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線香花火、堕ちた
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長かった夏休みもあと少しで終わろうとしている。
「で、何を買うんだ?」
晃樹の塾が終わるのを待って、三人で学校で使うものを買いにきた。
「ノートとかシャー芯とか、主に文房具」
「俺もそんな感じかな?お前は?」
良樹が、晃樹に聞く。
「僕?僕は、ゲー···」
「行くぞ」
晃樹のゲーム好きは、今に始まった事じゃないけど、夏季テストの点数が上がり、ママに取り上げられたゲームを返してもらった晃樹は、昨日徹夜でゲームをしてた。
エスカレーターに向かう途中、誰かとぶつかった。
「あ、花ちゃ···」
声を掛けようとしたら、花ちゃん慌てて何処かへ行った。
「なんだ?あいつ···」
良樹が、首を傾げながら、晃樹を見た。
「さぁ?けど、僕昨日花みたよ。駅前のベンチに座って誰かと話してた」
「ふぅん。さっ、行こっ!」
花ちゃんが、昨日話してた相手が吉澤くんでないことも、花ちゃんの身に何か大変な事が起きてる事も、今の私にも良樹にも、晃樹にも、そして、吉澤くんにも予想だにしなかった。
------
「へぇ、出来てたんだ」
私の隣で座ってる彼が言った。
「どうしたらいいの?」
「どうしたらって···ふっ」
彼は、煙草の煙を吐きながらこう言った。
「堕ろすしかねーだろ?バカじゃねーの、お前···」
「······。」
学校で習ったから、それはどんな事なのか知ってる。
「だいたいさ、お前が悪いんだぜ?俺みたいな男に引っかかるから」
「えっ?」
「それにお前だって、随分悦んでたじゃん···」
「······。」
「あとで連絡するから···。じゃな」
彼はそう言って立ち上がると、知らないお姉さんと一緒に駅の中へ消えていった。
「どうしよう···」
パパやママにも言えない。まして、吉澤くんに知られたら···
------
「これは?可愛いよ」
「······。」
「僕、これにしようかな。好きな色を入れられるみたいだし」
ボールペン売り場であれやこれやと話しながら探すも、イマイチ良樹のノリが悪い。
「···んじゃなくて、もっとこうシンプルなのでいいんだよ!」
「そう?可愛すぎたかな?」
と進めるモノ全てを却下され続ける私。
「これにしよ。握りやすい」
良樹が選んだのは、いつも使ってるタイプのボールペンだった。
一通り文房具を買って、お店を出ると花ちゃんを見つけたんだけど、花ちゃん私の声に気づかないでどっかにいった。
「なぁ、おかしくね?アイツ」
「なんか、考え事してたのかな?」
「でも、泣いてたっぽいね。目、真っ赤だった」
なんとなく気になり、花ちゃんが歩いて行った方向をずっと眺めてたら、なんか人の叫び声と共に人が何人か走っていったのが見えた。
「なんか、あったのかな?」
「花、とか?」
良樹と目が合い、慌てて人だかりが出来てる方向へと掛け進んだ。
「あっ···」
「嘘···」
「花···」
三人の目の前で、倒れてる花ちゃん···
信じられなかった···
「なぁ、あれって···」
「おい、まだか!救急車!!」
スーツを着た店員さんが、倒れてる花ちゃんの横で大声を出した。
良樹が、指さしたのは花ちゃんのスカートから結構な量の血が···
プチップチップチップチッ···バサッ!
