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アカンサスの花
19.黄色いスミレ
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今日のパスタは正直イマイチだった。カルボナーラ、好きなんだけどな。
前行った洋食屋が美味かった分、残念な気分になった。今度はあの店でパスタを頼もう。
まぁ、今日はこれから一大イベントだ。少々の残念な気持ちくらい飲み込む。
スナック類をテーブルに置いて、飲み物を冷蔵庫に入れる。一応酒も買ってきた。
主税は酒を飲むんだろうか。飲まないんだったら俺も飲まないけど、昼から飲む酒、結構好きなんだよね。悪いことしてる感じと、結構飲んでも「まだこんな時間」って浮かれる感じが。
いっそ俺がもう飲んでたらどういうリアクションするだろう。それはそれで面白そうだけど、さすがに招待1回目からそれはちょっとね。
え、2回目もあるの?
自分の思考に驚いた。ちょっと揶揄うだけのつもりで誘ったのに2回目は必要か?さすがに「ドキっ!彼と二人でお部屋デート!」みたいなネタは1回で十分だろ。そもそも俺もそんなに揶揄うネタがない。
…まぁ、それは、おいおい考えよう。
今日楽しければまた誘えばいいし、楽しくなかったらフェードアウトだ。
マッチングで会った相手と部屋で会うなんて、主税はそういうことを期待して来るだろうけど、ちょっとでも秋波を送られたら速攻追い出してやる。童貞だからどうせ何もできないだろうけどな。
俺が揶揄うのはイイ、でも本気に取られるのは違う。あくまであたふたしてる様子を楽しみたいだけだ。
自分の心持に少しだけ混乱して、気持ちを落ち着けている内にチャイムが鳴った。
時計を見ると12:50。10分前行動。いいね。
「はーい」なんて間延びした返事をしながらドアを開けると、見るからに緊張した様子の主税が立っていた。
両手に荷物を抱えて…、結構大荷物だな。
右手に紙袋とビニール袋。左手には何やらカラフルな影の見える大ぶりな半透明の袋を持っている。
「は、早かったかな。ごめんね」
少し期間を開けたせいか、主税は初めて会った時のぎこちなさを再び身に着けていた。
これはこれで楽しみが増えていいんだけど、あの穏やかな笑顔が見れなくなったのかと思うと少し残念だった。
「こ、れ、お土産…」
そう言って差し出された右手には大量の飲み物とスナック菓子が入ったビニール袋。酒のつまみけた乾きものも見える。あとはケーキの箱の入った紙袋。
受け取るとずしっと重くて、主税の手には赤い跡がくっきり残っていた。これ持って駅から歩いて来たの?凄いな。
「はは、考えること一緒だね。同じようなもん買ってるわ」
そう言って笑うと主税は小さく微笑んで俯いた。
「いらっしゃい。入って」
貰った袋をとりあえずキッチンに置いて促すと、やけにゆっくりとした動作で靴を脱いで、こちらに背を向けて揃えて、ぎぎ、と音がしそうなくらいぎこちなく振り返る。
「おじゃ、お邪魔します。あと、その、これも」
そう言って渡されたもう一方の袋の中には、小ぶりな花束が入っていた。
「…っ」
なんだこれは。
予想外のプレゼントに息を飲む。
は、花束。花束だよ。サークルの送別会以来だよ。その時は悪ふざけ丸出しの真っ赤な薔薇の花束で、持って帰るのがえらい恥ずかしかったのを覚えている。
こんな風に花束を渡されたことなんかなくて、顔が熱くなるのを感じた。
渡した主税の方も、髪の隙間から覗く耳まで真っ赤にして俯いている。
「ごめん、その、邪魔だったら、持って帰るから…」
俺が何も言わないのを何か勘違いしたんだろう、主税が取り繕うように言って渡した袋に手を伸ばすのを、袋を遠ざけて遮った。
「…ありがとう。ちょっとびっくりしただけ」
多分顔が赤い。それを隠すように背を向けて、袋から花束を出して部屋に持ち込む。白に、水色に、薄い黄色。正直、俺の部屋には淡すぎる色合いだけど、初めての経験に俺の心臓はドクドクと早鐘を打っていた。
前行った洋食屋が美味かった分、残念な気分になった。今度はあの店でパスタを頼もう。
まぁ、今日はこれから一大イベントだ。少々の残念な気持ちくらい飲み込む。
スナック類をテーブルに置いて、飲み物を冷蔵庫に入れる。一応酒も買ってきた。
主税は酒を飲むんだろうか。飲まないんだったら俺も飲まないけど、昼から飲む酒、結構好きなんだよね。悪いことしてる感じと、結構飲んでも「まだこんな時間」って浮かれる感じが。
いっそ俺がもう飲んでたらどういうリアクションするだろう。それはそれで面白そうだけど、さすがに招待1回目からそれはちょっとね。
え、2回目もあるの?
