願えば初恋

わいあーる

文字の大きさ
17 / 125
◇私とアイツ◇

-17-

しおりを挟む
……てゆーか。

私も何であんなに毛嫌いしていたのか正直忘れてしまった程、砂東フロア長との再会は久しぶり。

中学の卒業以来会っていないから、14年ぶり??

砂東くんと健一くんと彩花。 
三人とも、無事に一緒の高校に受かって___



そういえば、高校1年の時にどっかに転校したって彩花が言ってたなぁ。

十数年前の事で記憶が曖昧。


転校先がこっちだった…とか?

何で本社から店舗にきたんだろう?

うーん。

考えれば考えるほど、謎が謎を呼ぶ。


「そうだ!彩花に教えてやろー!ビックリするだろうなー!」

あれだけ砂東フロア長の事は考えたくないと言いつつ、ベッドの上にある携帯電話へと手を伸ばし、彩花に電話する。

面白い話は共有するのが女子の常識。

「もしもしー?元気してる?久しぶりやねー。唯ちゃんは今年小学生になるんやったっけ?」

「なん言いよっと?!すでに1年生やし。杏から入学祝い送ってもらったやん!」

「そーやったっけ?」

地元の友人と話す時は、気兼ねなく使える訛りに会話も弾む。

「あ、そっか!二人が結婚して6年やもんね。月日が流れるのは早いなー」

彩花と健一くんは、私がこっちに来てすぐに結婚して、今では一姫二太郎の2児のママとパパになっている。

「杏は相変わらず忙しいと?たまにはこっちに帰ってきーよ。もう随分と帰って来とらんやろ。みんなも杏と飲みたいっち言いよるよ?」

「そうっちゃんねー。そっちに帰らんとって思いつつ仕事も忙しいし、なんかついつい帰省しそびれちゃって」

「ついついで済まされる長さじゃないよ?おばさん達もきっと寂しがっとるよ」

「うーーん。だってさー、しょっちゅう彼氏ぐらいおらんと?結婚はまだなん?勇里の所は3人目が出来たんだぞって。ハッキリ言ってうんざりっちゃん」

こんなテンプレな台詞を私が言う日がくるとは思ってもみなかった。

私が地元で働いていた頃から、既に私の周りでは結婚や妊娠の話が出始めていて。

結婚することが当たり前、世間体があるから…なんて田舎の常識なのか、そこにしか価値を見出せないなんて、その頃の私には考えられなかった。

だから、こっちに逃げてきたかった気持ちが多少なりともあった気がする。

「確かにね。でも、おばさんが言うことも分かるっちゃん。だって、あともう少しで30歳ばい?誰か良い人はおらんと?」

「今の時代30で結婚してない人なんてザラにおるやん!彩花までそんな事言わんでよー!もう私、絶対結婚なんかせんけんねー!」

「アハハ!ごめん、ごめん。こればっかりはタイミングやもんね」

初恋なんて99%叶わないっていう私の統計は出ているのに、恋愛漫画でしか叶わないはずの初恋を実らせ、きちんと結婚までしたこの2人の出会いを運命と言わずして何というんだろう。

"初恋×運命は恋愛漫画"をリアルで体現した2人。

正直、順風満帆な人生が羨ましい。
それに比べて私なんて、明日の予定も仕事だけだ。

「健一と話す?もうそろそろ仕事から帰ってくると思うっちゃけど」

もうそんな時間かと窓の方に目をやれば、レースカーテンの向こうにはオレンジ色の空が広がっている。

学生時代は1日があんなに長く感じたのに、最近は1日が一瞬で過ぎていく。

これといった刺激もなく淡々と過ぎていく日々に、これじゃあ、何の変化もないままあっという間に40代まで突入しそうで…怖っ、と一人で身震い。

「いや、いいや。どーせ彩花と同じ事を言われるのが目に見えとるもん」

十数年前の失恋をいまだに引きずってはいない。
もちろん二人が憎いとも思わない。

だけど、彩花と私。
なぜ、こうも違うのか?
何が違うのか?