「だめっ!見ちゃだめっ!!」
着ていた上着を脱いで、花ちゃんに掛けた。
救急車がついたのか、慌ただしく駆け寄って、色々なんか聞いてたけど、花ちゃん答えない。
「参ったな。名前もわからん」
「俺らの友達です。その子···」
良樹が、一歩前に出てわかるように言った。
「じゃ、運ぶけど君たち来てくれる?他にも聞きたい事とかあるし」
三人不安げな表情で、担架で運ばれる花ちゃんと一緒に救急車に乗り込んだ。
私も晃樹も何をどう言っていいかわかんなくて、全て良樹が言ってくれた。
1時間位でおばさんとおじさんが真っ青な顔で駆けつけて、診察室に入って数分後、おばさんの泣き声が聞こえてきた。
「大丈夫だよね?花ちゃん···」
不安で不安で、良樹に抱きついた。
ガラッと音がして、中からおばさんとおじさんが出てきて、私達にありがとうって言ってくれたけど、今度はおばさんの顔色が悪かった。
「気をつけるんだよ」
「はい。花ちゃん、お大事に」
病院から帰ってきても、不安で三人固まって過ごした。
夜になって、おばさん達が来て、花ちゃんの事を聞いたら、
「薬で眠ってるから。元気になったら、会ってやって」
そう言って、暫くうちのママ達と話してた。
「でも、良かったな。おっきなケガとかじゃなくて」
「うん···」
「花から連絡くるといいな、由依」
「うん···」
❨花ちゃん、大丈夫なのかな?❩
もう少しすれば、新学期になる。一緒に学校行けるといいけど···
それから数日がたって、花ちゃんのお母さんから、
「花が三人に会いたがってるから、来てくれる?他の子には言わないで欲しいんだけど···」
そう言われて、花ちゃんが大好きなゼリー持って三人でお見舞いに行った。
「よっ、元気そうじゃん」
「は···」
「は、花ちゃーーーーんっ!!」
晃樹が、最後まで言う前に、ベッドから起き上がってる花ちゃんに走り寄った。
「花?お母さん、お父さんに電話してくるから」
気を利かせたのか、花ちゃんママ病室を出ていった。
「大丈夫?怪我なんともない?」
「うん。大丈夫だよ。もう歩く事も出来るから」
「ほら、これ···。こいつが、アレコレ好きだからって···」
「おかげで、僕らのお小遣い極端に減ったけどね。まぁ、元気になったみたいで良かった」
晃樹が、鼻をすすって笑った。
「ありがとう···」
花ちゃんは、ゼリーが入った袋を横に置いて、ドアを見て、小さく溜息をつくと、
「いま、外に誰も居ない?」
良樹が、ドアから顔を出して、
「居ないよ。端っこで小さいのが泣いてるだけ」
「ほんと?ほんとに、誰も居ない?」
花ちゃん、しつこい位に良樹に聞いて、晃樹も私も見たけど、
「本当に誰にもいないよ?」
「じゃ、いいけどさ···。このことさ、その···誰にも言わないって約束出来る?」
???
「なんだ?」
「アイツと喧嘩でもした?」
晃樹が、吉澤くんの事を聞いたら、花ちゃんは首をブンブン横に振って、
「······したの」
小さく言った。
「はっ?なに?」
「私···妊娠···したの」
っ!!
良樹と晃樹、私が、互いに互いを見て固まる。
「妊娠?花···が?」
花ちゃん、頷いて更に俯く。
「な、もしかして、相手って···」
花ちゃん、激しく首を振った。
❨じゃ、誰?妊娠って、一人で出来ないよ?❩
「な、花?お前、この間会ってたのって···」
「······。」
そういえば、前に花ちゃんが、男の人とベンチで話してたの見たって晃樹言ってた。
「その人?」
花ちゃん、私の顔を見て、泣きながら笑った。
「「「······。」」」
「この間会った時に、私言ったの。そしたら、また連絡するからって···」
「「「······。」」」
「でね、待っても来なかったから、掛けたらアナウンス流れてね。バカ···だよね。吉澤くんと喧嘩して、イライラしてて、声掛けられてエッチして···。私、吉澤くんとする時は、ちゃんとつけて貰ってたから···」
「······。」
❨そんな関係だったのね❩
「それで、いまは?」
花ちゃん、首を振った。
「わかんないけど。ママが、もう大丈夫だからって言ってた」
「そっか。俺には、よくわからんけど···」
「うん。お腹の赤ちゃん、きっとまだ会いたくなかったんだよ。大人になったら、また会いに来てくれるよ」
「「「······。」」」
晃樹が、泣きながら言った。久し振りにみた、晃樹の涙。
「そだ!花ちゃん元気になったらさ、皆で花火やろ!!花火!!」
「うまいの食え!そして、忘れろ!!」
「僕だったら、お腹いっぱい甘いの食べると忘れるけどな」
くすっ···
「よしっ!皆でゼリー食べよっか!!話してたら、お腹空いちゃったし···。なーにがあるのかなー?」
ガシャガシャと音を立てながら、花ちゃんは袋からゼリーを取り出しては山に積んでいった。
「あ、これ可愛い!何これー!」
「それね、新しいやつ!変わってるよね?どうやって作ったんだろ?」
花ちゃんが手に取ったゼリーは、ゼリーの中にゼリーで出来た花が入ってる。
「ご、500円!ひゃぁっ!」
っ!!
