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第4章 大商人グリフレッド

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 もちろんブラックウッドさんの許可は得ている。
 ブラックウッドさんは、この薬を広めてほしいとわたしに頼んできたのだ。
 ブラックウッドさんも貴族や軍隊が回復薬を独占している状態を危惧していたのだ。
 薬というものはみんなを直すためにあるというのだ。
 決して戦争の道具なんかではない。
 だから、安価な薬を流通させてほしいと。
 なんなら、製法を広めてもいいというのだ。
 だけど、今はそういう段階ではない。
 とりあえず、ドラの町の商会であるニャンコロッド商会を大きくすること。
 それによって、薬の価格をさげることができるのだ。
 つまり、わたしが価格支配権をもてばいい。
 そういうことだ。

「それなら10本、いや20本だ」

「ありがとうございます。
 2本おまけしときますね」
 わたしは22本の回復薬を袋に入れる。

「こっちも20本だ」
「そんなに効くのか。とりあえず1本」
 いきなり忙しくなる。
 
「この剣はなんだ」

「よろしければ手に取ってください」
 ドラの町の名工の作です」

「ドラの町?きいたことがないな。
 まあ、作りは良さそうだ」
 そう言って冒険者が剣を手にする。
「えっ、これはかなりの業物だ。
 銘は…ホルスの作じゃねえか?
 この町いちばんの鍛冶の…まさかな…
 あいつは死んだって聞いている」

 ホルスさんってそんなすごい人だったんだ。
 この剣がすごい剣だっていうのは、素人のわたしにもわかるけど。
 
「いくらだ」

「金貨5枚です」
 ホルスさんのつけた値段だ。
 納得のいく出来ではなかったみたいだ。
 いわば失敗作。

「えっ。これは金貨10枚はするぜ。
 もし本当にホルスの作だったら、その倍は軽いぜ。いいのか」

「いいですよ」

「買った!」
 冒険者は袋から金貨を取り出し、わたしに渡すのだった。
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