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綺麗な世界とおじさん
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-草原-
晴れ渡る空の下、草原に一つぽつんと生えている小さな木の下で二人の少年が寝ていた。
「おい!」
声が頭に響く。
「なんだよ……まだ寝むいんだよ」
声をかけられたにもかかわらず、そのまま二度寝をしようとしたのはヒノ・キョウヤ。
「何言ってんだ、こんなとこで寝てたら死ぬぞ」
物静かな真面目な声で言われてようやく、ヒノは起き上がる。
「あいつらが来たのか?」
奴らが資源を奪いにきたのかと思ったがどうにも違った様子だった。目を開くとそこには雲一つない青空と緑一面の草原と知らない筋骨隆々のおっさん。おっさんは中腰でこちらを覗いていた。
「誰だ……?俺達の空船は?」
状況が理解出来ず険しい声で言うヒノ。
「やっと起きたか。俺はそこのガーデンに住んでるラルナーだ。お前ら何でこんなところで寝てる?親はどうした?」
知らない単語と質問攻めで頭が更に混乱するヒノ。
「いや、ここって?」
「そっちの奴は知り合いか?」
ヒノはラルナーに指さされた方を見る。そこにはもう一人の少年。シロガネ・ヤマトが気持ちよさそうに寝てた。
「……」
寝ている男は子供の頃からヒノ・キョウヤと付き合いがあり、数多くの戦場を共に戦った言わば腐れ縁だ。
「おい、起きろ」
少し強めにシロガネのケツを右手で叩くヒノ。
「イッテェな!お前何すんだよ!」
勢いよくシロガネが飛び起き、ヒノの顔を睨みつける。寝てる時に起こされる不快さはヒノが一番知っている。
「悪いな。落ち着けって、緊急事態なんだよ」
目の前にいるおっさんに聞かれないようにヒノがシロガネの耳元で聞かれないように喋る。
「緊急……?」
シロガネはあたりを見渡し、おっさんと周囲の景色に気がつく。
「どうやら知り合い……みたいだな」
呆れた顔でため息をつきながら中腰から立ち上がるラルナー。
「誰だこのおっさん?というより俺達の空船は?」
シロガネも状況が理解出来ず、疑問をとりあえず口にするしかなかった。
「はぁ、二人揃っておっさん言いやがって。まぁいい、とりあえず俺の家に来い。ここじゃいつ獣に襲われるかわかんねぇからな。歳は?17くらいか?」
「何言ってんだあんた?俺の仲間に何かしてないだろうな?」
何もかも異常事態だ。当然目の前の人物を疑うしかない。シロガネはラルナーに敵意を向ける。
「おい、落ち着けよ。この青空見てみろよ。明らかに世界規模でおかしい」
「あぁ?え?なにこれ?……」
ヒノの言葉を聞きシロガネはパニックになるが直ぐに落ち着きを取り戻た。ヒノ達のいた世界は青空が存在しない世界。だが今いる世界はその真逆だ。
「とりあえずここはこの人について行くか。現地人ぽいしな」
「そうだな。まぁ雰囲気的に悪人ではなさそうだし」
覚悟を決めた二人はラルナーについていくことにした。ラルナーは馬車の操縦席に座り手綱を握る。二人は渋々後ろの荷台に乗り込む。
「よし、出発するぞー」
「なんだこの生き物」
「さぁ?」
ヒノとシロガネが後ろから珍しい物を見るように馬を見る。二人のいた世界にはいなかった生き物だからだ。
「!?」
「!?」
走り出した馬は予想外なスピードをだした。思わず周りの物ににしがみつく二人。
「なんだよこれ!」
シロガネがヒノに疑問をぶつけるがヒノが真理を知る筈もなく。
「知らねえよ!」
錯乱する二人、それでも馬車の速度は変わらず爆進した。
-ホットガーデン・門前-
周りの景色も確認しながら進んでると大きな壁と門のような物が見えてきた。
「おーい開けてくれ!」
門の前でラルナーがそう言うと、壁の少し上にある窓があき、人の顔が現れた。
「ラルナーさんお疲れ様です。成果はどうでした?」
ラフな格好をした土方の兄ちゃんみたいな人が現れラルナーに聞く。
「まぁまぁだな」
「そりゃ良かった! ちょっと待っててください!」
嬉しそうに門番が言う。二人が話してるうちに門が上がり、下をくぐり抜け、ゆっくり進む馬車