「あ、いや、その···」
良樹と晃樹が、私を睨む···
「ふーん···」
「だから、2000円超えたのね···」
「ま、まぁ···」
ふたりに睨まれてる横で、花ちゃんは美味しそうにそのゼリーを食べていた。
「んふぅ!!幸せぇ!!」
それから3日が立って、花ちゃん無事退院して、報告がてら我が家でご飯食べながら、庭で花火をやった。
「よし、最後は恒例のこれだぁ!!」
晃樹が、線香花火を空高く上げた。
夫々、1本ずつ持っては、火をつけチリチリと紅く珠を作る姿を眺めてた。
「これが、線香花火だぞ!」
?
「いいか?よく見てろよ···」
?
晃樹が、ブツクサ言いながら火の付いた線香花火を上に上げた。
「何してんだ?アイツ」
「さぁ?」
花ちゃん、良樹と一緒に、訳のわからん事をしてる晃樹を見る。
「危ないよね?」
「うん···」
チリチリと鳴く線香花火は、晃樹の顔近くで主張し···落ちた。
そう、落ちた···
「あ"あ"あ"あ"ーーーーーっ!!」
低く大きな声を出したがら、蹲る晃樹···
が、新学期直前、とんでもない行動に出た!
------
塾に行ってる途中、前に花と駅前のベンチで話してた男を見かけた僕らは、こっそりと後をつけた。
「あいつ···」
その男は、ニヤけた顔で携帯をいじりながら、辺りを見回していた。
❨誰かと待ち合わせか?❩
何も喧嘩をする訳じゃない。後をつけるだけ···
そのつもりだった。最初は···。
けど···
男の前に青白い顔をした女の子が、現れ何かを話してた。
最初は、嫌がってた女の子も男に何かを言われて渋々一緒に歩き出した。
「どこ行くんだ?」
男は、女の子の手を引張りながらある建物の前にきて、入ろうとしていた。女の子は、直前になって、嫌がって抵抗し逃げようとしたけど、携帯を見せられ···
「何を···してる······んだぁーーーーーーっ!!どけぇーーーーーっ!!」
気付いたら大声を上げて、走っていった。
ドンッ···
男は、僕に突き飛ばされ壁に身体を打ち付けたらしい。
「なにすんだ、テメー」
「やっぱ···あ、あんただ!俺!見た!前に花と話してるの!」
男は一瞬キョトンとしてたけど、花って名前に反応したのか、笑った。
「あー、あのガキか···。お前、あのガキの男か?」
「言うなーーーっ!あいつはな、あいつはな···お前の子供を妊娠したんだ!」
「あー、なんか言ってたな。そんなこと···」
男は、お尻についた汚れを叩きながら、笑った。
「どうせ、おろしたんだろ?早いよなぁ、最近のマセガキ···」
ドンッ···
「うるせーっ!!お前に何がわかるんだ!謝れ!はーなーにー、謝れーーーっ!」
周囲に人だかりが出来たのも気付かず、僕は誰かに抑えられながらも、激しく目の前で笑ってる悪魔に叫んだ。
「お前にも困ったもんだ。あー、すみません。皆さん、ただの兄弟喧嘩なんで」
「違うーーーーっ!!謝れ!花に謝れーーーーっ!!」
「じゃ、失礼します」
男は、女の子の顔を見ず、人だかりの中をすり抜け、
「離せーーーーっ!!ちくしょーーーーっ!!」
俺の声だけが、響いていた。
「謝れ···謝ってやれよ。アイツに。苦しんだんだぞ···」
段々と周りが静かになり、僕は自由になった。
ザッ···
「はい、これ。きみの?」
鼻を啜りながら、見上げるとさっきの女の子がいた。
「あ···」
女の子が、手にしていたのは、紛れもなくさっきの男の顔がついた学生証だった。
「あーあ、残念っ!」
「······。」
女の子に助けて貰いながら、立ち上がると少し肘が痛かった。
「ありがと」
「はいっ」
?
