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第3章 隠者ブラックウッド

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 ファイアーボールは猫ちゃんに向かっていく。
 しかし、猫ちゃんは反応しない。
 ただ、目でファイアーボールを追っているだけ。
 そして、近くまでファイアーボールがくると。

 にゃん。
 それに飛びつく。
 いや、それってボールとかじゃない。
 触ったら駄目なやつ。
 やっぱり、魔法猫と言っても猫なのか。

 ただ、ファイアーボールは猫パンチで跳ね返される。
 えっ?魔法を跳ね返すだって?
 ありえない。
 魔法はバリアで防ぐことができても、跳ね返すことはできない。
 しかし、そのファイアーボールはすごい勢いでこっちに戻ってくる。
 わしは、それをバリアで防ぐ。

 すごい、魔法は使えないっていうが、これは魔法だ。
 猫ちゃんを覆う光、あれは魔法をまとっているのだ。
 それに、その術式がわからない。
 我々の魔法と違って術式が見えないのだ。
 これは、術式を書き換えて破ることはできない。
 
「あそぶにゃん?」

 いまのは遊びなのか?
 いいだろう。
 わしは自分の最強の炎魔法を構築する。
 いままでは練習でしか使ったことがない魔法。
 A級の魔法にいろいろと付け加えていく。
 これだけの構築時間が必要な魔法は実戦では使えない。
 それにわしなら相手がこんな魔法を使うのなら邪魔する手はいくらでもある。
 猫ちゃんは香箱座りになってそれを見ている。
 二本の尻尾だけが左右に揺れている。
 
 魔法の発動だ。
 空に3つのオレンジのリングが浮かび上がる。
「ファイアーストライク!」
 わしが詠唱すると、一番上のリングから炎の柱が落ちてくる。
 それは2つ目のリングを通るとより輝きを増す。
 そして3つ目のリングを通り、猫ちゃんのところへ。
 猫ちゃんはそれを見上げて、跳ぶ。

「にゃん」
 そう言って猫パンチをする。
 もしかして、あれにじゃれているのか。
 無理だ。いくらなんでも。

 猫ちゃんのパンチは炎の柱に当たる。
 そのまま、わしの魔法は崩れるように消えていくのだった。
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