妻を寝取ったパーティーメンバーに刺殺された俺はもう死にたくない。〜二度目の俺。最悪から最高の人生へ〜

橋本 悠

文字の大きさ
31 / 31
第2章

第29話 タラント国へ行こう

しおりを挟む
 ゴスイ魔法学校の試験当日から時は3ヶ月ほど遡るある日のこと。

「バッド~あなた宛に手紙が来てるわよ~」

 お母さんのこの言葉で起きた俺は、眠い目をこすりながらリビングへと向かった。

 テーブルの上に置かれた一通の手紙にはバッド様へと書かれており、俺は何も考えず封を開けて中を確かめた。

 普段自分に手紙なんてくれる人はいない。あぁ……いない。ん?  じゃあ誰だ……?  ……もしかして、もしかして!!!

 ケイト……!  じゃない。誰だこれは。

 明らかにケイトの字ではない手紙を静かに読み始めた。


 シンフ国の長、ケルビットを助けてくれたお礼の品を是非、直接渡したい。少し話もしてみたいと思っているからな。
 この手紙を開封してから1ヶ月の間、タラントの王宮にて待っている。
 来れないは無しだ!

 タラント国 国王 ダルドより


「タラント国……ケルビッド……あ、あぁ。あれか」

 シンフ国とはケイトの住む小さなあの国のことであり、ケルビッドとはその国の国王。ケイトの父親の事だ。

 確かスペルさんが金貨百枚貰えるとか言ってたよな?

「あら、これってこの前お話貰ってたやつかしら」

「うん。多分そうだと思う」

 にしてもこの文章はなんだ。雑すぎるし特に最後の文。来れないは無しだと?  どれだけ俺暇だと思われてるんだよ!!

 ……まぁ、修行しかしてないけど。

「どうしよう。確かタラント国までは半月くらいかかったはずよ。一人で行けるかしら……」

 タラント国は俺の住むフスト町のあるセラト大陸の端の方にある大きな国だ。ここからだと歩いて3つほどの国を抜けたところにある。

「確かに……お母さん達昨日からロングクエストだって言ってたよね?」

「そうなの……最低でも1ヶ月はかかりそうだわ」

「うーん……さすがに行った方がいいよね」

「まぁ……相手は国王様だからねぇ……」

「……そうだ。ちょっとストローグさんに相談してみる。多分あの人は暇だろうから」

 俺はストローグさんにタラント国に行くのを手伝ってくれないか相談することにした。

 ☆☆☆

「あ、そういうことなら全然俺は大丈夫だぞ。お前の母さんにもこの前心配かけさせちまったからな。出発はいつでもいいのか?」

「はい。1ヶ月の間にこいって言われたので」

「まぁ、修行もあるしパパっと行って帰って来た方が良さそうだな。じゃあ……3日後、どうだ?」

「はい。大丈夫です。なんかめんどくさいこと巻き込んじゃってすいません」

「いやいや、いいってことよ。その代わり、いつも以上に今日からの3日間は集中して修行に取り組むように」

「はい!  任せてください!」

 こうして、俺はストローグさんとタラント国に行くことになった。

 ☆☆☆

 それから3日が経ち。

「うちの子をよろしくお願いします」

「はい。俺がいれば安心ですから。調べたところ特に危険な道とかは無かったのでバッドでも大丈夫だと思います」

「ほんとですか……バッド、ストローグさんに迷惑かけちゃいけないからね」

「うん、分かってるよ。それじゃあ、行ってきます!」

 お母さんとお父さんに別れを告げ、人生二週目初めての遠出をすることになった。

「ちょっとワクワクしますね」

「そうか?  普通の旅行と何ら変わらねぇだろ」

「旅行ってワクワクするじゃないですか!」

「そりゃあ……たしかにな」

 それから約2週間、3つの国を超え、タラント国に到着した。

「いやぁ、特になんのハプニングもありませんでしたね」

「まぁ、なんもないに超したことは無いだろ。にしても広い国だなここは。どっちに王宮があるんだ?」

「ちょっと街の人に聞いてみますか」

 右も左も分からないまま俺とストローグさんは歩き出した。大きな通りを歩いていると、商店街のような所に繋がり、多くの人で賑わっていた。

「うわ、ちょっと人多すぎますね……人見知り出ちゃいますよ」

「あはは!  こういう時は弱そうなやつに話しかければいいんだよ」

「弱そうとか言わないの師匠」

「すまんすまん。まぁ、軽くそこら辺の人たちに……」

 その時だった。

「待ってください!  シルフド様!」

「こっちこっち!  あはは!」

 前から大きな声を上げて走る男と楽しそうに逃げる少女がいた。少女と言っても今の俺と同い年か一個下位の年齢だろう。

「捕まえときます?」

「まぁ無視でもいいんじゃねぇのか?  楽しそうだし」

「確かに……」

「あはは!  まったくはいつも元気そうだな!」

「「ダルド様!?!?」」

 近くにいた買い物客の言葉に反応した俺とストローグさんは急いで少女の前に立ちはだかった。

「ちょ……だ、誰ですか……!」

「少しお話聞かせてくれるかな?」

「あぁ。少しだ少し」

 動揺する国王の子と呼ばれていた少女。沈黙が続き、走っていた男性がやっと追いついた。

「はぁ……はぁ……ありがとうございます……!  ほら、シルフド様。お家に戻りますよ」

「はぁ……今日はここまでかぁ……」

 残念そうにする少女を横目に、俺は肩で息をする男性に質問をなげかけた。

「あの……自分バッドって言うんですけど、ダルド様に呼ばれてここまで来ました。それで……」

 どこに王宮があるか、それを聞こうとした時だった。

「あなたがバッドだったの!!??」

「……!!!」

 初対面の少女が俺の名前を聞いた瞬間、全力で俺の胸にダイブしてきた。

 なんだよ……この展開は!!
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

こうしてある日、村は滅んだ

東稔 雨紗霧
ファンタジー
地図の上からある村が一夜にして滅んだ。 これは如何にして村が滅ぶに至ったのかを語る話だ。

処理中です...