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本編

ノンレストガール2

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 (しまった!)
 と、思ってももうおそかった。
 すでになつき君がぐったりしている。
 昔から運動をするときの体力はあまりないのに買い物の時だと全然平気だった。
 やっぱり、4時間も休憩を入れずに歩き回ったのは失敗だった。
 勝手な想像だけどたぶんなつき君はこのカフェを砂漠のオアシスと同じように感じていると思う。
「お待たせいたしました。こちらキャラメルマキアートとパンケーキ季節のフルーツのせ。それと、アイスコーヒーとかブルーベリーレアチーズタルトになります。以上ですべてお揃いでしょうか」
「はい!ありがとうございます。サクラさん!」
 サクラさんは「ごゆっくりどうぞ」といって仕事に戻っていった。
 わたしたちは、いま当初(私が勝手に考えた)の計画通りパンケーキを食べに来た。
 しかも、サクラさんの実家の喫茶店にだ。
 ただ、さすがにこの状況ではしゃげない。もちろん、この喫茶店が騒ぐような雰囲気じゃないということもあるけどそれ以上になつき君があまりにもぐったりとしているので申し訳ない。
 とはいえ、パンケーキはすぐに食べてるけど。
「大丈夫かい、なつき君。氷持ってこようか?」
「すいません中仁さんお願いします」
 ん…なかひと?
 おじさんと同じような名前でなつき君の知り合いでいたんだ。世の中って不思議なこともあるんだ。
「どうせ、メイがあっちこっちに休憩もなしに連れまわしたんだろ」
「いえいえ、僕もさっきまでは楽しんでましたし」
 へえ、おじさんと声もそっくりだ。世の中には自分とそっくりな人が三人いるっていうけど声まで似ていて、しかも近辺に住んでいるなんて{事実は小説よりも奇なり}って言葉も実際にあるんだ。
 と、内心感心していた。
「いくら楽しくても、 加減は必要だよ。おい聞いてるのかメイ」
 なぜ、店員さんに説教をされないといけないのだろう。しかも、呼び捨て
 まあ、無視しておけばいいか。
 それよりも、このパンケーキおいしー。
「おーい。幸せそうな顔しているところ悪いけどこっちを向いてくれるか。もしこっちを向かないなら海外にいる姉さんに連絡するけど」
「へっ?」
 顔を向けた先にはおじさんがドンっとかまえていた。
「ええっ!ななっ、なんでおじさんがいるの!」
「なんでって、ここ俺の仕事先だし」
「でも、この前サクラさんに聞いたときそんなこと一言も……」
「それは…まあ、聞かれなかったし。それに、サプライズになったからいいじゃん。イエーイ」
 サクラさんは満面の笑みでピースする。
 ううっ。
 こうされると、許してしまう。
「それよりも、メイ。なつき君に言うことはないのか」
「ごめん…なさい」
「よしじゃあ、なつき君姪のことよろしくね」
「はい。任せてください」
「あっ、そうだ。おじさん」
「ん?なんだ」
「お小遣いの追加とパンケーキおかわり」
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