ZERO-NEMO、合流して! ジャングルに逃げ込むよ!」
 その時、聞きなれない通信がリベルタに届いた。

<<あー、リベルタくんだったね 突然ですまない 君に用件がある>>
 落ち着いた男性の声だ。まだ若そうだ。

「はぁ? 今取り込み中よ!」「おいコレぁ、超遠距離カら割り込んデんのか!? どうヤってル!?」
<<忙しいのは承知している 状況はモニタしているからね だが君にとっても良い話だ どうやらコードウェル君は忘れてしまっているようだが、実は君たちの居た屋敷というか、ボロ小屋にはシェルターがあるんだ>>

「シェルター? なんでそんなこと知ってるの?」

<<なぜならそいつの製造に関わったのが、わが社だからね それに周囲には偽装タレットも配置されている>>
「まってあんた誰?」
<<私はエンデュミオン社CEOのエペイオスだよろしく>>
「エンデュミオンってあの、世界一の大企業の!?」
<<おかげさまでね さぁ早くコードウェルにシェルターのことを訪ねたまえ、彼が思い出すように それから、このことはくれぐれも内密に頼む 勝手に他企業の支援をするのは社内規約に反するのでね>>

「わかった! ウソだったら化けて出るから!」
<<頼んだ 詳しい話は後でしよう、彼を殺させるわけにいかないのでね 最後にちょっとしたギフトだ>>

「ピー! コチラはPrélat弾体転送サービスでス お客様のサービス情報がアップデートさレましタ お客様の弾体使用は以降、恒久的に無制限とナりマす」

「マジで?」
「ソうイやPrélatはエンデュミオンの子会社だっタな どウやら本物だナ! そんなことより急げ!」

「ねぇおじさん!コードウェルおじさん!」

 リベルタはサワーを担いでジャングルへと向かうコードウェルに声をかけた。ZERO-NEMOとマルコもすぐ近くに居て、銃と弓とでダレル社のヘリに向けて、けん制射撃を行っている。だがあまりにも多勢に無勢だ。時間稼ぎにすらなっていない。

「なんだ!?」
「あそこってシェルターがあるんじゃない?」
「シェルター? 何言ってんだそんなもの…… ある」
「なんじゃと、本当かコードウェル?」
「畜生、なんで忘れてたんだ! そうだ、シェルターがある!」
「このバカたれが! 最初からこんな苦労せんで済んだんじゃないか!」
「いいから早く皆来い!」
「やれやれだな」と肩をすくめるZERO-NEMO。

「よし、ここだ」
 コードウェルは既に焼け落ち、廃墟となった屋敷に取って返し、床の一角の瓦礫とこげた敷物をどけた。そこには2メートル四方ほどの床扉が付いており、コード入力用の端末を備えていた。
 コードウェルが端末を操作すると扉が開き、梯子へと繋がっている。

「さぁ早く入れ!」 まずコードウェルが降り、それにサワーが続いた。
「お前も早くしろカウガール」ZERO-NEMOも降りていく。

 リベルタは無制限弾丸の味をたしかめるように、ひたすらに銃を撃ちまくっていた。その真横ではマルコもまた、競うようにライフルを射撃している。だが敵の攻撃はいっそう激しくなるばかりだ。
 もかくやという激しい銃撃戦だ。
 使われた弾丸を一箇所に集めたらちょっとした小山ができるだろう。

「先にいけリベルタ!」
 振り返ったマルコがリベルタの肩を押しのける。リベルタが銃口を外して背後のシェルターに走り出そうとした瞬間、マルコの背後で爆発が起こった。吹き飛ばされた破片が男の首筋にめり込んだ。

「マルコ!」
 少女が叫び、手を伸ばしたが、男は青ざめた顔でその手を振り払った。
「早く、行け」
 それだけ言うと男はライフルを手に、シェルターとは逆側に走り出した。叫び声を上げる事も無く、銃撃しながら爆風の中へ消えた。
 少女はただ歯を食いしばり、その姿を見送ることしかできなかった。


「リベルタ、マルコは?」
 シェルターに入り、ドアを閉めた少女はただうつむいて首を横に振った。
「そうか…… 畜生、おれのせいだ……」
「そんな事はいいから、まずはあいつらをどうにかしないと」

 リベルタはもう切り替えていた。戦場では、死者の事をいつまでも考える者はその仲間入りをするだけだ。

「タレットがあるんでしょ、おじさん!」
「え、タレット? そんなものうちには…… ああっ! そうだあるぞタレット! 確か昔親父が買ってた!」
「本当か!?」
「ああ、元々この家は俺と妹用に作ったんだ それで親父がもしもの時にって残してくれた奴だよ ……ちくしょう何で忘れてたんだ 親父、ありがとよぉ……」
 コードウェルは涙をぬぐいながら言った。

「ていうかなんで知ってるんだリベルタ?」
「えっ いや、今はそんな場合じゃないでしょっ! 早くあいつらをやっつけないと!」
「そうだな、それじゃ反撃といこう!」

 シェルターの内部は、古風なログハウス風だった建物とは違い、白を基調とした先進的なデザインの空間だった。数十畳はある広い空間に、さらに奥にはいくつかの通路が作られている。
 広間の壁側はそれが丸ごとモニターとなっており、いくつかに分割された窓から外部の様子が伺えた。外部に設置されたカメラからの映像だろう。
 コードウェルは壁に埋め込まれた小さな端末に指示を出すだけでいい。

「自動タレット起動! ターゲット、ダレル社!」

 地響きのような振動が断続的に起こった。それはシェルターの周囲に配置された自然環境に偽装されたタレットを呼び覚ます音だ。
 展開された砲門に、ダレル社の兵士たちが気が付いた時にはもう遅かった。
 シェルターに設置されたモニターからは次々に引き裂かれていくダレル社の兵士やスカルヘリの姿が映し出されていた。

「やったぞ! 皆殺しだ畜生め!」
「ふぅ、やっと一息じゃのう」
「おめでとうおじさん! あたしたちの勝ちね!」
「待テ 救難信号だ、何かガ大気圏カラ突入しテくル!」

 シェルターに再び振動が走った。モニターには地面に突き刺さる車ほどのサイズの円筒形の物体が映し出されていた。
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