願えば初恋

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◇アイツの彼女◇

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「まさにそれなんだって。若林ちゃんってね、怒ってる時に掃除し出すの。掃除に集中すると気が紛れるんだって」

「だから今も掃除してたのか?!だったらこの状況が今まさになんじゃね?!」

ヤバい!と、砂東フロア長と2人、口に手を当て目を見開き。

「もしそうだったら怖いから、砂東フロア長が確認してくんない??!」

「え?!お前のが長い付き合いなんだろ!それならお前が聞くべきだって!」

肘でお互い小突き合い。

「やだよ!もし怒ってる原因が泥々した女同士のいざこざだったらどうすんの?!」

「それなら尚更だろうが!男が変に首突っ込まない方がいいだろ?!」

砂東フロア長の浅い考えに、思わず鼻でフンと笑う。

「砂東フロア長はまだまだ青いなぁ。そういうのは、男の人を介した方が落ちつく場合もあるんだよ?知らんけど」

「なら無責任な事言うなよ!余計ぐちゃぐちゃになって俺まで巻き込まれたらどーすんだよ?!」

「自分の保身だけ大事なの?!」

「お前もだろ?!」

「もぉーー!せっかくフロア長としての成長のチャンスを与えてやってるのにさー!女性同士のいざこざを解決出来てこそ、一人前のフロア長になれるってもんよ?」

「フロア長になってまだ5日だぞ?!そんな最上級の無理難題押し付けてくんなよな?!」

「えーー!仕方ないなー!じゃあここは、2人で聞いてみよっか??それなら公平でしょ?!」

「そうだなっ。妥協点はそこしかねーな。それじゃあ…」

「若林ちゃん。」「若林さん。」

話しの折り合いがついた所で2人同時に振り返ると、そこには仁王立ちの若林ちゃんの姿があり。

「2人でいつまでいちゃついてんのよ!そんな時だけ結託しないの!!子供の作戦会議じゃないんだからさぁ~」

言いながら笑っちゃってる若林ちゃんにホッとする。

「へへ、ごめんね」

「ハハ、すいません」

たまにちょっぴり怖いけど、若林ちゃんがいるだけで雰囲気が和む。

「フフッ。もー、全く。仲が良いんだか悪いんだか」

29歳の大人3人、目が合い苦笑いだ。

「あ、そうだった!」

私の突然の大きな声に、驚く2人の視線は私に集中。

「何だよ、急に?!」

「何~?!甘味ちゃん?!びっくりするでしょー!」

そんな事はお構いなしに、シフトの入れ違いやらで久しぶりに会った若林ちゃんに"聞きたい事"があったんだと私は話し出す。

「あのさ!平岡くんから聞いたんだけど、明日の歓迎会はこれるんだってね!良かった!楽しみにしてるね!」

「そうそう!そうなの!!無理かなと思って不参加にしてたんだけど、旦那が早く帰ってきてくれるって!久しぶりに甘味ちゃんと飲めるね!私も楽しみだよ!」

「お酒も飲めるんだ!やった!」

若林ちゃんが飲み会に参加するのは何年振りだろう。

オープン当初は今よりも同年代の同僚がたくさんいて、お店全体でも仲良しグループでも、頻繁に飲み会が開かれていて。

「甘味ちゃんには到底付き合えないけど、程々にならね」

「2人とも仲良しなんだな。」と砂東フロア長。

「甘味ちゃんとは、ここがオープンしてからの付き合いですからね。歓迎会の時にでも、甘味ちゃんの昔話しを聞かせましょうか?」

「え?!マジで?!めっっっちゃ聞きたい!!」

聞かれたくない話なら山ほどある。
その全てを知りつくす若林ちゃんの提案に焦りしかない。

「やめてよね!!余計な話ししなくていーから!若林ちゃん、時間大丈夫?!」

「あ!やばい!!もう休憩時間終わっちゃう!もう行くね!」

若林ちゃんが去った後、急に静まり返った休憩室に2人とり残され。
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