前世は拾われた猫だったので。転生したら人間を拾っています。

PYON

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第5章 ランドバルク王国王女イグレーヌ

イグレーヌ09

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 たぶん、この動きは猫ちゃんのエンチャント魔法か。
 バリアだけじゃなくて、すごい子だ。
 この強化魔法というのは、魔法の中でも超高等なものだ。
 魔法といえば火の玉、氷の塊、竜巻、雷。
 そういった派手な攻撃魔法が重宝される。
 しかし、本当にすごいのは、そういう魔法ではない。
 仲間を強化する魔法、敵を弱体化する魔法、回復を促す魔法。
 そういう地味な魔法だ。

 こういう魔法は魔力をあんまり使わないし、はずす可能性が低い。
 いくら威力の大きな魔法でも、避けられたら意味がないのだ。
 それに威力の大きな魔法ほど当たらないのだ。
 
「もう、負ける気はしないぜ。
 なあ、相棒」
 ランスロットは猫ちゃんに話しかけて笑う。
 もしかして、この人遊んでるの?
 本当にすごいのか子供なのかわからない人だ。
 今でも斬ろうと思ったら斬れたのに、今の状況を楽しもうとしている。
 この底抜けの明るさがランスロットの長所でも短所でもある。

「うごくな」
 わたしの後ろから声。
 いつの間にかわたしを黒装束の男たちが囲んでいる。
 もしかして、こいつらは凶人。
 ランドバルク王国の隠密部隊だ。
 闇に隠れて、仕事をする。
 相手は黒騎士だけじゃなかったんだ。
 これはわたしのミスだ。
 ごめん。これで終わり。
 凶人の主な仕事といえば、暗殺。
 こうなってしまうと、私が殺されておしまいだ。
 まさか、黒騎士意外にこいつらがいることはわからなかった。
 こいつらは黒騎士のように名誉を重んじない。
 殺すとなったらすぐに殺す。
 それが闇に生きる仕事人だ。
 ランスロットはもちろんランスロットの方に向かってしまったエヴァンスも戻れない。
 わたしの喉笛を掻き切ってそれで終わり。
 一秒で済む。
 それなのに終焉は訪れない。
 そういえば、死ぬ前ってなんかストップモーションになるって聞いたことがある。
 それがこの感覚?
 もう、わたしは死んでいるのかもしれない。

 にゃあ。
 え、いつの間にか足元に猫ちゃんがいる。
 いままで、ランスロットの肩にいたはず。
 もしかして、二匹いるの?
 ランスロットの肩を見るともう猫ちゃんはいない。

「なんだ、これ?どうなってるんだ」
 凶人はわたしの首に小刀を当てている。
 それなのに、わたしの首に傷ひとつつけることはできないのだった。
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