「すごい原始的だな。俺らが通ってる最中に落ちてきたらどうすんだよ」
鎖が引っ張られて門が上に上がる仕組みに少し恐怖を感じるヒノ。
「おい、キョウヤ見てみろよ」
シロガネに言われて真正面を見るヒノ。そこにはヒノ達がいた世界ではありえない街並みが広がっていた。レンガや木で出来た家。水が流れる水路。家に絡みつくツタ。
「おぉ……すご」
不安と感動が混じった声を思わず出すヒノ
-ラルナーの家-
街並みに圧倒されていたヒノとシロガネは、気づいたらラルナーの家に着いていた。
「どうした、さっさと降りて入っていいんだぞ」
馬車から降りてとりあえず家に入る二人。木造の家。慣れない雰囲気に二人はソワソワする。ラルナーに少し休んだほうがいいと言われて空き部屋に案内された。空き部屋にはベッドが二つ窓からは外の景色がよく見える。
「なんかさ、凄いな」
突然の出来事にシロガネの思考回路が動かくなっていた。
「お前、あそこで寝ていた前の記憶はどこまである?それにこの体」
ヒノは自分の体を確認しながら質問する。記憶が正しければ歳は26になったくらいだとおもうが、今のヒノとシロガネの姿は16くらいに見えた、
「マイナス10歳ってとこか?昨日はお前とガラクタ漁りしてたよな?」
「記憶は俺と同じか」
二人とも同じくらいな間の記憶が飛んでいる事を認識する。
「これからどうするかなぁ」
ヒノがベットに横たわりながら考える。
「空船の奴らは無事なのか……?」
「俺らがここに居るなら皆んなもきてるんじゃ?」
ヒノが疑問を口にしシロガネが仮説を立てる。
「皆んな若返ってか?そうなるとメイとか赤ちゃんになってるぞ」
冗談混じりにヒノがシロガネに言うとヒノは一つ行動を起こす決意をする。
「あのラルナーって人に聞いてみるか」
ポツリと呟くと、丁度ラルナーが扉越しに声をかけてくれた。
「おーい飯作ったからお前らもどうだ?」
とりあえず二人ともお腹が減っていたのでご馳走されることにした。合成食品ばかり食べていたヒノとシロガネは美味しさに感動した。
「ありがとうございました」
「助かりました」
とりあえず感謝を言葉にするヒノとシロガネ。
「そんでお前ら、どこからきた?」
いままで気にしてなかったが言葉は通じる。
「何も覚えてなくて。最後に覚えてるのは、えーと……そうだ、俺たちの寝てたところにデカイ船なかったですか?」
「船って海にあるもんだろ?陸地にあるわけねぇだろ」
「いや空を飛ぶ方なんだけど……」
ヒノの話を聞いたラルナーは少し沈黙し次にはヒノを哀れむような視線を送ってきた。
「そうか……まぁ詮索はしないでおく。色々大変なことがあったんだろうな」
「(このおっさん俺の事、頭おかしい奴だと思ってるだろ)」
ヒノはシロガネに視線を送り別の作戦に切り替える。一旦諦めてとりあえずここの世界に馴染む。ヒノの仲間達も自力で何とかする力はあるはずだ。少し間をおいてラルナーが口を開いた。
「お前らしばらくここに泊まっていくか?」
突然ラルナーからとても美味しい言葉が放たれた。
「いいんですか?俺ら何も持ってないですけど」
シロガネが戸惑いを隠せず再度確認する。
「あぁ、ちょうど部屋が空いてるからな」
「おぉ!ありがとうございます!やったなキョウヤ!」
「そうだな(あまりにも話が美味すぎる。お人好しなのか…それとも)」
今はこの世界に精通した信頼できる人が必要だ。とりあえずこの人は悪い人ではない。今のヒノはそう判断した。
「ただし雑用とかはやってもらうからな」
少し嬉しそうにそう言うラルナー
「大丈夫です。何もしないなんて逆に気持ち悪い」
数ヶ月後
-ラルナーの家-
ラルナーに助けてもらってから数ヶ月、この街(ガーデン)のことをだいたい教えてもらいながら二人は家の家事全般に勤しみ、徐々にここの生活に慣れてきた。
「ビックリするほど平和だな。食べ物は美味いし。外の空気はうまい。空は青くて綺麗」
ヒノは洗い物を片付けながら隣にいるシロガネに語りかける。
「あぁ、夢なんじゃないかなって思うほどにな」
「思いっきり殴ってやろうか?」
「やめろっこの前やったばかりだろ」
