王様とただのおっさん。 入れ替ったら断頭台でした。異世界はキャットGPTとともに。

第4章 ミシディア共和国

ミシディア共和国科学大臣フェルマン09

　わたしたちはニャールとの会談に望む。
　こちらは敗軍だ。
　かなり厳しい待遇となるのだろう。
　こちらから仕掛けた戦争だし、完敗なのだ。
　いきなり首を斬られても文句はいえない。

　わたしは自国の科学を過信していた。
　ミシディア以外の国は未開の野蛮人の国と見下していた。
　今回もミシディアの新兵器によって簡単に制圧できると思っていた。
　しかし、簡単に制圧されたのは我々のほうだった。
　それもまったく歯がたたなかったのだ。

　わたしがここに来たのは、ニャールの兵器がどうやって作られたの知りたいということもあった。
　できるなら、あの戦車や水中砲の発明をした者に会いたい。
　そして、その仕組みを知りたい。
　まあ、ここにはいないのだろうが、せめて戦車の中を覗いてみたい。
　そう思っていた。

　まず、会談の場に入ると、中央にはみたことのある男。
　さえない初老の男だが、頭には王冠をかぶっている。
　あれはニャルロッテ王だ。
　なぜ、こんなところへ。
　それに猫を抱いている。
　どういうことだ。
　
　王はわれわれを笑顔で迎え、席につかせる。
　それから、厳しい口調でこの戦争を起こしたことを責める。
　だが、それだけだった。
　我々は捕虜として、国際法に基づいた身分の保証を受けることを告げる。
　あと、わたしたちの名前と階級を確認し、ミシディア側に伝えるということ。
　戦争の集結に向けて協力をしてほしいということ。
　そういうことを事務的に話す。
　我々は紳士的な扱いを受ける。
　そういえば拘束もされていない。

「それではあとは食事でもしながら、話しましょう。
　戦場なのでたいしたものは用意できませんが」
　キャルロッテ王はそう言って、部下に合図をする。
　我々の前に簡単な食事が運ばれてくる。

　わたしたちは現在の情勢について話をする。
　別に隠すことはない。
　わたしの知っているかぎりの情報は話した。
　どうせこれだけの戦力差だ。
　作戦でどうこうなるものではない。
　技術の差は誰よりもわたしがわかっている。
　わたしは向こうにも一番知りたいことをぶつける。

「それで、この戦車を作ったのは誰ですかね。
　できれば会って話をしたいものです」

「それは、この子ですよ」
　キャルロッテ王は膝の上の猫を撫でる。
　ニャール王国最大の秘密というわけか。
　食えないなこのおやじ。
　わたしは王のつまらないジョークに不覚にも笑ってしまうのだった。