目の前に差し出された手···
❨握手か?助けてやったつもりはないが❩
手を握り返したら、笑いながらこう言った。
「お金よ、お金!もぉ、せっかくカモれると思ったのに!!さ、早く出しなさいよ!あるんでしょ!」
「お金?なんの?助けたのに?」
訳が判らず、目の前で腰に手を当てている女の子を見た。
❨中学生?❩
「当たり前でしょ?三万くれるって言うから、ついてきたのに。カモれないは、恥ずかしいわ」
「······。カモれない?三万?なにそれ?それに、僕お金ない。さっきゼリー買わされたから」
???
ますます、頭がこんがらがる。
「あの、助けるのにお金必要なんすか?」
そう聞いたら、笑われた。
❨笑う理由とは?❩
「はぁっ!もぉ、いいわ!他の男捕まえるから」
???
「さよなら!!」
立ち去る女の子と立ち尽くす僕···
------
「···と、まぁそんな事があったから···その塾無断で休んでごめんなさい」
「すごーい。」
「お前、下手したらヤラれるぞ」
晃樹は、埃だらけで真っ赤な目をして帰ってきた。
「塾の先生には、言っとくから。怪我しなかった?あんまり、ママを困らせないで」
ママは、晃樹の頭を撫でながら抱きしめた。
「で、何を買うんだ?」
晃樹の塾が終わるのを待って、三人で学校で使うものを買いにきた。
「ノートとかシャー芯とか、主に文房具」
「俺もそんな感じかな?お前は?」
良樹が、晃樹に聞く。
「僕?僕は、ゲー···」
「行くぞ」
晃樹のゲーム好きは、今に始まった事じゃないけど、夏季テストの点数が上がり、ママに取り上げられたゲームを返してもらった晃樹は、昨日徹夜でゲームをしてた。
エスカレーターに向かう途中、誰かとぶつかった。
「あ、花ちゃ···」
声を掛けようとしたら、花ちゃん慌てて何処かへ行った。
「なんだ?あいつ···」
良樹が、首を傾げながら、晃樹を見た。
「さぁ?けど、僕昨日花みたよ。駅前のベンチに座って誰かと話してた」
「ふぅん。さっ、行こっ!」
花ちゃんが、昨日話してた相手が吉澤くんでないことも、花ちゃんの身に何か大変な事が起きてる事も、今の私にも良樹にも、晃樹にも、そして、吉澤くんにも予想だにしなかった。
------
「へぇ、出来てたんだ」
私の隣で座ってる彼が言った。
「どうしたらいいの?」
「どうしたらって···ふっ」
彼は、煙草の煙を吐きながらこう言った。
「堕ろすしかねーだろ?バカじゃねーの、お前···」
「······。」
学校で習ったから、それはどんな事なのか知ってる。
「だいたいさ、お前が悪いんだぜ?俺みたいな男に引っかかるから」
「えっ?」
「それにお前だって、随分悦んでたじゃん···」
「······。」
「あとで連絡するから···。じゃな」
彼はそう言って立ち上がると、知らないお姉さんと一緒に駅の中へ消えていった。
「どうしよう···」
パパやママにも言えない。まして、吉澤くんに知られたら···
------
「これは?可愛いよ」
「······。」
「僕、これにしようかな。好きな色を入れられるみたいだし」
ボールペン売り場であれやこれやと話しながら探すも、イマイチ良樹のノリが悪い。
「···んじゃなくて、もっとこうシンプルなのでいいんだよ!」
「そう?可愛すぎたかな?」
と進めるモノ全てを却下され続ける私。
「これにしよ。握りやすい」
良樹が選んだのは、いつも使ってるタイプのボールペンだった。
一通り文房具を買って、お店を出ると花ちゃんを見つけたんだけど、花ちゃん私の声に気づかないでどっかにいった。
「なぁ、おかしくね?アイツ」
