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ナナマスの木
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おじいさんの言うとおり、町の煙はすぐに消え、丘が姿を現した。なだらかだが、ごつごつした岩場は歩きにくかった。丘を越えると、新しい丘が顔を出し、また次の丘がどんと構える。五つほどの丘を越えると、そこから先は何もなかった。星の光で明るいが、薄汚い灰褐色の岩肌は孤独を感じさせる。宙と切り離された空間で、今この星にいるのは自分一人のようだ。瑞樹の歩幅は徐々に狭くなり、ついに、片足が片足に追い付いた。足がじんじんとしている。もともと無茶な冒険だったのだろうか。引き返そうにも、引き返せない状況で不安だけが次々と胸に迫ってくる。このまま朝を迎えたら自分はどうなってしまうのだろう、なぜ自分はここに居るのだろう。泣きたい気持ちは、泣くなと言い聞かせることで抑圧され、行き場をなくしていた。
その時だった。
「瑞樹ー。」
ノワナの声だ。黒い影は手を振って近づいてくる。瑞樹は、うれしくて、今までの疲れを忘れて駆け寄った。
「会いたかった。」
ノワナは瑞樹の体を抱きしめた。ノワナの温もりに、瑞樹は言いようのない安心感を覚えた。ノワナは、瑞樹が出発した後、ずっと瑞樹を心配し、夜になる度にお父さんに借りた双眼鏡で瑞樹を探していたのだと言う。二人は並んでノワナの家に向かう間、瑞樹は今までのことを話した。
「あなた、私より年下なのにとっても大人に見えるわ。」
星の光のせいだろうか、ノワナの頬は赤らんで見えた。
「ナナマスの木は見つけられなかったけどね。」
瑞樹が困ったように笑うと、
「うちの子になればいいじゃない。」
と、ノワナは冗談ぽく言った。瑞樹は、今回は素直に「それでもいいかな」と思った。
「でもね。ナナマスの木はあるのよ。」
とノワナは続けた。ノワナは、瑞樹との別れの後、寂しくて一晩泣いていたことを恥ずかしそうに告げたとき、ノワナの家に着いた。
「ここよ。次の夜に地表に出たら木が生えてたの。私はナナマスの木だと思うんだけど。」
と、ノワナが指をさす方を見ると、屋根裏部屋に続く階段の先に、瑞樹の膝ぐらいの木が生えていた。でも、実はなっていない。瑞樹は急いで帰りたいわけじゃなかった。やっと会えたノワナとの再会を大事にしたい。二人は肩を並べて座り、星を見た。
「僕、ここに来てよかったよ。」
「私も瑞樹に会えてよかった。地球って星とノハナナの星が近い場所ならいいんだけど。そしたら、また遊びに来てね。」
ノワナは、瑞樹の足元に置かれた風呂敷をほどき、オルゴールを開けた。すると、小さな木箱から静かに響くメロディーをうけて、ナナマスの木はもくもくと大きくなり、二人の背丈を倍以上に越した。枝に乳白色の実をつけていた。
「あっ。」
見に覚えのある実だった。瑞樹はポケットに手を入れて探したが、何も入っていなかった。
「これで本当のお別れね。」
ノワナは、名残惜しそうだったが、小さく微笑んだ。実がすっと瑞樹の手元に落ちると、二人は握手をし、
「またね。」
と、言った。ナナマスの実は、ホワイトチョコレートのような甘さがし、体の奥がぽかぽかと温まっていく。
その時だった。
「瑞樹ー。」
ノワナの声だ。黒い影は手を振って近づいてくる。瑞樹は、うれしくて、今までの疲れを忘れて駆け寄った。
「会いたかった。」
ノワナは瑞樹の体を抱きしめた。ノワナの温もりに、瑞樹は言いようのない安心感を覚えた。ノワナは、瑞樹が出発した後、ずっと瑞樹を心配し、夜になる度にお父さんに借りた双眼鏡で瑞樹を探していたのだと言う。二人は並んでノワナの家に向かう間、瑞樹は今までのことを話した。
「あなた、私より年下なのにとっても大人に見えるわ。」
星の光のせいだろうか、ノワナの頬は赤らんで見えた。
「ナナマスの木は見つけられなかったけどね。」
瑞樹が困ったように笑うと、
「うちの子になればいいじゃない。」
と、ノワナは冗談ぽく言った。瑞樹は、今回は素直に「それでもいいかな」と思った。
「でもね。ナナマスの木はあるのよ。」
とノワナは続けた。ノワナは、瑞樹との別れの後、寂しくて一晩泣いていたことを恥ずかしそうに告げたとき、ノワナの家に着いた。
「ここよ。次の夜に地表に出たら木が生えてたの。私はナナマスの木だと思うんだけど。」
と、ノワナが指をさす方を見ると、屋根裏部屋に続く階段の先に、瑞樹の膝ぐらいの木が生えていた。でも、実はなっていない。瑞樹は急いで帰りたいわけじゃなかった。やっと会えたノワナとの再会を大事にしたい。二人は肩を並べて座り、星を見た。
「僕、ここに来てよかったよ。」
「私も瑞樹に会えてよかった。地球って星とノハナナの星が近い場所ならいいんだけど。そしたら、また遊びに来てね。」
ノワナは、瑞樹の足元に置かれた風呂敷をほどき、オルゴールを開けた。すると、小さな木箱から静かに響くメロディーをうけて、ナナマスの木はもくもくと大きくなり、二人の背丈を倍以上に越した。枝に乳白色の実をつけていた。
「あっ。」
見に覚えのある実だった。瑞樹はポケットに手を入れて探したが、何も入っていなかった。
「これで本当のお別れね。」
ノワナは、名残惜しそうだったが、小さく微笑んだ。実がすっと瑞樹の手元に落ちると、二人は握手をし、
「またね。」
と、言った。ナナマスの実は、ホワイトチョコレートのような甘さがし、体の奥がぽかぽかと温まっていく。
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