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プラットフォームの怪
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「ごめんね、千春。龍二と付き合い始めたこと、隠してたつもりはないのよ。」
居酒屋でカシスオレンジを飲みながら清美は言った。
「ううん、いいの。良かったじゃない。幸せそうで。」
私は本心で言う。本心であった。この時は。清美とは大学の同級生だ。テニスサークルに一緒に加入している親友同士だ。同じテニスサークルに加入している龍二のことを好きになった時にも真っ先に相談した仲だ。
「分かったわ。私が取り持ってあげる。」
「ありがとう。」
こんな言葉を交わした数日後
「ダメだったわ。今忙しくてとても誰かと付き合える余裕がないんですって。」
ほろ酔い気分で歩いていると着信があった。
「龍二からだ。出ていい?」
嬉しそうに清美が言う。
「あっ、龍二。今清美と一緒にいるの。うん、謝っておいたわよ。それよりさ、今日清美と一緒に行った店、今度行こうよ。」
その後も話は続く。清美とはこれまで数多く遊んできたが、千春と一緒にいる時に他の誰かと電話したりメールをしたりするような子ではなかった。男と付き合うようになると変わってしまうものなのだろうか。その会話は、電車を待つプラットフォームでも続いた。
「そろそろ電車が来るよ。電話を切った方がいいんじゃない?」
小声でそう言ったが、酔いながら大好きな恋人と楽しそうに話す清美には届かないらしい。千鳥足気味の清美が千春とぶつかる。と、清美の身体は線路へと飛び込んだ。
「ちょ、ちょっと大丈夫?電車が来るよ。」
私は慌てて叫んだ。
「イタタタ。ごめん。千春、早く引き上げて。」
清美が伸ばす右手を千春の右手が受け取った。その時である。千春の耳元で悪魔のような囁きが聞こえた。
「千春、助けていいのかい?コイツはお前の愛しい人を奪った女なんだよ。消したい女だろ。忘れたい女だろ。やっちまえ!」
次の瞬間千春の右手は清美の右手を振り払った。その直後電車が前を通り過ぎていった。
「俺もうどうしたらいいか・・・。」
事故の後、龍二は精神不安定になっていた。
「俺が電話なんかしなければこんなことには・・・。」
後悔してもしきれない様子だった。
「大丈夫。私がいるわ。清美のことは忘れさせてあげるからね。元気になって。」
そう言うと千春は龍二の手を握った。温かい柔らかい手だった。そして、千春が龍二と付き合い出すまでそれほど時間はかからなかった。その後、二人は時間を見つけてはお互いの身体を貪りあった。
「ねえ龍二。私と清美とどっちの身体がいいの?」
私は行為の最中に意地悪く尋ねる。
「千春だよ。お前がいいに決まってる。」
龍二がうっとりとした表情で言う。千春は満足気だ。
「そうでしょ。あなたがあの夜清美に電話したのが悪いんじゃないの。清美と付き合い出したのが悪いの。はじめから私と付き合っていれば清美はあんなことにならなかったのよ。」
清美の事故からちょうど1年後、奇しくも千春と龍二は居酒屋に来ていた。清美と千春が最後に過ごした例の居酒屋である。本来、清美が龍二と来たがっていた店だ。その店に私と龍二が来ている。そう思うと笑みがこぼれる。あの日と同じようにカシスオレンジを飲み干す。龍二と飲む酒は格別に美味しかった。このままずっと一緒にいられればいい、と思った。
その帰り道に、龍二は千鳥足になっている千春の腰を支えながら歩く。龍二の手の温かみが心地良かった。歩きながら龍二の手が千春の尻を揉み、腰を揉みほぐし、時折乳房に触れる。全身にマッサージを施されているようで、千春は夢見心地になった。その時である。心地よい夢から醒ますように、二人の仲を引き裂くように、けたたましい音が鳴り響く。千春の携帯電話だった。
「ごめん、龍二。電話取るね。」
龍二は千春の豊かな乳房を揉みしだきながら頷いた。千春は龍二にされるがままになりながら電話を取る。電話の主の声には確かに聞き覚えがあった。
「もしもし千春?私のこと覚えてる?」
「もしもし清美?ウソ・・・でしょ?」
酔いがいっぺんに醒めていく。
「私の龍二のお世話をしてくれてありがとう。お礼を言うわ。今日も楽しくデートだったのね。嫉妬しちゃうわ。私から龍二を奪ったもんね。だいたい、人前でイチャイチャして恥ずかしくないの?ホント、いやらしい女・・・」
私は急いで電話を切る。と、その時である。龍二が信じられない力で私を押し倒す。
「りゅ、龍二!!」