まるで真逆の人生を背中合わせで突っ走している私達。


「ほんと似た者夫婦よね。そのうち顔も見分けがつかんくなるっちゃない?」

「そんな訳ないやろ。どうする?私があんな吊り目になったら?怖いやろ?」

彩花の遠慮ない発言に、健一くんの鋭い眼光を思い出し爆笑する。

「確かにあーなったら怖いな。健一くんって優等生なのに、あのヤンキーみたいな見た目でだいぶ損はしとるよね」

「そうそう。中学生の頃から身長も1番高いしね」

「彩花と親友じゃなかったら、私、健一くんだけやったら絶対友達になっとらんやったよ」

「私も幼馴染じゃなかったら近付いてすらないと思う」

それでも大親友の彩花と私。

全く違う人生を歩んでいる二人だけど、彩花とならば笑い話にかえられる。

「って、呑気にこんな話をするために電話したんやないんよ!聞いてよ彩花!私、砂東くんに会ったっちゃん!中3で一緒だったあの砂東くん!覚えてる??」

「フフッ、当たり前でしょ?健一の大親友だもん。今でも互いに連絡を取り合ってるよ」

ここまでは想定内だ。
彩花の驚く表情を想像するだけで、自然と顔がニヤける。

「それでね、その砂東くんと明日から私のいるお店で一緒に働く事になってさ!ビックリせん?!」

「2人、やっと会えたんやん!杏、良かったね!」

彩花の驚く声を内心ワクワクしながら期待したのに、まさかの予想外の返答に思わず「へ?」と一言。

頭が真っ白な私の次の言葉を待たずに彩花は話を続ける。

「一目で春希くんって気付いた?元々かっこよかったけど、更にかっこよくなっとったやろ?私達も春希くんとも随分会ってないけん、また4人で集まりたいね!」

「えっ、えっ?!何で?!!ちょっと待ってよ?!彩花は砂東くんが私の会社におる事知っとったと?!」

「うん。」と、これぞ混じりっけのない正真正銘純真無垢な彩花の返事に、言葉を失った私の口はパカーンと閉じないままだ。

「どーゆー経緯かは忘れちゃったけど、何年か前に杏と同じ会社の本社勤務になったって事までは健一から聞いて知っとるよ」

うろ覚えの情報でも私が驚くには充分すぎて。

「えー!!なんそれ?!何でもっと早く教えてくれんやったと?!」

「んーーーーーーーーーーーーーーーーー。サプライズ…的な?」

色んな答えを期待したのに、長く考えた末のシンプルな言葉に私が納得する筈もなく。

「…サプラ…イズ?…え…どこが?あのっ、」

お互いの認識違いのサプライズの意味を正そうと「あのね、」と発そうとした所で、電話の向こう側で子供達の泣き声が聞こえ始め。

「ごめーん!喧嘩が始まっちゃった!もう電話きるね!じゃあ、またね!いつでも連絡して!」

サプライズだけされて後は放置?

すでに切れてしまっている携帯電話を呆然と眺めるしかない。

「雑なネタバラシだし、砂東くんは元々カッコ良くはなかったでしょ……」

腑に落ちないサプライズに、すっきりしない気持ちのまま私の休日は過ぎて行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚活に疲れたアラサーOLの私、癒やし的存在の弟分(高校生)に「もう待てない」と外堀を埋められています ~10年分の執着は、甘すぎて重すぎる~

ダルい
恋愛
「29歳? 子供産むならもっと若い子がよかったな」  中堅企業で働く早川結衣(29)は、婚活市場における年齢の壁と、デリカシーのない男たちにすり減らされる日々を送っていた。  そんな結衣の唯一の癒やしは、マンションの隣に住む幼馴染の高校生・瀬戸湊(16)。  両親が共働きの彼に代わって、幼い頃はお世話をしてあげていた……はずが、いつの間にか立場は逆転。 手料理を振る舞われ、愚痴を聞かれ、マッサージまでされる始末。「湊がお嫁さんならいいのに」なんて冗談を言っていたけれど。 「今の結衣姉が一番綺麗だよ。……早く、誰も手出しできない『おばさん』になってくれればいいのに」  可愛い弟分だと思っていた彼が、時折見せる『オス』の顔。 16歳の高校生と、もうすぐ30歳のアラサー。  13歳差の常識と理性に抗いながら、生意気な年下男子に外堀を埋められていく、甘くて重い現状維持(ラブストーリー)。 「俺が大人になるまで、誰とも結婚しないで」 癒やされたいすべての女性に贈る、最強の年下幼馴染による溺愛包囲網、開始。