「なんか、考え事してたのかな?」
「でも、泣いてたっぽいね。目、真っ赤だった」
なんとなく気になり、花ちゃんが歩いて行った方向をずっと眺めてたら、なんか人の叫び声と共に人が何人か走っていったのが見えた。
「なんか、あったのかな?」
「花、とか?」
良樹と目が合い、慌てて人だかりが出来てる方向へと掛け進んだ。
「あっ···」
「嘘···」
「花···」
三人の目の前で、倒れてる花ちゃん···
信じられなかった···
「なぁ、あれって···」
「おい、まだか!救急車!!」
スーツを着た店員さんが、倒れてる花ちゃんの横で大声を出した。
良樹が、指さしたのは花ちゃんのスカートから結構な量の血が···
プチップチップチップチッ···バサッ!
「だめっ!見ちゃだめっ!!」
着ていた上着を脱いで、花ちゃんに掛けた。
救急車がついたのか、慌ただしく駆け寄って、色々なんか聞いてたけど、花ちゃん答えない。
「参ったな。名前もわからん」
「俺らの友達です。その子···」
良樹が、一歩前に出てわかるように言った。
「じゃ、運ぶけど君たち来てくれる?他にも聞きたい事とかあるし」
三人不安げな表情で、担架で運ばれる花ちゃんと一緒に救急車に乗り込んだ。
私も晃樹も何をどう言っていいかわかんなくて、全て良樹が言ってくれた。
1時間位でおばさんとおじさんが真っ青な顔で駆けつけて、診察室に入って数分後、おばさんの泣き声が聞こえてきた。
「大丈夫だよね?花ちゃん···」
不安で不安で、良樹に抱きついた。
ガラッと音がして、中からおばさんとおじさんが出てきて、私達にありがとうって言ってくれたけど、今度はおばさんの顔色が悪かった。
「気をつけるんだよ」
「はい。花ちゃん、お大事に」
病院から帰ってきても、不安で三人固まって過ごした。
夜になって、おばさん達が来て、花ちゃんの事を聞いたら、
「薬で眠ってるから。元気になったら、会ってやって」
そう言って、暫くうちのママ達と話してた。
「でも、良かったな。おっきなケガとかじゃなくて」
「うん···」
「花から連絡くるといいな、由依」
「うん···」
❨花ちゃん、大丈夫なのかな?❩
もう少しすれば、新学期になる。一緒に学校行けるといいけど···
それから数日がたって、花ちゃんのお母さんから、
「花が三人に会いたがってるから、来てくれる?他の子には言わないで欲しいんだけど···」
そう言われて、花ちゃんが大好きなゼリー持って三人でお見舞いに行った。
「よっ、元気そうじゃん」
「は···」
「は、花ちゃーーーーんっ!!」
晃樹が、最後まで言う前に、ベッドから起き上がってる花ちゃんに走り寄った。
「花?お母さん、お父さんに電話してくるから」
気を利かせたのか、花ちゃんママ病室を出ていった。
「大丈夫?怪我なんともない?」
「うん。大丈夫だよ。もう歩く事も出来るから」
「ほら、これ···。こいつが、アレコレ好きだからって···」
「おかげで、僕らのお小遣い極端に減ったけどね。まぁ、元気になったみたいで良かった」
晃樹が、鼻をすすって笑った。
「ありがとう···」
花ちゃんは、ゼリーが入った袋を横に置いて、ドアを見て、小さく溜息をつくと、
「いま、外に誰も居ない?」
良樹が、ドアから顔を出して、
「居ないよ。端っこで小さいのが泣いてるだけ」
「ほんと?ほんとに、誰も居ない?」
花ちゃん、しつこい位に良樹に聞いて、晃樹も私も見たけど、
「本当に誰にもいないよ?」
「じゃ、いいけどさ···。このことさ、その···誰にも言わないって約束出来る?」
???
