黒王国物語

朝倉あつき

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第0章 姫の逃亡劇

第0章 姫の逃亡劇(1)

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「お父様、一体、話とは?」
 シュヴァルツ王国城三階。エレンは父親に呼び出されていた。何でも大事な話があるという。
 側には護衛騎士として仕えているフェイがいる。
「エレン姫や、我が王国は滅びる。我々は北の王国ノールオリゾン国の領地になることを呑んだ」
「それは、長年の戦争に我が国が負けたという事でしょうか?」
「ああ」
 エレンの父は無念のため息を吐いた。
 所謂、シュヴァルツ王国は亡国になったという。その事に、エレンは涙を堪える事が出来なかった。
「お前は近郊の村、リーフィ村へ逃げるのだ」
「そんな、お父様、私はシュヴァルツ王国の姫として生きたいです」
「エレン姫、お前は生き延びて欲しい。それが、せめてもの、父の願いだ」
 そう言い、エレンの父は視線で側にいた騎士――フェイに合図を送った。
「エレン姫様、さあ、行きましょう」
「フーく……、フェイ・ローレンス、私は、シュヴァルツ王国の姫として――」
「エレン姫様、我々は再起の為逃げるのです。王様の志を忘れないように……」




 こうして、エレン姫は騎士・フェイと沢山のシュヴァルツ王国の民と一緒に近郊の村・リーフィ村へ逃げ延びた。
 シュヴァルツ王国の再起を臨んだ、姫の戦いは始まったばかりだ。
「フーくん、私忘れないよ。戦争で失った物を、取り戻すために」
「エレン、私は……、俺は、お前共にある。その事を忘れるな」
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