自分の思考に驚いた。ちょっと揶揄うだけのつもりで誘ったのに2回目は必要か?さすがに「ドキっ!彼と二人でお部屋デート!」みたいなネタは1回で十分だろ。そもそも俺もそんなに揶揄うネタがない。
…まぁ、それは、おいおい考えよう。
今日楽しければまた誘えばいいし、楽しくなかったらフェードアウトだ。
マッチングで会った相手と部屋で会うなんて、主税はそういうことを期待して来るだろうけど、ちょっとでも秋波を送られたら速攻追い出してやる。童貞だからどうせ何もできないだろうけどな。
俺が揶揄うのはイイ、でも本気に取られるのは違う。あくまであたふたしてる様子を楽しみたいだけだ。
自分の心持に少しだけ混乱して、気持ちを落ち着けている内にチャイムが鳴った。
時計を見ると12:50。10分前行動。いいね。
「はーい」なんて間延びした返事をしながらドアを開けると、見るからに緊張した様子の主税が立っていた。
両手に荷物を抱えて…、結構大荷物だな。
右手に紙袋とビニール袋。左手には何やらカラフルな影の見える大ぶりな半透明の袋を持っている。
「は、早かったかな。ごめんね」
少し期間を開けたせいか、主税は初めて会った時のぎこちなさを再び身に着けていた。
これはこれで楽しみが増えていいんだけど、あの穏やかな笑顔が見れなくなったのかと思うと少し残念だった。
「こ、れ、お土産…」
そう言って差し出された右手には大量の飲み物とスナック菓子が入ったビニール袋。酒のつまみけた乾きものも見える。あとはケーキの箱の入った紙袋。
受け取るとずしっと重くて、主税の手には赤い跡がくっきり残っていた。これ持って駅から歩いて来たの?凄いな。
「はは、考えること一緒だね。同じようなもん買ってるわ」
そう言って笑うと主税は小さく微笑んで俯いた。
「いらっしゃい。入って」
貰った袋をとりあえずキッチンに置いて促すと、やけにゆっくりとした動作で靴を脱いで、こちらに背を向けて揃えて、ぎぎ、と音がしそうなくらいぎこちなく振り返る。
「おじゃ、お邪魔します。あと、その、これも」
そう言って渡されたもう一方の袋の中には、小ぶりな花束が入っていた。
「…っ」
なんだこれは。
予想外のプレゼントに息を飲む。
は、花束。花束だよ。サークルの送別会以来だよ。その時は悪ふざけ丸出しの真っ赤な薔薇の花束で、持って帰るのがえらい恥ずかしかったのを覚えている。
こんな風に花束を渡されたことなんかなくて、顔が熱くなるのを感じた。
渡した主税の方も、髪の隙間から覗く耳まで真っ赤にして俯いている。
「ごめん、その、邪魔だったら、持って帰るから…」
俺が何も言わないのを何か勘違いしたんだろう、主税が取り繕うように言って渡した袋に手を伸ばすのを、袋を遠ざけて遮った。
「…ありがとう。ちょっとびっくりしただけ」
多分顔が赤い。それを隠すように背を向けて、袋から花束を出して部屋に持ち込む。白に、水色に、薄い黄色。正直、俺の部屋には淡すぎる色合いだけど、初めての経験に俺の心臓はドクドクと早鐘を打っていた。
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