あまりにも平和すぎて既に二人は平和ボケ状態になっていた。
「アイツらもこの世界を謳歌してるといいな」
「とりあえずこの生活に慣れるのが優先だ。俺たちの世界とは違いすぎる」
数ヶ月で教わったことで分かったことをまとめると。
この街に住んでる人の役割みたいなもので平民、貴族、教会で分けられてる。簡単に言うと平民が生活関連の牧畜や建設など。貴族が野外での食べ物採取や狩り、人間トラブル対応。教会は宗教と病院が合体した感じ、それらの役人が徒党を組み仕事をするギルド(会社みたいなの)がある。王様みたいなのはこのガーデンにはいないみたいだ。
そして一番重要なのが異能と呼ばれる力、これの強さで平民、貴族のどちらかに属することになるかがほぼ決まる、この異能は精神力って言われてもよくわからないが、意思によって強さや性質がかわる、怒りとか憎しみとかがわかりやすく、単純に破壊能力が上がる。あと身体能力がありえないほど高くなってる。これについては異能関係なく、この世界の人全員が共通だ。
そしてこの異能、実はヒノ達も使える事が最近分かった。そんなこんなでラルナーさんが俺たちをこのガーデンにある学園に入れると言い出し、それまで家事を手伝うことにした俺とヤマト。ついでにどうやって異能を使えるようなったかだが。
-少し前の日 空き地-
「よく見てろよお前ら」
ラルナーは腕に装甲を生成し纏う。ヒノとシロガネはラルナーに異能の使い方を教えてもらっていた。
「えぇ……」
「すご」
ヒノとシロガネは魔法のような力を前に困惑と興奮をあらわにする。
「お前らもやってみろ」
「やるって言ったって」
ヒノは自分の手の平を見ながらつぶやく。
「そうだなまず自分の使いたい武器とか何でもいいから想像してみろ」
「使いたい武器」
ラルナーの言葉でヒノは武器を想像する。
「武器っていったらあれか」
シロガネが思いついたように集中し始める。ヒノ達とっての最強の武器。それは戦闘装甲。いわゆるパワードスーツである。
「そんな簡単に━━」
そう思っていたヒノだがすぐに口が閉じた シロガネの両足には装甲が生成され、空中に二つの盾が生成され浮遊する。
『鳴神』
「なんかできたわ」
「お前が使ってた奴よりだいぶショボくなってんな。というかどうやって盾浮かしてんだ。」
シロガネが使ってた戦闘装甲、鳴神と比べてお世辞にも装備が貧弱すぎた。
「なんかもっとやろうとすると脳が焼き切れそうな感覚になってさ」
「何だそれ怖いわ」
シロガネの例えを聞きヒノは少し躊躇する。
「おぉやるじゃねぇか。無理に色々創ろうとするなよ。最悪気絶しちまうからな、少しずつ慣らしていけばいいんだ」
「き、気絶!?」
ラルナーが一発で異能を使うシロガネの肩を叩きながら褒める。
「そういうことなら俺も」
想像する。ずっと一緒に戦い抜いてきた武器の形を。
『迦具土神』
するとヒノの両手から上半身の背中当たりまで装甲が生成され、背中には二つのバーニアのようなものが生成された。
「凄いな。まさかここまで形になった奴を出しやがるとは」
ラルナーは少し驚いた様子だった。そんなラルナーを気にも止めず二人は動作チェックをする。関節がちゃんと曲がるのか装甲の隙間はどれくらいあるのか。一通りチェックし終えた後シロガネが口を開いた。
「これが俺の戦闘装甲のイメージを具現化したならさ」
シロガネの両脚装甲から突然雷が溢れ出し地面に雷痕を残した。それにシロガネは満足気な顔をする。
「いい感じだな」
「じゃあその盾試してみろよ」
ヒノはシロガネに向けて右掌を広げるとそこから炎が収束し炎の弾を創り出す。それをシロガネに発射。浮遊してる盾は自動的にシロガネの前に移動し、炎弾を弾くと同時にシロガネはほんの少し後ろへ押される。
「お前の盾で防いでも衝撃はお前自身に伝わるのか」
「踏ん張ればな。踏ん張らなかったら盾が吹っ飛ぶだけ」
「炎と雷………」
「ん?どうしたのおじさん?」
「ん…?いや何でもない。ちょっと飲み物とってくるから適当に練習してていいぞ」
そういうとどこかへ行ってしまった。ラルナーは少し様子がおかしいと感じた二人は心配そうに向き合う。
