妻を寝取ったパーティーメンバーに刺殺された俺はもう死にたくない。〜二度目の俺。最悪から最高の人生へ〜

橋本 悠

文字の大きさ
4 / 31
第1章

第3話 出会い

しおりを挟む
「大丈夫……ですか……?」

「大丈夫……だ……よ……」

 俺はヤンキー二人にボコボコにされた。
 襲われると分かった時、咄嗟に右手がヤンキー2人に向いていたが、風ひとつ出すことは出来なかった。

 手を向けられた瞬間、ヤンキー達は少しビビった様子を見せたが、魔法が使えないとわかった瞬間、再度走り出しボッコボコにされた。ボコボコじゃない。ボッコボコだ。

 少し経つと周りにいた人達が通報してくれて事なきを得た。
 ……いや、事なきを得てはないな。

 あーもう身体中痛い!!  顔も腫れまくって身体はアザだらけ!!  ……でも、身体が勝手に動いてしまっていた。

「とりあえず……立てますか?」

「う、うん……」

 俺はボロボロになりなが彼女の手を借り、フラフラと立ち上がった。
 正直意識はほぼなかったが、彼女に手を引かれ人気のないところへと連れていかれていた。

「さっきは本当にありがとうございました」

 礼を言う彼女。俺は返事をする力もなかった。
 弱りきった手を震わせながらハンドサインをする。

 その時だ。
 彼女が両方の手のひらをこちらに向けている。

 そして、なにか詠唱している。
 ……あれ?  やばくね?  オーバーキル狙われてね!?!?

「あ、ちょ……や、めで……」

「動いちゃダメ!!」

 声が上手く出ず、焦る俺に怒鳴る彼女。2度目の人生。ここにて終幕……

「なん……で?」

 俺の身体はみるみるうちに良くなり、パンッパンの顔もアザも綺麗に治っていた。

「もしかしてこれ……」

「しーーーっ!  誰かに見られたら捕まっちゃうでしょ!」

 彼女は人差し指を立て、唇の前に持っていきそのまま、俺の顔に近ずいてこう言った。

「え、あ、その、うん。分かってるよ」

 可愛い。マジで可愛い。本気で可愛い。
 俺は心の声を漏らさないので必死だった。

 これはもう間違いない。明らかに俺の元妻だ。
 アイツに寝取られた妻だ。

「本当にさっきはありがとうございました。私の名前はケイト。あなたは?」

「え、あっ。俺はバッドだよ。こちらこそありがとう」

 ケイト。そうだ。もう完全一致だ。
 でも、早すぎる。展開が早すぎる。

 本当ならケイトとの出会いは俺がゴスイ魔法学校を卒業した後だ。

 これってもしかして……未来が変わってる?
 俺が前の人生と違うことしてるから……ちゃんと未来が変わってる!?

 未来が変わってるのだとすれば俺の最悪もちゃんと変えられるってことだ。

「そんな私ができることなんてこれしかないからさ……あ!  今日この後暇?」

「え、あ、うん。暇だけど……」

「じゃあ、助けてくれたお返しにご飯でも奢ってあげる!  行こっ!」

「ちょ!  危ない危ない!」

 彼女は俺の手を取って走り出した。
 そうだ。昔もそうだった。

 俺がダンジョンで助けてあげた次の日。手を取って走り出してくれた。

 彼女のこんなところが大好きだったんだ。

 水を出す魔法を使えない俺は、走りながら涙一滴流してしまった。

 ☆☆☆

 ここは近くの居酒屋。

「え!?  バッド君もゴスイの魔法科受けるの!?」

「しーーっ!  声でかいよ!!」

 ケイトは机から乗り出し、バンッと机を叩いた手をそーっと戻し席についた。

「でも本当なの?」

「うん。受ける予定ではあるよ。受かるかは分からないけど」

「バッド君なら絶対受かるよ!  私わかるもん」

「分かるって……なにがだ?」

「魔力量だよ!  今の私の倍くらいはあるんじゃないかな」

 そうなのか。子どもでも人の魔力量って分かるんだな。
 てっきり親とかすごい人とかの特権かと思ってた。

 ……まぁ俺は人の魔力量分からないんですけどね。

「そのネックレス……」

「あ、これ?  これこの前お母さんに貰ったの。今は少し体調悪いんだけど、元気になったら色んなところ連れて行ってあげたいの!」

 やっぱりそうだ。この白く綺麗に光るネックレスには見覚えがあった。

「このネックレス綺麗でしょ~! あ、もしかして欲しいから聞いてきたの?  それは無理だな~」

 それからたわいない会話を数時間続けた。
 この時間は、今までの中でも指三本に入るくらいに楽しかった。

 そして嬉しかった。またこうやってケイトと話せて。

 でも、まだ俺の中のわだかまりは解けていなかった。

 俺は彼女に裏切られる。アイツに寝取られる。
 アイツも悪い。でも、でも。ケイトだって……俺の事なんて……

「ねぇ!  次いつ空いてる!?」

 キラキラした顔でこっちを見つめながら質問する彼女。

 ……ははは。何勘違いしてんだ。
 全部俺が悪かったんだ。俺が彼女助けられなかったんだよアイツから。
 今はそう思い込むしか無かった。

 変えるんだ。未来を。今こうやってここに居れることは奇跡だ。

 だから無駄にするな。絶対に無駄にするな。
 俺は絶対に彼女を幸せにするんだ。

 もうくじけない。前だけを向けバッド。
 たとえどんな事があっても。もう負けちゃダメなんだ。


     ───あの時の俺みたいに絶対になるな。

「ねぇってば!  聞いてる!?」

「聞いてるよ!  俺は半年後のゴスイの入学試験以外毎日暇だよ」

「じゃあ、明後日……また……遊ばない……?」

 急にモジモジし始めたケイト。
 なんだよ可愛いじゃんかよ。やめてくれよ俺の中の俺が暴れだしちまいそうだ。

「……いいよ!  俺も遊びたい」

「……やった!  じゃぁまた今日出会った場所に同じ時間!」

 こうして俺は初めての友達が出来た。

☆☆☆

「なんだか今日は気分がいいな~」

 ケイトと会った日の夜。俺は気分が高まっていた。

 明後日何すんだろうなぁ。ショッピングかな。それとも美味しいものでも食べるのかな。

 ……やっぱり俺ケイトのこと好きなのかな。

 これは一目惚れじゃない。完全に普通に前々から惚れていた。

 離婚してから何もかも絶望していた忘れていたけど、やっぱり好きだ。

「……まぁ頑張ろ」

 俺は疲れていたのか、気絶するように眠りについた。

☆☆☆

 2日後。俺は待ち合わせ場所に来ている。
 この前と同じ時間と言う待ち合わせだったが、かなり曖昧だ。

 ってことで気持ち早めに(1時間前)に到着した。
 まだかな、とウキウキしていると「バッド君!」と後ろから名前を呼ばれた。

「お待たせ!  待った?」

「いや、全然待ってな……」

 振り返った俺は驚愕した。

 へそ出しノースリーブにショートパンツ。
 俺のどタイプ過ぎて驚愕してしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

こうしてある日、村は滅んだ

東稔 雨紗霧
ファンタジー
地図の上からある村が一夜にして滅んだ。 これは如何にして村が滅ぶに至ったのかを語る話だ。

処理中です...