私と龍二はそのまま線路へ落っこちた。仰向けの私のすぐ上に龍二が覆い被さる。電車がすぐ近くまでやって来ていた。轟音が激しく伝わる。
「千春。喜びなさい。龍二も一緒よ。地獄で会いましょう。」
居酒屋でカシスオレンジを飲みながら清美は言った。
「ううん、いいの。良かったじゃない。幸せそうで。」
私は本心で言う。本心であった。この時は。清美とは大学の同級生だ。テニスサークルに一緒に加入している親友同士だ。同じテニスサークルに加入している龍二のことを好きになった時にも真っ先に相談した仲だ。
「分かったわ。私が取り持ってあげる。」
「ありがとう。」
こんな言葉を交わした数日後
「ダメだったわ。今忙しくてとても誰かと付き合える余裕がないんですって。」
ほろ酔い気分で歩いていると着信があった。
「龍二からだ。出ていい?」
嬉しそうに清美が言う。
「あっ、龍二。今清美と一緒にいるの。うん、謝っておいたわよ。それよりさ、今日清美と一緒に行った店、今度行こうよ。」
その後も話は続く。清美とはこれまで数多く遊んできたが、千春と一緒にいる時に他の誰かと電話したりメールをしたりするような子ではなかった。男と付き合うようになると変わってしまうものなのだろうか。その会話は、電車を待つプラットフォームでも続いた。
「そろそろ電車が来るよ。電話を切った方がいいんじゃない?」
小声でそう言ったが、酔いながら大好きな恋人と楽しそうに話す清美には届かないらしい。千鳥足気味の清美が千春とぶつかる。と、清美の身体は線路へと飛び込んだ。
「ちょ、ちょっと大丈夫?電車が来るよ。」
私は慌てて叫んだ。
「イタタタ。ごめん。千春、早く引き上げて。」
清美が伸ばす右手を千春の右手が受け取った。その時である。千春の耳元で悪魔のような囁きが聞こえた。
「千春、助けていいのかい?コイツはお前の愛しい人を奪った女なんだよ。消したい女だろ。忘れたい女だろ。やっちまえ!」
次の瞬間千春の右手は清美の右手を振り払った。その直後電車が前を通り過ぎていった。
「俺もうどうしたらいいか・・・。」
事故の後、龍二は精神不安定になっていた。
「俺が電話なんかしなければこんなことには・・・。」
後悔してもしきれない様子だった。
「大丈夫。私がいるわ。清美のことは忘れさせてあげるからね。元気になって。」
そう言うと千春は龍二の手を握った。温かい柔らかい手だった。そして、千春が龍二と付き合い出すまでそれほど時間はかからなかった。その後、二人は時間を見つけてはお互いの身体を貪りあった。
「ねえ龍二。私と清美とどっちの身体がいいの?」
私は行為の最中に意地悪く尋ねる。
「千春だよ。お前がいいに決まってる。」
龍二がうっとりとした表情で言う。千春は満足気だ。
「そうでしょ。あなたがあの夜清美に電話したのが悪いんじゃないの。清美と付き合い出したのが悪いの。はじめから私と付き合っていれば清美はあんなことにならなかったのよ。」
清美の事故からちょうど1年後、奇しくも千春と龍二は居酒屋に来ていた。清美と千春が最後に過ごした例の居酒屋である。本来、清美が龍二と来たがっていた店だ。その店に私と龍二が来ている。そう思うと笑みがこぼれる。あの日と同じようにカシスオレンジを飲み干す。龍二と飲む酒は格別に美味しかった。このままずっと一緒にいられればいい、と思った。
その帰り道に、龍二は千鳥足になっている千春の腰を支えながら歩く。龍二の手の温かみが心地良かった。歩きながら龍二の手が千春の尻を揉み、腰を揉みほぐし、時折乳房に触れる。全身にマッサージを施されているようで、千春は夢見心地になった。その時である。心地よい夢から醒ますように、二人の仲を引き裂くように、けたたましい音が鳴り響く。千春の携帯電話だった。
「ごめん、龍二。電話取るね。」
龍二は千春の豊かな乳房を揉みしだきながら頷いた。千春は龍二にされるがままになりながら電話を取る。電話の主の声には確かに聞き覚えがあった。
「もしもし千春?私のこと覚えてる?」
「もしもし清美?ウソ・・・でしょ?」
酔いがいっぺんに醒めていく。
「私の龍二のお世話をしてくれてありがとう。お礼を言うわ。今日も楽しくデートだったのね。嫉妬しちゃうわ。私から龍二を奪ったもんね。だいたい、人前でイチャイチャして恥ずかしくないの?ホント、いやらしい女・・・」
私は急いで電話を切る。と、その時である。龍二が信じられない力で私を押し倒す。
「りゅ、龍二!!」
私と龍二はそのまま線路へ落っこちた。仰向けの私のすぐ上に龍二が覆い被さる。電車がすぐ近くまでやって来ていた。轟音が激しく伝わる。
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