「お前の電撃が当たったんじゃねぇの?」
「当ててねぇよ」
-草原-
晴れ渡る空の下、草原に一つぽつんと生えている小さな木の下で二人の少年が寝ていた。
「おい!」
声が頭に響く。
「なんだよ……まだ寝むいんだよ」
声をかけられたにもかかわらず、そのまま二度寝をしようとしたのはヒノ・キョウヤ。
「何言ってんだ、こんなとこで寝てたら死ぬぞ」
物静かな真面目な声で言われてようやく、ヒノは起き上がる。
「あいつらが来たのか?」
奴らが資源を奪いにきたのかと思ったがどうにも違った様子だった。目を開くとそこには雲一つない青空と緑一面の草原と知らない筋骨隆々のおっさん。おっさんは中腰でこちらを覗いていた。
「誰だ……?俺達の空船は?」
状況が理解出来ず険しい声で言うヒノ。
「やっと起きたか。俺はそこのガーデンに住んでるラルナーだ。お前ら何でこんなところで寝てる?親はどうした?」
知らない単語と質問攻めで頭が更に混乱するヒノ。
「いや、ここって?」
「そっちの奴は知り合いか?」
ヒノはラルナーに指さされた方を見る。そこにはもう一人の少年。シロガネ・ヤマトが気持ちよさそうに寝てた。
「……」
寝ている男は子供の頃からヒノ・キョウヤと付き合いがあり、数多くの戦場を共に戦った言わば腐れ縁だ。
「おい、起きろ」
少し強めにシロガネのケツを右手で叩くヒノ。
「イッテェな!お前何すんだよ!」
勢いよくシロガネが飛び起き、ヒノの顔を睨みつける。寝てる時に起こされる不快さはヒノが一番知っている。
「悪いな。落ち着けって、緊急事態なんだよ」
目の前にいるおっさんに聞かれないようにヒノがシロガネの耳元で聞かれないように喋る。
「緊急……?」
シロガネはあたりを見渡し、おっさんと周囲の景色に気がつく。
「どうやら知り合い……みたいだな」
呆れた顔でため息をつきながら中腰から立ち上がるラルナー。
「誰だこのおっさん?というより俺達の空船は?」
シロガネも状況が理解出来ず、疑問をとりあえず口にするしかなかった。
「はぁ、二人揃っておっさん言いやがって。まぁいい、とりあえず俺の家に来い。ここじゃいつ獣に襲われるかわかんねぇからな。歳は?17くらいか?」
「何言ってんだあんた?俺の仲間に何かしてないだろうな?」
何もかも異常事態だ。当然目の前の人物を疑うしかない。シロガネはラルナーに敵意を向ける。
「おい、落ち着けよ。この青空見てみろよ。明らかに世界規模でおかしい」
「あぁ?え?なにこれ?……」
ヒノの言葉を聞きシロガネはパニックになるが直ぐに落ち着きを取り戻た。ヒノ達のいた世界は青空が存在しない世界。だが今いる世界はその真逆だ。
「とりあえずここはこの人について行くか。現地人ぽいしな」
「そうだな。まぁ雰囲気的に悪人ではなさそうだし」
覚悟を決めた二人はラルナーについていくことにした。ラルナーは馬車の操縦席に座り手綱を握る。二人は渋々後ろの荷台に乗り込む。
「よし、出発するぞー」
「なんだこの生き物」
「さぁ?」
ヒノとシロガネが後ろから珍しい物を見るように馬を見る。二人のいた世界にはいなかった生き物だからだ。
「!?」
「!?」
走り出した馬は予想外なスピードをだした。思わず周りの物ににしがみつく二人。
「なんだよこれ!」
シロガネがヒノに疑問をぶつけるがヒノが真理を知る筈もなく。
「知らねえよ!」
錯乱する二人、それでも馬車の速度は変わらず爆進した。
-ホットガーデン・門前-
周りの景色も確認しながら進んでると大きな壁と門のような物が見えてきた。
「おーい開けてくれ!」
門の前でラルナーがそう言うと、壁の少し上にある窓があき、人の顔が現れた。
「ラルナーさんお疲れ様です。成果はどうでした?」
ラフな格好をした土方の兄ちゃんみたいな人が現れラルナーに聞く。
「まぁまぁだな」
「そりゃ良かった! ちょっと待っててください!」
嬉しそうに門番が言う。二人が話してるうちに門が上がり、下をくぐり抜け、ゆっくり進む馬車
「すごい原始的だな。俺らが通ってる最中に落ちてきたらどうすんだよ」
鎖が引っ張られて門が上に上がる仕組みに少し恐怖を感じるヒノ。