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

珈琲とチョコレート

あすもすあ
恋愛
某食品卸会社に勤務する若い男女のほのぼのラブストーリーです。 中川彩夏 (なかがわあやか)(28)ボーカロイド・ココモ世羅が大好き。水星フーズ株式会社 マーケティング部 企画課所属。彼氏いない歴イコール年齢。黒髪ロングヘアー。見た目はクール系美人。話すと人懐こく親しみやすい。てきぱきこなすが詰めが甘くおっちょこちょい。ちょっと天然。色恋沙汰に関してはかなりずれている。家事・掃除大好き女子。好きな食べ物はチョコレート。163cm、52㎏。 森重智也 (もりしげともや)(27)水星フーズ株式会社 営業部 第二営業課。中途採用1年目。ドライブと飲み会と一人キャンプが趣味。今時ツーブロックの犬顔系男子。営業部ゆえ人当たりがよく人の懐に入るのがうまい。オンとオフの落差が激しい。休日は二日酔いで寝ているか外出しがちで家が汚い。掃除できない男子。好きな食べ物は肉料理。175cm、68kg。 よろしくお願いします。

ワケあり上司とヒミツの共有

咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。 でも、社内で有名な津田部長。 ハンサム&クールな出で立ちが、 女子社員のハートを鷲掴みにしている。 接点なんて、何もない。 社内の廊下で、2、3度すれ違った位。 だから、 私が津田部長のヒミツを知ったのは、 偶然。 社内の誰も気が付いていないヒミツを 私は知ってしまった。 「どどど、どうしよう……!!」 私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?

ひとつの秩序

水瀬 葵
恋愛
ずっと好きだった職場の先輩が、恋人と同棲を始めた。 その日から、南莉子の日常は少しずつ噛み合わなくなっていく。 昔からの男友達・加瀬透真は、気づけばやたら距離が近くて、優しいのか、図々しいのか、よく分からない。 好きな人が二人いるわけじゃない。 ただ、先輩には彼女がいて、友達は友達の顔をしなくなっていく。 戻れると思っていた関係が、いつの間にか戻れなくなっている。 これは、仕事も恋もちゃんとやりたいのに、だいたい空回りしている大人たちの、少し不器用なラブコメディ。

ネカフェ難民してたら鬼上司に拾われました

瀬崎由美
恋愛
穂香は、付き合って一年半の彼氏である栄悟と同棲中。でも、一緒に住んでいたマンションへと帰宅すると、家の中はほぼもぬけの殻。家具や家電と共に姿を消した栄悟とは連絡が取れない。彼が持っているはずの合鍵の行方も分からないから怖いと、ビジネスホテルやネットカフェを転々とする日々。そんな穂香の事情を知ったオーナーが自宅マンションの空いている部屋に居候することを提案してくる。一緒に住むうち、怖くて仕事に厳しい完璧イケメンで近寄りがたいと思っていたオーナーがド天然なのことを知った穂香。居候しながら彼のフォローをしていくうちに、その意外性に惹かれていく。

恋とキスは背伸びして

葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員 成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長 年齢差 9歳 身長差 22㎝ 役職 雲泥の差 この違い、恋愛には大きな壁? そして同期の卓の存在 異性の親友は成立する? 数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの 二人の恋の物語

卒業まであと七日。静かな図書室で,触れてはいけない彼の秘密を知ってしまった。

雨宮 あい
恋愛
卒業まであと七日。図書委員の「私」は、廃棄予定の古い資料の中から一冊の薄いノートを見つける。 「勝手に見つけたのは、君の方だろ?」 琥珀色の図書室で、優等生な彼の仮面が剥がれ落ちる。放課後の密室、手のひらに刻まれた秘密の座標、そして制服のプリーツをなぞる熱い指先。日曜日、必死にアイロンを押し当てても消えなかったスカートの皺は、彼に暴かれ、繋がれてしまった心と肉体の綻びそのものだった。 白日の下の教室で牙を隠す彼と、誰にも言えない汚れを身に纏う私。卒業証書を受け取る瞬間さえ、腰元に潜む「昨日の熱」が私を突き動かす。 清潔な制服の下で深まっていく、二人にしか分からない背徳の刻印。カウントダウンの果てに待つのは、残酷な別れか、それとも一生解けない甘い呪縛か――。

処理中です...