「なんだ?」
「アイツと喧嘩でもした?」
晃樹が、吉澤くんの事を聞いたら、花ちゃんは首をブンブン横に振って、
「······したの」
小さく言った。
「はっ?なに?」
「私···妊娠···したの」
っ!!
良樹と晃樹、私が、互いに互いを見て固まる。
「妊娠?花···が?」
花ちゃん、頷いて更に俯く。
「な、もしかして、相手って···」
花ちゃん、激しく首を振った。
❨じゃ、誰?妊娠って、一人で出来ないよ?❩
「な、花?お前、この間会ってたのって···」
「······。」
そういえば、前に花ちゃんが、男の人とベンチで話してたの見たって晃樹言ってた。
「その人?」
花ちゃん、私の顔を見て、泣きながら笑った。
「「「······。」」」
「この間会った時に、私言ったの。そしたら、また連絡するからって···」
「「「······。」」」
「でね、待っても来なかったから、掛けたらアナウンス流れてね。バカ···だよね。吉澤くんと喧嘩して、イライラしてて、声掛けられてエッチして···。私、吉澤くんとする時は、ちゃんとつけて貰ってたから···」
「······。」
❨そんな関係だったのね❩
「それで、いまは?」
花ちゃん、首を振った。
「わかんないけど。ママが、もう大丈夫だからって言ってた」
「そっか。俺には、よくわからんけど···」
「うん。お腹の赤ちゃん、きっとまだ会いたくなかったんだよ。大人になったら、また会いに来てくれるよ」
「「「······。」」」
晃樹が、泣きながら言った。久し振りにみた、晃樹の涙。
「そだ!花ちゃん元気になったらさ、皆で花火やろ!!花火!!」
「うまいの食え!そして、忘れろ!!」
「僕だったら、お腹いっぱい甘いの食べると忘れるけどな」
くすっ···
「よしっ!皆でゼリー食べよっか!!話してたら、お腹空いちゃったし···。なーにがあるのかなー?」
ガシャガシャと音を立てながら、花ちゃんは袋からゼリーを取り出しては山に積んでいった。
「あ、これ可愛い!何これー!」
「それね、新しいやつ!変わってるよね?どうやって作ったんだろ?」
花ちゃんが手に取ったゼリーは、ゼリーの中にゼリーで出来た花が入ってる。
「ご、500円!ひゃぁっ!」
っ!!
「あ、いや、その···」
良樹と晃樹が、私を睨む···
「ふーん···」
「だから、2000円超えたのね···」
「ま、まぁ···」
ふたりに睨まれてる横で、花ちゃんは美味しそうにそのゼリーを食べていた。
「んふぅ!!幸せぇ!!」
それから3日が立って、花ちゃん無事退院して、報告がてら我が家でご飯食べながら、庭で花火をやった。
「よし、最後は恒例のこれだぁ!!」
晃樹が、線香花火を空高く上げた。
夫々、1本ずつ持っては、火をつけチリチリと紅く珠を作る姿を眺めてた。
「これが、線香花火だぞ!」
?
「いいか?よく見てろよ···」
?
晃樹が、ブツクサ言いながら火の付いた線香花火を上に上げた。
「何してんだ?アイツ」
「さぁ?」
花ちゃん、良樹と一緒に、訳のわからん事をしてる晃樹を見る。
「危ないよね?」
「うん···」
チリチリと鳴く線香花火は、晃樹の顔近くで主張し···落ちた。
そう、落ちた···
「あ"あ"あ"あ"ーーーーーっ!!」
低く大きな声を出したがら、蹲る晃樹···
が、新学期直前、とんでもない行動に出た!