「おい、キョウヤ見てみろよ」
シロガネに言われて真正面を見るヒノ。そこにはヒノ達がいた世界ではありえない街並みが広がっていた。レンガや木で出来た家。水が流れる水路。家に絡みつくツタ。
「おぉ……すご」
不安と感動が混じった声を思わず出すヒノ
-ラルナーの家-
街並みに圧倒されていたヒノとシロガネは、気づいたらラルナーの家に着いていた。
「どうした、さっさと降りて入っていいんだぞ」
馬車から降りてとりあえず家に入る二人。木造の家。慣れない雰囲気に二人はソワソワする。ラルナーに少し休んだほうがいいと言われて空き部屋に案内された。空き部屋にはベッドが二つ窓からは外の景色がよく見える。
「なんかさ、凄いな」
突然の出来事にシロガネの思考回路が動かくなっていた。
「お前、あそこで寝ていた前の記憶はどこまである?それにこの体」
ヒノは自分の体を確認しながら質問する。記憶が正しければ歳は26になったくらいだとおもうが、今のヒノとシロガネの姿は16くらいに見えた、
「マイナス10歳ってとこか?昨日はお前とガラクタ漁りしてたよな?」
「記憶は俺と同じか」
二人とも同じくらいな間の記憶が飛んでいる事を認識する。
「これからどうするかなぁ」
ヒノがベットに横たわりながら考える。
「空船の奴らは無事なのか……?」
「俺らがここに居るなら皆んなもきてるんじゃ?」
ヒノが疑問を口にしシロガネが仮説を立てる。
「皆んな若返ってか?そうなるとメイとか赤ちゃんになってるぞ」
冗談混じりにヒノがシロガネに言うとヒノは一つ行動を起こす決意をする。
「あのラルナーって人に聞いてみるか」
ポツリと呟くと、丁度ラルナーが扉越しに声をかけてくれた。
「おーい飯作ったからお前らもどうだ?」
とりあえず二人ともお腹が減っていたのでご馳走されることにした。合成食品ばかり食べていたヒノとシロガネは美味しさに感動した。
「ありがとうございました」
「助かりました」
とりあえず感謝を言葉にするヒノとシロガネ。
「そんでお前ら、どこからきた?」
いままで気にしてなかったが言葉は通じる。
「何も覚えてなくて。最後に覚えてるのは、えーと……そうだ、俺たちの寝てたところにデカイ船なかったですか?」
「船って海にあるもんだろ?陸地にあるわけねぇだろ」
「いや空を飛ぶ方なんだけど……」
ヒノの話を聞いたラルナーは少し沈黙し次にはヒノを哀れむような視線を送ってきた。
「そうか……まぁ詮索はしないでおく。色々大変なことがあったんだろうな」
「(このおっさん俺の事、頭おかしい奴だと思ってるだろ)」
ヒノはシロガネに視線を送り別の作戦に切り替える。一旦諦めてとりあえずここの世界に馴染む。ヒノの仲間達も自力で何とかする力はあるはずだ。少し間をおいてラルナーが口を開いた。
「お前らしばらくここに泊まっていくか?」
突然ラルナーからとても美味しい言葉が放たれた。
「いいんですか?俺ら何も持ってないですけど」
シロガネが戸惑いを隠せず再度確認する。
「あぁ、ちょうど部屋が空いてるからな」
「おぉ!ありがとうございます!やったなキョウヤ!」
「そうだな(あまりにも話が美味すぎる。お人好しなのか…それとも)」
今はこの世界に精通した信頼できる人が必要だ。とりあえずこの人は悪い人ではない。今のヒノはそう判断した。
「ただし雑用とかはやってもらうからな」
少し嬉しそうにそう言うラルナー
「大丈夫です。何もしないなんて逆に気持ち悪い」
数ヶ月後
-ラルナーの家-
ラルナーに助けてもらってから数ヶ月、この街(ガーデン)のことをだいたい教えてもらいながら二人は家の家事全般に勤しみ、徐々にここの生活に慣れてきた。
「ビックリするほど平和だな。食べ物は美味いし。外の空気はうまい。空は青くて綺麗」
ヒノは洗い物を片付けながら隣にいるシロガネに語りかける。
「あぁ、夢なんじゃないかなって思うほどにな」
「思いっきり殴ってやろうか?」
「やめろっこの前やったばかりだろ」
あまりにも平和すぎて既に二人は平和ボケ状態になっていた。
「アイツらもこの世界を謳歌してるといいな」
「とりあえずこの生活に慣れるのが優先だ。俺たちの世界とは違いすぎる」
