歩いて気づいた、大切なもの

文月 凛音

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エピローグ

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その記事が公開されたのは、秋から冬へと季節が移ろいはじめた頃だった。

「元モデル・岡村あかりさんの“いま”に迫る」

そんな見出しがついた特集ページは、想像以上の反響を呼んだ。

あの頃のファンだった人たちから、SNSにたくさんのメッセージが届いた。
「変わらない笑顔が嬉しい」「勇気をもらいました」
そして、一番多かったのが──

「もう一度、あの笑顔が見たい」

その声に応えるように、私の元に新しい依頼が舞い込んだ。

最初は、小さなブランドのカタログ撮影。
「自然体のままで」「飾らない美しさを」
そう言われて、私は昔のようにポーズをとるのではなく、ただ、歩いた。

朝の散歩のように。
一歩一歩、踏みしめながら。

シャッターの音が響くたび、自分の中にある“芯”を感じた。
そこから、少しずつ仕事が増えていった。

テレビの情報番組で紹介されたり、
大人の女性向けのビューティー特集にモデルとして登場したり。

不思議と、怖くなかった。
誰かの理想に縛られることも、怯えることもなかった。

今の私は、自分自身のままで、カメラの前に立っている。

「岡村さんって、“言葉のある写真”を撮るんですね」

あるカメラマンがそう言ってくれた。
“言葉のある写真”──昔の私には、なかったもの。

それは、あの日々を、歩いたから得られたのだと思う。

私は「モデルに戻った」というより、
「新しい私として、また歩き出した」のだ。

撮影の帰り道、ふと立ち寄ったパン屋のショーケース。
そこには、小さな焼き立てのクロワッサン。

「……パンのおねえちゃん、だっけ」

思い出して、ひとり笑った。
もう、あの子たちは私のことを覚えていないかもしれない。

でも、あの朝の時間は、確かに私の中に生きている。

落ち葉を拾った日。
誰かと交わした小さな挨拶。
差し伸べた手、交わした笑顔。

あの一つひとつが、今の私に繋がっている。

たくさん転んできたし、たくさん見失ってきた。
けれど──

「いまのわたしが、いちばん好き」

そう胸を張って言える、そんな日々を私は歩いている。
自分で在りたい。
誰かに操られるだけの人生なんて、もういらない。

明日も、明後日も、その先も。
私は、私を歩いていく。

🌸終わり。そして、はじまり🌸
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