------
塾に行ってる途中、前に花と駅前のベンチで話してた男を見かけた僕らは、こっそりと後をつけた。
「あいつ···」
その男は、ニヤけた顔で携帯をいじりながら、辺りを見回していた。
❨誰かと待ち合わせか?❩
何も喧嘩をする訳じゃない。後をつけるだけ···
そのつもりだった。最初は···。
けど···
男の前に青白い顔をした女の子が、現れ何かを話してた。
最初は、嫌がってた女の子も男に何かを言われて渋々一緒に歩き出した。
「どこ行くんだ?」
男は、女の子の手を引張りながらある建物の前にきて、入ろうとしていた。女の子は、直前になって、嫌がって抵抗し逃げようとしたけど、携帯を見せられ···
「何を···してる······んだぁーーーーーーっ!!どけぇーーーーーっ!!」
気付いたら大声を上げて、走っていった。
ドンッ···
男は、僕に突き飛ばされ壁に身体を打ち付けたらしい。
「なにすんだ、テメー」
「やっぱ···あ、あんただ!俺!見た!前に花と話してるの!」
男は一瞬キョトンとしてたけど、花って名前に反応したのか、笑った。
「あー、あのガキか···。お前、あのガキの男か?」
「言うなーーーっ!あいつはな、あいつはな···お前の子供を妊娠したんだ!」
「あー、なんか言ってたな。そんなこと···」
男は、お尻についた汚れを叩きながら、笑った。
「どうせ、おろしたんだろ?早いよなぁ、最近のマセガキ···」
ドンッ···
「うるせーっ!!お前に何がわかるんだ!謝れ!はーなーにー、謝れーーーっ!」
周囲に人だかりが出来たのも気付かず、僕は誰かに抑えられながらも、激しく目の前で笑ってる悪魔に叫んだ。
「お前にも困ったもんだ。あー、すみません。皆さん、ただの兄弟喧嘩なんで」
「違うーーーーっ!!謝れ!花に謝れーーーーっ!!」
「じゃ、失礼します」
男は、女の子の顔を見ず、人だかりの中をすり抜け、
「離せーーーーっ!!ちくしょーーーーっ!!」
俺の声だけが、響いていた。
「謝れ···謝ってやれよ。アイツに。苦しんだんだぞ···」
段々と周りが静かになり、僕は自由になった。
ザッ···
「はい、これ。きみの?」
鼻を啜りながら、見上げるとさっきの女の子がいた。
「あ···」
女の子が、手にしていたのは、紛れもなくさっきの男の顔がついた学生証だった。
「あーあ、残念っ!」
「······。」
女の子に助けて貰いながら、立ち上がると少し肘が痛かった。
「ありがと」
「はいっ」
?
目の前に差し出された手···
❨握手か?助けてやったつもりはないが❩
手を握り返したら、笑いながらこう言った。
「お金よ、お金!もぉ、せっかくカモれると思ったのに!!さ、早く出しなさいよ!あるんでしょ!」
「お金?なんの?助けたのに?」
訳が判らず、目の前で腰に手を当てている女の子を見た。
❨中学生?❩
「当たり前でしょ?三万くれるって言うから、ついてきたのに。カモれないは、恥ずかしいわ」
「······。カモれない?三万?なにそれ?それに、僕お金ない。さっきゼリー買わされたから」
???
ますます、頭がこんがらがる。
「あの、助けるのにお金必要なんすか?」
そう聞いたら、笑われた。
❨笑う理由とは?❩
「はぁっ!もぉ、いいわ!他の男捕まえるから」
???
「さよなら!!」
立ち去る女の子と立ち尽くす僕···
------
「···と、まぁそんな事があったから···その塾無断で休んでごめんなさい」
「すごーい。」
「お前、下手したらヤラれるぞ」
晃樹は、埃だらけで真っ赤な目をして帰ってきた。
「塾の先生には、言っとくから。怪我しなかった?あんまり、ママを困らせないで」
ママは、晃樹の頭を撫でながら抱きしめた。
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