数ヶ月で教わったことで分かったことをまとめると。
この街に住んでる人の役割みたいなもので平民、貴族、教会で分けられてる。簡単に言うと平民が生活関連の牧畜や建設など。貴族が野外での食べ物採取や狩り、人間トラブル対応。教会は宗教と病院が合体した感じ、それらの役人が徒党を組み仕事をするギルド(会社みたいなの)がある。王様みたいなのはこのガーデンにはいないみたいだ。
そして一番重要なのが異能と呼ばれる力、これの強さで平民、貴族のどちらかに属することになるかがほぼ決まる、この異能は精神力って言われてもよくわからないが、意思によって強さや性質がかわる、怒りとか憎しみとかがわかりやすく、単純に破壊能力が上がる。あと身体能力がありえないほど高くなってる。これについては異能関係なく、この世界の人全員が共通だ。
そしてこの異能、実はヒノ達も使える事が最近分かった。そんなこんなでラルナーさんが俺たちをこのガーデンにある学園に入れると言い出し、それまで家事を手伝うことにした俺とヤマト。ついでにどうやって異能を使えるようなったかだが。
-少し前の日 空き地-
「よく見てろよお前ら」
ラルナーは腕に装甲を生成し纏う。ヒノとシロガネはラルナーに異能の使い方を教えてもらっていた。
「えぇ……」
「すご」
ヒノとシロガネは魔法のような力を前に困惑と興奮をあらわにする。
「お前らもやってみろ」
「やるって言ったって」
ヒノは自分の手の平を見ながらつぶやく。
「そうだなまず自分の使いたい武器とか何でもいいから想像してみろ」
「使いたい武器」
ラルナーの言葉でヒノは武器を想像する。
「武器っていったらあれか」
シロガネが思いついたように集中し始める。ヒノ達とっての最強の武器。それは戦闘装甲。いわゆるパワードスーツである。
「そんな簡単に━━」
そう思っていたヒノだがすぐに口が閉じた シロガネの両足には装甲が生成され、空中に二つの盾が生成され浮遊する。
『鳴神』
「なんかできたわ」
「お前が使ってた奴よりだいぶショボくなってんな。というかどうやって盾浮かしてんだ。」
シロガネが使ってた戦闘装甲、鳴神と比べてお世辞にも装備が貧弱すぎた。
「なんかもっとやろうとすると脳が焼き切れそうな感覚になってさ」
「何だそれ怖いわ」
シロガネの例えを聞きヒノは少し躊躇する。
「おぉやるじゃねぇか。無理に色々創ろうとするなよ。最悪気絶しちまうからな、少しずつ慣らしていけばいいんだ」
「き、気絶!?」
ラルナーが一発で異能を使うシロガネの肩を叩きながら褒める。
「そういうことなら俺も」
想像する。ずっと一緒に戦い抜いてきた武器の形を。
『迦具土神』
するとヒノの両手から上半身の背中当たりまで装甲が生成され、背中には二つのバーニアのようなものが生成された。
「凄いな。まさかここまで形になった奴を出しやがるとは」
ラルナーは少し驚いた様子だった。そんなラルナーを気にも止めず二人は動作チェックをする。関節がちゃんと曲がるのか装甲の隙間はどれくらいあるのか。一通りチェックし終えた後シロガネが口を開いた。
「これが俺の戦闘装甲のイメージを具現化したならさ」
シロガネの両脚装甲から突然雷が溢れ出し地面に雷痕を残した。それにシロガネは満足気な顔をする。
「いい感じだな」
「じゃあその盾試してみろよ」
ヒノはシロガネに向けて右掌を広げるとそこから炎が収束し炎の弾を創り出す。それをシロガネに発射。浮遊してる盾は自動的にシロガネの前に移動し、炎弾を弾くと同時にシロガネはほんの少し後ろへ押される。
「お前の盾で防いでも衝撃はお前自身に伝わるのか」
「踏ん張ればな。踏ん張らなかったら盾が吹っ飛ぶだけ」
「炎と雷………」
「ん?どうしたのおじさん?」
「ん…?いや何でもない。ちょっと飲み物とってくるから適当に練習してていいぞ」
そういうとどこかへ行ってしまった。ラルナーは少し様子がおかしいと感じた二人は心配そうに向き合う。
「お前の電撃が当たったんじゃねぇの?」
「当ててねぇよ」
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